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Org.#1 冬期のフレット端の手入れ1 [maintenance]

一週間くらい前に、StewMacから””Fret Sprout and Other Painful Problems”というタイトルのダイレクトメールが来ました。(StewMacに会員登録しているとほぼ毎日ギターの製作やメンテナンスに関するツールの売り込みメールがあります。煩わしく感じますが、時々有益な情報もあります。)Winterizer Acoustic Guitar Care Set の売り込みです。この乾燥した時期にギターの手入れで重要なのはフレット端です。

StewMacからのメールにあった画像を使わせてもらいます。

 

冬になり乾燥してくると、木が収縮してフレットエンドが飛び出してきて、手に当たります。

 

オリジナルギター1では、この画像にあるようにタングを何もせず打ち込みました。

オリジナルギター2では、タングを切った物を購入し打ち込みました。

オリジナルギター3では、タングをカットし、フレットエンドを球形に仕上げました。

 

対策をせずに済むのは3だけです。

 

オリジナルギター1は写真のようですが、オリジナルギター2でもタングを切って打ち込みましたが、タングとの境部分が飛び出して来ます。

 

まず、オリジナルギター1を加工します。

Org.#1は1から4フレットを打ち直したので、この4フレット分の端の処理が甘くエッジが引っかかります。弦を張ったままですがネックの保護をして、紙やすり#120でエッジを落とします。

 

この程度まで削りましたが、完全ではありません。矢印の境部分が引っかかります。弦を張ったままだと金属ヤスリが使いにくいので、この先は弦の張替え時に行います。

 

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フレットボード材 micarta [woods]

マイカルタは、アメリカのウェスティングハウス社が開発したフェノール樹脂素材です。 布、紙、合板等を固めたものです。現在は世界最大の製紙企業インターナショナル・ペーパー社がマイカルタの生産をしています。


ナイフの柄に使われているようです。


https://www.acousticguitarforum.com/forums/showthread.php?t=40279

https://www.acousticguitarforum.com/forums/showthread.php?t=521406

https://www.acousticguitarforum.com/forums/showthread.php?t=521406&page=2


リッチライトはエボニーの50%の収縮で、マイカルタはほとんど収縮しません。


Micarta は一部が木材繊維で、一部がプラスチック (おそらくある種のフェノールプラスチックです) で、Martin 16 シリーズで使用されています。エボニーやローズウッドよりも硬くて安定していると言われています。また、従来のブリッジ素材と同等かそれ以上の音を伝達するということです。歪み、ひび割れ、摩耗はないそうです。


しかし、天然木を好む人には、受け入れられないのでしょう。あまり広がりを見せません。


HEADWAYでも使用されています。


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Wood for Guitars4 by Trevor Gore [woods]

Wood for Guitars

Trevor Gore

Proc. Mtgs. Acoust. 12, 035001 (2011); doi: 10.1121/1.3610500

View online: https://doi.org/10.1121/1.3610500

Published by the Acoustical Society of America


Gore guitars の Mr.Trevor Gore がギター用の木材の選定について書いています。

4回に分けて紹介していきます。興味の湧いた方は、原文を読んでください。


高級アコースティックギターの設計基準

第1回

1.音響基準

2.構造基準

第2回

3.重要な材料特性

3.1.ブレース用木材

3.2.サウンドボード用木材

第3回

3.3.バックとサイドの木材

第4回

3.4.ネックウッド

3.5.フレットボード

3.6.ブリッジ

で紹介していきます。


3.4.ネックウッド

 安定したネックは、幅広い木材から製造できます。さらに、合理的な木材を選択すれば、ネックに剛性と安定性を追加するために、複合材の複数のラミネートを使用してネックの製造を複雑にする必要はありません。ネックにカーボンファイバーを追加(著者はカーボンファイバーの追加は否定的です。私は、カーボンファイバーの追加は音質的にというよりも、構造的に順ぞりに対する耐性とネックのねじれをなくすことにあると思っています。)しても、ビルドの複雑さが大幅に増加する一方で、聴覚上の利点は得られないようです。

 ネックウッドに求められる特性は、荷重や湿度の変化に対する長期安定性と、彫りやすさです。伝統的な選択肢は、スチール弦ギターにはホンジュラス マホガニー、クラシック ギターには「スペイン杉」です。オーストラリアのクイーンズランドカエデは、非常に優れたネック材です。ギターのネックアセンブリを成功させるためには、相対湿度が変化しても安定していることが重要です。



3.5.フレットボード

従来の指板材の選択は、エボニーローズウッドです。 エボニーは最も高く評価されていますが、寸法安定性があまり高くなく、非常に硬いため、湿度の変化でネック全体が曲がる可能性があります。古いフレットを取り外すときに問題となる非常に脆くなる可能性があります。一般的にローズウッドよりも耐摩耗性が高い

Macassar ebonyは、より安定しており、ローズウッドと同様の安定性を備えています。縞模様ですが、油を塗ると、木材は均一な黒になります。 フレットボードの要件を満たす代替木材は、サティーンまたはブラッドウッドです。ローズウッドは、イーストインディアン ローズウッドのダークパープル/ブラウンから、ベトナム ローズウッドの赤レンガ色までさまざまです。著者は、特定の音響特性を特定のネック材や指板材またはそれらの組み合わせに関連させることはできませんでした。


エボニー材についてはこの記事を確認してください。


3.6.ブリッジ

サドルを保持し、弦を終端させ、弦の振動をトップに伝達します。あまり目立たないのは、それがギターのトップの真ん中にある巨大なクロスグレインブレースでもあり、ギターの振動挙動に、サウンドに影響を与えるという事実です。したがって、質量とロンググレイン剛性は主要な設計変数です。

 しかし、サドルスロットの前部がたるむことなくサドルを効果的にサポートできるように、木材の硬さ (弦が木に直接入り込まないようにするため) や、木目の強度と剛性など、他の属性も考慮する必要があります。

 伝統的な選択はエボニーとローズウッドですが、これらの木材は著者の好みには重すぎるブリッジを生み出します。剛性、密度、硬さのバランスが取れていると評価された木材は、パダウ、クルミ、タスマニアブラックウッドです。低密度のサンプルを選択することは重要です。

 ブリッジの全体的な質量は、ギターのサウンドを調整する上で重要な設計要素です (ブリッジ質量は、T(1,1)2 モードの共振周波数に大きく影響し、モノポールモビリティに大きく影響します)。ブリッジの質量を増やすと、トップの同等の質量がすぐに増加します。ブリッジ質量はトップの有効質量の増加の約 45% です。 応答性の高いギターは、より高いパーセンテージの変化を反映します。もしT(1,1)2 周波数に戻すならば、剛性を追加する必要があり、これにはもちろん追加の構造が必要であり、質量が必要になり、モノポールモビリティが大幅に低下します。

 著者が測定したブリッジの質量は、20 から 35 グラムの範囲であり、ブリッジのピンとサドルを追加すると、少なくとも 5 グラムが追加されます。著者は、スチール弦のブリッジの質量を 15 ~ 20g の範囲に、クラシック ギターには12〜 15g範囲に維持しています。これよりもはるかに軽量なものを構築することは困難です.

ーーーーーーーーー

4回に渡ってMr.Trevor Goreのギター用の木材の選定について紹介しました。

・2回目で紹介した、ブレース用木材としてスプールス材しか選べないことは、知りませんでした。

・また、木材の材料特性に関係なく、サウンドボードの厚さを調整することで、同じ振動応答をえる方法は、Gore と Gilet の本( Contemporary Acoustic Guitar Design and Build, Vol. 1; p4-58 to p4-61; Pub. Trevor Gore, 2011)によって詳細に説明されています。手順を知るには本を購入するしかないようです。

・3回目で紹介した「ギターのサイドに余分な質量を追加できる機能を備えたギター」はオリジナルギター2で木材種の違いではなく、ローズウッドによる質量の差で確認してみました。後で紹介します。

・ブリッジ質量の「トップの有効質量の増加の約 45%」なので、次回製作のオリジナルギター4ではこの質量をできるだけ減らすことを目指したいと思います。


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Wood for Guitars3 by Trevor Gore [woods]

Wood for Guitars

Trevor Gore

Proc. Mtgs. Acoust. 12, 035001 (2011); doi: 10.1121/1.3610500

View online: https://doi.org/10.1121/1.3610500

Published by the Acoustical Society of America


Gore guitars の Mr.Trevor Gore がギター用の木材の選定について書いています。

4回に分けて紹介していきます。興味の湧いた方は、原文を読んでください。


高級アコースティックギターの設計基準

第1回

1.音響基準

2.構造基準

第2回

3.重要な材料特性

3.1.ブレース用木材

3.2.サウンドボード用木材

第3回

3.3.バックとサイドの木材

第4回

3.4.ネックウッド

3.5.フレットボード

3.6.ブリッジ

で解説していきます。


3.3.バックとサイドの木材

 幅広い種類の木材がギターのバックとサイドに使用されてきました。ビルダーにとって明確な要件は、木材が熱で曲げられることであり、ほとんどの木材が不適格となります。さらにビルダーは、ギターのバックがサウンドボードの調性を増強するための二次振動面として扱われるライブバックを備えたギターを設計するかどうかを選択できます。

 非ライブバックオプションが選択されている場合、バックは硬くて重いままであり、どの木材種が使用されているかは音響的に重要ではありません。

 ライブバックオプションが選択されている場合、バックパネルはトップに対して正しい周波数でピッチングされている必要があり、著者はT(1,1)2 よりもピッチが 4 半音高いバックによるモノポール((T(1,1)3 )共振周波数を推奨します。また、トップと効果的に結合するには、バックのモノポールモビリティが ~7.0x10-3 s/Kg を超えている必要があります。

 非常に密度の高い木材をライブバックに使用する場合、厚さを薄くする必要があります。密度の高い木材はもろくなることがあるため、密度が 550kg/m3 から 800kg/m3 の範囲にある木材が最も扱いやすいと考えています。


「ローズウッド」vs「マホガニー」

ほとんどのリスナーは「ローズウッド」と「マホガニー」の違いを識別することができます。著者には、マホガニーはミッドレンジが少ないのに比べて、ローズウッドギターのミッドレンジが多く、サスティーンが長いという違いが聞こえます。

同様の違いは、フラメンコギター (サイプレスのバックとサイド) とクラシック ギター (ローズウッドのバックとサイド) の間でもいえます。

 では、この違いの根本的な原因は何なのでしょうか?

著者にとって、違いは主にサウンドボードが取り付けられている構造の全体的な質量によるものであり、これは主にバックとサイドに選択された木材種の密度によって支配されています。

 これは、ギターのサイドに余分な質量を追加できる機能を備えたギター(これはオリジナルギター2で木材種の違いではなく、ローズウッドによる質量の差で確認してみました。後で紹介します。を構築することで簡単に実証できます。質量を追加する効果は、T(1,1)2 共鳴の周波数を低下させ 、トップの同相放射領域(振動領域)を増加させます。

 音響的には、低中域が強化され、低質量のマホガニーのバックとサイドの構造が高質量のローズウッドの構造に変わります。バックとサイドは、マホガニーとローズウッドの密度に近似する低密度グループと高密度グループに分類でき、明らかな代替種があります。



左の写真は、175Hz での T(1,1)2 モード (メイン上部) で、サイドマスが追加されていません。 右の写真は同じギターで、高音側の下部のギターの側面に 335gm が追加されています。ノードラインは、特に高音側で外側に移動し、可聴音響の違いが生じます。共振周波数は 171.6Hz に減少しました。

 

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Wood for Guitars2 by Trevor Gore [woods]

Wood for Guitars

Trevor Gore

Proc. Mtgs. Acoust. 12, 035001 (2011); doi: 10.1121/1.3610500

View online: https://doi.org/10.1121/1.3610500

Published by the Acoustical Society of America


Gore guitars の Mr.Trevor Gore がギター用の木材の選定について書いています。

4回に分けて紹介していきます。興味の湧いた方は、原文を読んでください。


高級アコースティックギターの設計基準

第1回

1.音響基準

2.構造基準

第2回

3.重要な材料特性

3.1.ブレース用木材

3.2.サウンドボード用木材

第3回

3.3.バックとサイドの木材

第4回

3.4.ネックウッド

3.5.フレットボード

3.6.ブリッジ

紹介していきます。


3.重要な材料特性

 木材の特性は、最大 2 倍まで変化する可能性があります。その結果、ある種の材料特性と他の種の材料特性には重複があり、音響公差に合わせて設計および構築されている場合、音響への影響がなく、木材種の代替が可能であることを意味します。

 さまざまな材料特性の相対的な重要性は、コンポーネントによって異なります。 たとえば、ネックウッドは強くて硬い必要があります。 フレットボードの木材は、湿度が変化するたびにネック/フレットボードの構造が湿度計にならないように、耐摩耗性が高く、湿度の変化に対して安定している必要があります。

 バックとサイドは伝統的に同じ種類の木材で作られていますが、美的理由以外にそうすべき理由はありません。サイドに使用される種は熱曲げ可能である必要がありますが、これはバックパネルの要件ではありません。

 ただし、ギターの成功は、サウンドボードの慣性を加速する弦の能力と、かなり厳密に定義された帯域内の主要なモノポール共鳴である T(1,1)2 を持つサウンドボード構造に大きく依存します (そのため、 サウンドボードの質量と剛性によって決定されます。その結果、ビルダーは密度が低く、相対的に剛性が高いトップウッドを求める傾向があります。 

 ブリッジは弦の振動をサウンドボードに伝えます。低慣性は高加速 (および良好な音響放射) にとって重要であるため、低慣性ブリッジが有益であると言えます。

 このように、最も重要な材料特性が決定され、各コンポーネントに使用される木材種の選択が決まります。


特に重要な材料特性は次のとおりです。

・ヤング率

・密度

・湿度変動に対する安定性

・熱曲げ性 (木材のコールド クリープに対する感受性とも相関しているようです)

・硬度


3.1.ブレース用木材

 弦の負荷によって適用される曲げモーメントによるサウンドボードのたわみを制限する。スプルースは 100 年以上にわたってギターのブレースに選ばれてきました。スプルースの剛性、強度、密度のパフォーマンスに匹敵する一般的な針葉樹または広葉樹は他にありません。ウエスタンレッドシダーブレースの破断係数 (MOR) は スプルースブレースより小さいため、故障点に非常に近い状態で動作しなければならないので、使用できません。


3.2.サウンドボード用木材

 著者のアプローチは、木材の材料特性に関係なく、サウンドボードの厚さを調整することです。同じ振動応答があります。


 この手順は、Gore と Gilet の本( Contemporary Acoustic Guitar Design and Build, Vol. 1; p4-58 to p4-61; Pub. Trevor Gore, 2011)によって詳細に説明されています。手順を知るには購入するしかないようです。


 その結果、完成した楽器で目標のトップモノポール( T(1,1)2 )周波数を生み出す振動性能がでるように厚さを加工します。これにより、材料特性の違いによる性能のばらつきが押さえられ、異なる種類のトーン ウッドに起因する違いがなくなります。サウンドボード設計に対する著者のアプローチは、一貫した振動特性を持ちながら異なる質量を持つサウンドボードをもたらします。

 好ましいサウンドボードは、低質量のものです。異なる種類のトップ材を使用して得られたトップパネルの質量の範囲を示しています。 ギターが優れた応答性の高い設計である場合、低質量のトップは、弦の励振に対してより積極的に反応します。大量生産されたギターは、このカテゴリーに分類されません。

 サウンドボードが「シャーシ」に取り付けられている場合、特定の楽器の全体的な魅力に寄与する音の残留変動は、ほとんど制御されないままであり、この特性は簡単には測定できず、木材種間の音響的差異の説明は、使用される木材の音のスペクトル吸収と放射の性質によって引き起こされる音の残留変動きよるということです。これは、さまざまな木材がどのように聞こえるかについての以下のかなり一般的なコメントにつながります.

 この残留変動のばらつきは、設計によって決定されます。一部のリスナーにとっては、それが優れたギターと真に優れた楽器の違いになる可能性があります。しかし、忘れてはならないのは、筆者の知る限り、ブラインドリスニング テストでギターの構造に使用されている木材の種類を一貫して特定できる人は誰もいないということです。


シトカスプルース

平均して、このアプリケーションに適した最も硬く、最も強い。また、豊富にあるため、ギター製作に必要な品質が比較的安価である。シトカスプルースは「強い基音」を持っていると主張されている。 時間の経過とともに、スチール弦ギターのコミュニティでは、これは他の木材と比較するための基準になった。


エンゲルマンスプルース

シトカスプルースと比較すると、密度が低く、剛性が低く、硬度が低い。同じ厚さで直接代用すると、ヤング率が低くなり、T(1,1)2 周波数が低いサウンドボードが生成される結果、完成したギターは「より暗く」、場合によっては多少濁った音になる。よく考え抜かれた設計で使用されたエンゲルマン スプルースは、非常に感度が高く、応答性が高く、バランスの取れたギターを生み出す。低質量、低ダンピングの木材の能力により、クラシック ギターのサウンドボードにも非常に適した木材。硬度が低いため、製造中、使用中の両方で、へこみやマーキングが発生しやすい。


ヨーロッパ(ノルウェー、ドイツ)スプルース

 一般的にエンゲルマン スプルースよりも硬く、密度が高く、硬いですが (視覚的によく似ています)、シトカ スプルースほど密度や硬さはない。シトカおよびエンゲルマンとの最も顕著な違いは、クロスグレイン剛性とロンググレイン剛性の比率が高いことです。シトカの比率は約 0.75、エンゲルマンは約 1.0、ヨーロッパは 1.2〜 1.4 です。著者は、これが音響的に重要であるかどうかを確認できませんでした。エンゲルマンとヨーロピアンの音色の違いはほとんどありません。他の「白い」トップ ウッドでは再現できない美しいアイボリーの光沢に仕上がる。


レッドウッド

レッドウッドはその材料特性が非常に変化しやすい。もろく、木目に沿って簡単に裂けますが、スプルースよりも湿度の変化に対して寸法的に安定しています。特徴的に区別できる音色の特徴はありません。


ウエスタンレッドシダー

柔らかく、密度が低く、剛性が比較的低く、ダンピングが非常に低い。強度と剛性が比較的低いにもかかわらず、響板として優れた木材である。 シトカの代わりにエンゲルマン スプルースを使用するように、スプルースと同じ厚さで代用すると、より暗い音になります。色調が「暗い」または「暖かい」という評判が得られました。フィンガーピッキング用に設計されたレッドシダーのトップを備えたスチール弦ギターは、真に応答性が高い。レッドシダーは、クラシック ギターに適しているため、より頻繁に使用されます。成熟したサウンドになるのが早い。スプルース ギターは、サウンドが完全に発達するまでに何年もかかる。 なぜそうなのかは明らかではありません。

 

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wood for guitars1 by Trevor Gore [woods]

Wood for Guitars

Trevor Gore

Proc. Mtgs. Acoust. 12, 035001 (2011); doi: 10.1121/1.3610500

View online: https://doi.org/10.1121/1.3610500

Published by the Acoustical Society of America


Gore guitars のMr.Trevor Goreがギター用の木材の選定について書いています。技術的なデータを背景にして説明しています。4回に分けて紹介していきます。

興味の湧いた方は、原文を読んでください。


高級アコースティックギターの設計基準

第1回

1.音響基準

2.構造基準

第2回

3.重要な材料特性

3.1.ブレース用木材

3.2.サウンドボード用木材

第3回

3.3.バックとサイドの木材

第4回

3.4.ネックウッド

3.5.フレットボード

3.6.ブリッジ

で紹介していきます。


1.音響基準

 楽器の応答性と感度(モノポールモビリティ)を向上させることでギターは良い音が出ます。

 モノポールモビリティは 1/√(Km) として定義されます。K はサウンドボードの等価剛性であり、特定の荷重下でモノポールモードの波腹での単位静的たわみを測定することによって評価されます。m はT(1,1)2 モードの非結合周波数 (サウンド ホールを塞ぐことによって非結合にできる) を測定することによって決定されるサウンドボードの等価質量です。ここで、f=1/2π√(K/m) です。

 500Hz までのギター本体のモード共鳴の最も重要なのは最初の 3 つのモノポール周波数です。各ピークはアドミッタンス(反応しやすさ)ピークを表し、ギターのサウンドボードのピークが高すぎると、その周波数での弦の振動エネルギーが急速に失われ、音はすぐに大きくなりますが持続時間は短くなり、ウルフノートが発生します。さらに、結合された共鳴器 (弦とサウンドボード) の性質により、結合されていない共鳴周波数が自然に存在する場所と比較して、結合された共鳴の周波数は互いに「反発」します。これにより、弦の周波数がボディの共振周波数から離れ、対応する音符が平均律の音階に合わなくなります。周波数シフトは最大 30 セント (半音の約 1/3) になる可能性があり、これははっきりと聞こえるため、正確なピッチの和音でその音が鳴ると不協和音が生じます。

 感度 (モノポールモビリティ) が増加するにつれて、問題は悪化します。ほとんどのビルダーは、モノポールモビリティを抑制したままにすることで問題を回避しています

 レスポンシブ(応答が良い)ギターにウルフノートやイントネーション(共鳴が重なることにより音程がズレること)問題が発生しないようにするためには、

i) ギター本体の主な共振周波数をスケールノート上に配置しない。

ii) T(1,1)1 共鳴周波数と T(1,1,)2 共鳴周波数は通常、ギターでは約 1 オクターブの間隔がありますが、音の 2 つのハーモニクスとして、正確に1オクターブ離して配置しない。

iii) T(1,1)3 共振周波数 (存在する場合) を T(1,1)2 に近付けすぎない。 

 T(1,1)3 共振を導入すると、T(1,1)2 ピークが減衰します。これにより、そのモードの過剰アドミタンスが緩和され、応答曲線にピークが追加され、ゲイン帯域幅積が増加し、より興味深い音になります。

  著者の好みは、T(1,1)3が T(1,1)2 よりも約 4 半音高いピッチになることです。


2.構造基準

 ギターの構造的欠陥の 2 つは、

・ネックの歪み

・サウンドボードの歪み

です。

 サウンドボードの過度の歪みは、必然的にデザインと素材の選択の問題が組み合わさった結果です。著者が推奨する基準は、負荷がかかっているブリッジが無負荷状態に対して 2° の回転を超えないようにすることです。この数値は、音響可動性と構造的完全性との間の合理的な妥協点を生み出します。2° を超える回転は視覚的に過剰に見え、結果として生じる歪みはブリッジの剥がれの前兆となります。 回転が 2° を大幅に下回ると、ギターの応答性が低いと判断される場合、サウンドボードの可動性が不十分になります。

 複合的な問題は、初期の弾性たわみが時間の経過とともに増加し、塑性変形になることです。商用メーカーはこの問題を回避するためにギターを過剰に構築するようになりました。




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オリジナルギター1:目次 [introduction]

オリジナルギター1の目次です。自分で過去のブログを探そうと思っても直ぐに見つけられないので、一覧を作りました。その1から4は、製作を中断する前(10年以上のブランクがあります)のことをまとめています。


続きを読む


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オリジナルギター4 Org.#1は何故アフリカンマホガニー? [original guitar4]

オリジナルギター1はアフリカンマホガニー(右3つがバック&サイド材、左はトップ材)で作りました。材料を購入したのは2008年頃です。スペックなどは深く考えずに、一台目なのでそれほどお金もかけずに、マホガニーの最も安いもの(Bクラスで、2,700円だった)を注文しました。どこからかの情報で曲げやすいと書いてありましたが、ローズウッドと比べると、マホガニーは脆く曲げにくいです。


「アフリカン」と「ホンジュラス」と「キューバン」の違い

アフリカンは、学術上はマホガニーではないのですが、見た目がとてもよく似ているので、“マホガニー”と呼ばれています。現在手に入るのはアフリカンマホガニーで、大和マークでもアイチ木材でもあるようです。


オリジナルギター4で使用予定のマホガニーは、ホンジュラスです。今ではなかなか手に入り難くなっています。2年前に購入したときには16,500円(ランク2A)でした。ネック材は4年前に3,700円(ランクA)でした。ネック材も今は市場にはありません。もともとはキューバンマホガニーの代替材として使われ始めたもので、後にワシントン条約で規制されるようになりました。


キューバンは、家具から木を切り出して作ったという記事もあります。19世紀にはなくなっています。各地で近年植林され伐採されたものもわずかに出てきたそうですが、新しいものはありません。Finewoodで売られていました。安いものでも40000円もします。


追伸

Finewoodにホンジュラスマホガニーのネック材があります。


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オリジナルギター4 Org,#1のボイシング結果の再確認 [original guitar4]

アッパーボウトが98mm、ロワーボウトが111mmです。

今回録り直してみると、少し変化していますが、周波数特性の傾向は変わりません。最も低いヘルムホルツ周波数が93Hzに設定できたので、低音の音質がよくまとまっています。これはボディの厚みを厚くしたこととオリジナルギター3の経験を考えると、マホガニーを使っているサイドの強度が軽くて柔軟なせいかもしれません。

 トップモノポールT(1,1)2が175HzでF(174.6Hz)と被っています。Fを弾いてみると、基音は隣のEやF#に比べると早く落ちます(サスティーンが短い)が、倍音成分があるので、それほどつまった感じはありません。

 バックモノポールT(1,1)3は、「T(1,1)2より4半音高く」ということなのでピッタリです。

 クロスダイポールT(2,1)を300Hz位に、クロストリポールT(3,1)も500Hz以下に下げると良いかもしれません。

 オリジナルギター4はボディサイズを薄くしようと考えています。マホガニーを使って全体を薄くして全体を軽い設定を狙っています。

 

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オリジナルギター4 Org. Guitar#1のスペック振り返り [original guitar4]

そうだ! オリジナルギター1もシトカ+アフリカンマホガニーなので、まずはこの音を確認しよう!


オリジナルギター1のスペックを振り返ります。


トップ:シトカスプルース バック&サイド:アフリカンマホガニー

ボディ厚み:セミディープ

ブリッジ形状はオリジナル 重さを優先しました。

フィンガーボードはローズウッド

スケールは632.5mm

Zero-Glide ナットシステムによる0フレット構造

ペグチューナーは、ロトマチック構造

サウンドホールインレイ、バックセンターあり

バインディング、パーフリングは無し

塗装は、油性ウレタン塗装 (トップが琥珀色になってしまうので注意!)

ブレースは、Xブレース。バックは4ラダー

ヘルムホルツを93Hz,モノポール周波数を173Hz、ライブバック(バック222Hz)

ネックボルトオンーオフ構造+カーボングラファイトロッド補強


が製作済みのスペックです。音に関連するスペックは太字にしました。低音を重視したセミディープにして、実現しました。


オリジナルギター4では、000タイプ、低音よりむしろ高音を強調した歯切れのよい音を目指したいと思います。音量を上げてボディ全体を鳴らすことを目指します。


トップ:シトカ バック&サイド:ホンジュラスマホガニー

ボディ厚み:000

ブリッジ重量  なるべく軽く⇒材料再考 

フィンガーボード 材料再考 ホンジュラスローズウッドは軽い? 

塗装どうする?

ヘッド:オリジナルギター2,3を踏襲

フレット端処理 丸形

ブレース:ダブルX、3ラダー+ラジアルブレース

ネック接続:フェンダー接続

ヘルムホルツを95Hz,モノポール周波数を200Hz、ライブバックを目標


1.トップを軽くして、モノポールモビリティを挙げることを考えます。

そのために、

①ブリッジ材料及び作り方の再考

②フリッジプレートを含むトップ材、構造の見直し

直接関係ないですが、フィンガーボード材質の再考もしたいと思います。

2.ネック接続方法の簡略化

オリジナルギター3から進めた構造の簡素化を進化させる。

3.塗装方法の再考

オリジナルギター2,3で中途半端だった塗装方法の見直し

を目標にします。

 

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オリジナルギター4に向けての模索 [original guitar4]

次のギターを何にしようかと考え始めています。

2台目3台目とエンゲルマンスプルース+イーストインディアンローズウッドの組み合わせで、ボディを厚くして豊かな低音を目指したので、次は原点に返って、音のレスポンスが良くて、マホガニーの軽いサウンドにしようと思っています。


ターゲットは、martin 000-18 とかcollings 00-1 14F あたりがよさそうです。

ネットで調べてみると

collings 00-1 14F 

ドルフィンギターズ のyoutubeやHomepageから仕様を確認すると、シトカスプルースTOP、ホンデュラス・マホガニーS&B、ホンデュラス・マホガニーネックです。

エボニー指板&ブリッジ、スケールは632mm(24.9inch)、接着は膠を使用、レギュラーモデルはラッカー仕上げで下地にUV塗装使用していますが、トラディショナルモデルはニトロセルロース・オールラッカーだそうです。一度弾いたことがあるのですが、レスポンスが良く、素早いアタックととにかく出音が大きいというのを覚えています。


martin 000-18 standard

martinのホームページには、スプルースTOP、マホガニーS&B としか書いていないですね。ナット幅が42.9mmから44.5mmに変更されたそうです。

 4年前の動画ですが、ジャズギタリストの宇田大志さんのyoutubeにも000-18を購入して、喜んでる動画があります。アコギは初めてだそうです。いい音しています。


martin 000-18 Modern Deluxe

クロサワ楽器のホームページをみると、スタンダードより高いですね。538,000円。

VTS(ヴィンテージ・トーン・システム)のトップを使用しており、新品でありながら使い込んだ楽器のような音色です。


この動画では2つの000-18の比較をしています。


フレットボードとブリッジはエボニーだそうですが、この記事にもあるようにエボニーの見た目のむらが激しいです。写真からだけですが、エボニーだけでなく、木材の見た目の品質が落ちたような気がします。


Martin 00-18 ’53ですが、これも良い音がしています。

 

ホンジュラスマホガニー、シトカスプルースのストックもあります。

 

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FEM SIMULATIONS AND EXPERIMENTAL VALIDATION OF FREQUENCY RESPONSE PREDICTION FOR ACOUSTIC SOUNDBOARDS [theories]

FEM SIMULATIONS AND EXPERIMENTAL VALIDATION OF FREQUENCY RESPONSE PREDICTION FOR ACOUSTIC SOUNDBOARDS


Ludovico Ausiello, Giuliano Nicoletti Portsmouth University

Vol.43.Pt.2.2021 Proceedings of the Institute of Acoustics


音響サウンドボードの周波数応答予測の FEM シミュレーションと実験的検証


この論文では、いくつかの音響サウンドボードのFEMモデル

①最初に長方形プレートの単純化されたケース

典型的な形状 (サウンド ホールも通常のブレーシングパターンもない)の サウンドボード

③Xブレーシングパターンとサウンド ホールを導入したギタートップ

gが作成され、インパクト ハンマー法とクラドニ パターンの視覚化の両方を使用してシミュレーションとの比較をしています。トッププレート(レッドシダー)の直交異方性挙動を一致させるために、モデルフィッティングのプロセスもおこないました。


 アコースティックギターサウンドボードの全体的な周波数スペクトルを予測した結果、FEMモデリングと測定システムが、特別に調整された応答を達成する必要がある場合に、ビルダーのワークフローを最適化するための重要な製造ツールになる可能性があります。

 また、シミュレーションを使用して、さまざまな性能基準を持つ代替ブレーシング パターンを設計する方法を提供し、FEM 解析で使用される正しい材料特性を使用して、設計者はブレーシング パターンを再考し、関心のある他の性能基準を達成する可能性があります。

 最後に新しく設計されたブレーシングパターンは、GoreのFalcateブレーシング、または Gibson が 1920 年代に開発した古い平行ブレーシングと類似しています。

 最後のシミュレーションは、(サドル上で) 強制励起が適用されたブリッジと、1 メートル (軸上) での音圧レベル (SPL) を計算するためのレイリー積分を含むように拡張されました。 これは最終的に、完全なギタービルドの測定値と比較できる最終的な SPL 予測を提供します。今後の研究では、FEM シミュレーションが拡張され、サイドの限られた質量を介して、補強されたサウンドボードのモデルをギター本体のヘルムホルツ共鳴器と完全に結合させるために、より多くの研究を実施する必要があります。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

FEMを使って物理モデルを作り、プレートのモーダル解析、さらにギター全体を解析するという一連の流れは、もう誰でもできる環境にあると思われます。


まったく新しいブレースパターンを考える時などに有効だということは直ぐに分かります(というかこういうものがないと試行錯誤ができない)が、問題は、どこまで正確にモデリングできるかということです。また、著者も述べていますが、今後の課題は「サウンドボードのモデルをギター本体のヘルムホルツ共鳴器と完全に結合する」ことだと思います。あるブレースの位置を少しかえたら全体にどう影響するか等、正確なモデルをどう作れるかによります。かなりの精度が必要になってくると思います。


ちょっと分からなかったのが、著者の設計目標ですが、

・サウンドボード全体の目標は 20% の質量削減

・楽器の空間応答を改善するには、対称的なブレーシングパターンが望ましい

・元の X ブレーシング パターンに可能な限り近いモーダル応答

とありますが、1番目は良いとして、2番目はどうしてそう考えたのでしょう。また、3番目はとりあえずの目標をこうしたのでしょうか。Xブレースを上回る特性を出すにはどうすべきなのか目論見はあるのでしょうか?


現在あるブレーシング構造を上回る性能を出すためにはどうしたらよいかという課題解決の強力なツールにはなると思います。


最後のブレースパターンは、結果的にGore のFalcate ブレーシングに似ています。また、Goreの著書の中にもfalcateブレーシングがでてきますが、どうしてそのようなブレースパターンが生まれたのか、どのように設計していったか(この論文と同じようにFEMで行ったと思いますが)説明がありません。冒頭に「アコースティック ギターのサウンドボードとブレーシングパターンのモデリングと設計に特化した研究の FEM 解析とソフトウェアを使用したプレートのモーダル挙動の予測に関する研究は、Goreの本で収集できる」とありますから、やはりこの本は有益なのでしょう。


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Model-based evidence of the dominance of the guitar brace design over material and climatic variability for dynamic behaviors [theories]

Model-based evidence of the dominance of the guitar brace design over material and climatic variability for dynamic behaviors

Romain Viala,Vincent Placet,Scott Cogan

Article in Applied Acoustics · July 2021 DOI: 10.1016/j.apacoust.2021.108275

 

動的挙動の材料および気候変動に対するギターブレースデザインの優位性のモデルベースの証明

 

概要

アコースティックギターのブレーシングパターンのデザインの選択は、楽器の特定の音につながると一般的に言われています。ただし、材料特性や気候条件の変動による強い不確実性が存在する場合、サウンドボードのダイナミクスの堅牢性はまだ調査されていません。この研究では、物理学に基づくモデルを使用して3種類のブレースパターンを研究し、物質的および気候的不確実性を説明するために確率論的分析を実行します。ブレース設計の選択は、少なくとも低周波数領域では、強い空中不確実性が存在する場合でも、別の設計と積み重ねることができない動的な動作につながることが示されています。この評価は、ギターのサウンドボードのダイナミクスが関係する場合、ギターのブレースのデザインの選択が材料のばらつきよりも大きな影響を与えるという推測を裏付けています。より一般的には、これらの結果は、ギターの理解、設計、製造における詳細な物理ベースのモデルの有用性を示しています。

 

内容

 一般に、高品質の木材と特定の種が、望ましいギターサウンドを実現するための重要な要素であると考えられていますが、木材の入手がますます困難になることを考えると、別のアプローチを考える必要が出てきます。

 アコースティックギターのダイナミクスは、分析的および実験的アプローチだけでなく、木材の変動性、変更の不可逆性、およびそのようなアプローチの時間とコストを克服するため、シミュレーションによる物理ベースモデルを使用した数値的手法に基づいて、多くの研究の対象となっています。

 物理ベースのモデルを使用して、材料特性(スプルースのトーンウッドとブレース)と気候条件(温度と湿度)の両方の不確実性を考慮に入れて、多数のサウンドボード特性のモーダル動作を調査します。

 クラシックナイロン弦ギター、スチール弦アコースティックギター、セルマー・マカフェリギターの3種のギターブレースパターン(サウンドボード3mm、サウンドホール、ロゼット、ブリッジ、カッタウェイは同じで、ブレースが接着されている反対側のみが異なる)について、スプルースの変動性を表す材料特性パラメーターにより、ブリッジアドミタンスが評価された。ブレース構成ごとに 1000 回の計算が実行され、対象の特徴が抽出された。

 結果は、響板とブレースの縦方向の比弾性係数と密度が、固定された響板の固有振動数に主な影響を与え、次に相対湿度が影響します。(20 ~2500 Hzの周波数帯域でサウンドボードブレースパターンの各ファミリーの最初の10 モードの材料パラメータの変動性を考慮した響板の固有振動数の標準偏差は ± 5.5 % でした。)

 材料のばらつき、相対湿度が、固有周波数、固有モード形状、ブリッジ アドミタンス形状などのギタ  ーの動的特性に影響を与えるが、ブレースパターンが素材や気候変動よりもサウンドボードの動的特徴に大きな影響を与えることを示しています。

 ブレースの形状の設計上の選択がサウンドボードのダイナミクスに支配的な影響を及ぼし、木材の密度と剛性の変化が二次的な影響であるということです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

題名の日本語訳がこれでいいのか疑問です。何を言っているか分からないので。

 2000年代に入ってから、分析的および実験的アプローチだけでなく、シミュレーションによる物理ベースモデルを使用した数値的手法が活発になってきています。

 物理ベースモデルのシミュレーションの具体的な中身が理解できていないので、この結果についてはそうかもしれないということしか言えませんが、「ブレース形状の決定が素材や気候変動よりもサウンドボードの動的特徴に大きな影響を与える」ということは予想できることであり、それを確認することよりも、この論文の中でも述べられていますが「主な観点は、各ブレースの幾何学的パラメーターを 1 つずつ変更することによって、特定のブレースパターンごとに小さな違いを研究すること」によって「ギターのサウンドボードをさらに調整し、周波数帯域で所望の応答に到達する」ことだと思います。

 そうはいっても、こういうことができる環境が一般的になってくると、ビルダーやメーカー毎に差が出てくるのだろうということです。当然、大きな企業は新しいことを開発するために導入していることでしょう。大事なことは「確からしいモデルをどう作るか」ということだと思います。


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Acoustic Function of Sound Hole Design in Musical Instruments [theories]

Acoustic Function of Sound Hole Design in Musical Instruments

by Hadi Tavakoli Nia

Submitted to the Department of Mechanical Engineering

in partial fulfillment of the requirements for the degree of

Master of Science in Mechanical Engineering

at the MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY

June 2010


論文は70ページあり、腰を落ち着けて読まないと挫折します。


一般に言われるヘルムホルツ共鳴の近似式は正確ではないので、より正確に決める方法を開発したという内容です。主にバイオリンやリュートロゼッタについて研究しています。著者は、「このアプローチは、既存のサウンドホールの形状の幾何学的設計の背後にある概念を発見し、ミュージシャン、楽器メーカー、科学者がこの知識を利用して一貫してより良い楽器を設計するのを助けるための出発点になる」といっています。


内容をまとめると、

・ヴァイオリンのような複雑な音孔(f-hole)を持つ楽器の空気共鳴周波数を計算できる一般的な方法を開発

・開口部で空気の流れ分布を分析

・複雑なサウンドホールの幾何学的設計の背後にある潜在的な物理的原理を提示

ということです。


分析が容易な単純な円形および楕円形の形状で複雑なサウンド ホールを近似しますが、共振周波数は必ずしも空隙面積の平方根に比例しません。弦楽器のサウンドホールの空気の流れの大部分は、開口部のエッジ付近の領域を通過し、中央部分が空気共鳴にほとんど寄与せず、外縁が共振周波数に大きな影響を与えるということです。


1.リュートロゼット



リュートロゼットの例

 

空隙領域に基づく空気共鳴周波数f0の円形サウンドホール理論では、

A は空隙の総面積、h は木材の厚さ、V は空洞の容積、c0 は音速。

この式は、開口部の直径よりもはるかに長いネック (ここでは木材の厚さ) の開口部に適している。ネックの長さが小さい場合はかなりの誤差が生じる。この誤差は、h を有効厚さ he (半径 R の円形開口部の he = h + πR/2)で置き換えることによって補正される。リュートロゼットの空隙率は31〜45% だが、共鳴周波数は、模様の空隙の総面積にほとんど依存しない。共振周波数の穴密度への依存性には下限と上限がある(図 A-11参照)。

 内円で塞がれた円形開口部の解析では、共振周波数が中央の閉塞にあまり依存しない 。塞がれた円形が 50% 以下では共振周波数の変化が半音未満で、内径が外径の 80% を超えると、共振周波数の急激な低下が観察される(図 A-12)。空気共鳴曲線の帯域幅は、粘性減衰によるもので、空気流束の大部分は開口部の外縁を通過過するので、壁の面積の関数です。

 別の役割として、サウンドボード構造の一部なのでモーダルエネルギーを伝達するのに役立つ。空気輸送の大部分が外側のリムで行われるという事実は、サウンド ホール内の木材があってもよいことを意味し、これがロゼット リュートの出現につながった可能性がある。


2.ヴァイオリン

ヴァイオリンのサウンドホールは、円形→半円形→c-hole→f-holeへ何世紀にもわたって進化したのは、空隙を少なくできる(トッププレートを広くとることができる)ことや空気共鳴曲線の帯域幅の増加の音響効果が、この進化の潜在的な原動力である。円形の開口部とfホールを比較すると開口面積は半分になっている。f-hole の帯域幅の増加は、f-hole のネック(狭窄部)での高い空気速度に起因する (図 A-21)。高流量により、粘性減衰が大幅に増加する。同じ共振周波数の円形開口部と f ホール開口部を比較すると、帯域幅が 64% 増加する。帯域幅が増加すると、空気共鳴周波数のピークが下がり、共鳴持続時間を短縮し、楽器のスペクトルを均一にする。さらに、ウルフトーンを取り除き、より広範囲の周波数を増幅できる。

 f ホールの長さと比較して薄い響板の場合、共振周波数は f ホールの長さの平方根に比例し、縦横比が固定されていれば、共振周波数は f ホール面積の 4 乗根に比例する。


3.複数のサウンドホール

空気共鳴周波数は、ヴァイオリンファミリーで行われているように、各穴の効果の線形重ね合わせによって近似できることが期待されるが、これは重大なエラーにつながる。各穴を通過する流れは互いに相互作用するためである。同等のサイズで互いに接近しているテオルボの場合、誤差は 4 半音を超えている。穴間の距離が大きくなるにつれて、相互作用の量が減少し、重ね合わせ法でより適切な近似が得られる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アコースティックギターのサウンドホールをfホールにするのは、ブレースとの関係でうまくいかないと思います。音量をうまく稼ぐことができないのではないかと思います。セミアコ、フルアコなどは、おそらくバイオリンからヒントを受けてfホールを導入したと思いますが、クラシックギターも現在円形のサウンドホールを持っていることからうまくいかないのでしょう。

 同じ面積の円形開口部と比較して、f ホールの放射電力は 4.5 dB 高くなるとの報告もあります。

 

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MEASUREMENTS OF ACOUSTIC GUITAR TOP PLATES DURING THE VOICING PROCESS [voicing]

MEASUREMENTS OF ACOUSTIC GUITAR TOP PLATES DURING THE VOICING PROCESS

Mark Rau

Center for Computer Research in Music and Acoustics (CCRMA), Stanford University, Stanford, California, USA email: mrau@ccrma.stanford.edu 

Richard Hoover 

Santa Cruz Guitar Company, Santa Cruz, California, USA 

ICSV26, Montreal, 7-11 July 2019


ボイシングプロセス中のアコースティックギターのトッププレート測定

ここの論文では、スチール弦アコースティックギターのトップブレーシングに焦点を当てています。ブレーシングはギター製作の最も重要なポイントといわれますが、ブレーシンングプロセスは依然として大部分は定性的です。この論文は、まだ研究の最初の段階で、結論のようなものは出ていません。しかし、ルシアが行ったブレーシングの写真と減衰率の変化が表されているので、どの状態で変化しているのかが分かります。


 ここでは、入力アドミタンス(周波数領域で、構造振動の速度を入力駆動力で割ったもの)を測定し、構造の振動特性を表します。入力アドミタンスは振動しやすさを示しています。マスタールシアのブレーシング方法に基づいて、どう削ったらどう変化するか、適切にヴォイシングすることを定量化することで、見習いの製作者に教えるのに役立てるという目的があります。


 二人のルシアが、アコースティックギターのトッププレート(オーケストラモデル(OM)サイズのギターで、トップ、ブレースともアディロンダックスプルース)のボイシングプロセスを実際にやっている途中で振動モードがどのように変化するかを調べています。


ギタートップを構造的にサポートするブレースを削ることは、特定の共鳴を強調することができます。Xブレース、トーンブレース、サイドストラット(一般にフィンガーブレース)を削ります。ブレーシングを確認する一般的な方法は、タッピングです。タップして聞こえる共鳴を引き出し、複数の倍音を聞くことができる豊かなタップトーンを作り出します。


二人のタッピング方法は異なっており、一人は4か所(ブリッジが配置される場所、ロワーボウト、アッパーボウト、およびエンドピンの近く)をタッピングしますが、もう一人はブリッジの位置でのみタッピングします。しかし、モード周波数とダンピングは同じで、モード振幅のみが励起位置によって変化します。


アドミタンス測定は、後でブリッジが配置される場所でおこないます。


図2は、このボイシングプロセスで4つのプロセス 

(a)ブレースが彫刻される前

(b)(c)2つの中間の彫刻段階

(d)ブレースが完全に彫刻された後に測定

が、写真に示されています。


モードフィッティングも行っていますが、今回の結果は直接関係がありません。今後の展開に必要になるということなのでしょう。


1kHz未満で比較的アドミタンスが大きい(抵抗が少なく、共振しやすい)いくつかの顕著なモードの減衰率を測定しています。減衰率が低いということは、弦のエネルギーがその周波数で楽器に簡単に伝わり、強く放射された音になるということを意味します。

「最初の削られていないブレースから次の中間段階でモードが大幅に変化する」「2つのギタートップの間で(つまり二人のルシアで)モード周波数にかなり大きなばらつきがある」というようなことが書かれていますが、当たり前で、それを今後どう定量化していくかが課題であると考えられます。


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SOFTWARE BASED ACOUSTIC GUITAR SIMULATION BY MEANS OF ITS IMPULSE RESPONSE [papers]

SOFTWARE BASED ACOUSTIC GUITAR SIMULATION BY MEANS OF ITS IMPULSE RESPONSE


MIGUEL ROMÁ, LUIS GONZÁLEZ, AND FRANCISCO BRIONES

Group of Signals, Systems and Telecommunication (SST), University of Alicante, Spain

miguel.roma@ua.es


アコースティックギターをライブで音質を低下せずに増幅する方法を提案しています。


通常、ピエゾマイクを使用する方法は、実際のセットアップは簡単ですが、音響放射エネルギーがマイクによって拾われないため、音質が低下します。そこで、ピエゾピックアップからの入力とアコースティックギターの音響放射のインパルス応答とのリアルタイムの畳み込みにより、音質を取り戻します。


アコースティックギターのインパルス応答は、DMLシステムエキサイター(スピーカー)をブリッジ下にセットしてサウンドボードをMLS信号(インパルス応答を取得するための信号)で励起して、コンデンサーマイクロフォンでギターボディからの放射を拾うことで得ます。


従来のマイクロフォン技術による録音とピエゾピックアップのインパルス応答との畳み込みを比較して、いくつかのテストで、後者は、ピエゾピックアップの直接増幅よりも自然に聞こえます。しかし、ギターの実際の音と比較すると、高周波成分が明らかに欠如しています。おそらく弦の直接放射成分が含まれていないことによるとしています。これは今後チェックする必要があります。


さらに、いろいろなギターのインパルス応答ライブラリを作成すると高品質のギターと低品質のギターを演奏するサウンドを得ることができるようになります。


という内容ですが、「一種のイコライザー」ということになるのでしょう。


1つ気になるのが、DMLシステムエキサイター自信の周波数特性はどうなっているかということです。また、この取り付け方法と位置も気になります。これ自身の位置と重さがギターのインパルス応答に影響しているのではないでしょうか。


あるギターとまるで一緒の音を再現しようとすると、もっと別な補正も必要になると考えられます。

 

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Coupled modes of the resonance box of the guitar [theories]

Coupled modes of the resonance box of the guitar

M. J. Elejabarrieta

Departamento de Fı´sica Aplicada II, Universidad del Paı´s Vasco, Apdo. 644-48080 Bilbao, Spain

A. Ezcurra

Departamento de Fı´sica, Universidad Pública de Navarra, 31006 Pamplona, Spain

C. Santamarı´a

Departamento de Fı´sica Aplicada II, Universidad del Paı´s Vasco, Apdo. 644-48080 Bilbao, Spain

J. Acoust. Soc. Am. 111 (5), Pt. 1, May 2002(Received 1 November 2001; revised 5 February 2002; accepted 16 February 2002)


概要

ギターの弦の振動は、ブリッジとトップを励起し、エアキャビティ、リブ(サイド)、バックにエネルギーを伝達し、振動板とサウンドホールから音として放射されます。それを有限要素法とモーダル解析手法によって、数値解析しています。ギターボックスは、木の構造体と内部の流体(空気)でできているので、振動解析をギターの構造と流体で実行して、全体像を示しています。

 モーダル解析手法は、ギターの各部分が楽器全体に与える影響を直接調べることはできず、有限要素法による数値計算と一緒に適用する必要があります。

手順として、

1.トッププレートとバックプレートの挙動から始めて、

2.共振ボックス(トッププレート、バックサイド、リブ(サイド)、エッジ、ブロック)の計算された低周波モードと固有振動数(ネックは含まれていません)から空気がない状態で、ボックス全体の動作を取得する。境界条件は、サウンドボードとバックの相互作用が内部の空気を通してのみ明確になるようにサイドを固定している。

3.キャビティ内の空気が考慮され、結合され流体と構造の間の相互作用の定量化

で進めています。

モーダル解析手法は、同等の境界条件の下で、この共振ボックスの固有振動数、振動モード、および品質係数を決定するために適用されています。最後に、数値結果と実験結果を比較しています。

 職人によって設計および構築された一般的なクラシックギターを数値モデル化しています。メッシュの解像度により、最大600Hzの応答が保証されます。粘性効果は考慮されていません。


1.サウンドボードとバックプレート

単純にサポートされた境界条件でサウンドボードとバックプレートを評価している。

2.真空のボックス

コンポーネント(サウンドボードとバックプレート)間に構造的または音響的な伝達方法がないため(実際には、空気とサイドによる音の伝達があるが、サイドを固定しているので)

、結合は存在しません。

3.ボックス内の空気 ー空気と木造構造の結合モードのダイナミクスー

空洞内の空気は振動パターンに影響を及ぼします。したがって、サウンドボードとバックが特定の周波数で一緒に移動します。これまで、トッププレートとバックプレートの両方が独立して振動していました。


サウンドボード、空気、およびバックの間の結合により、ボックスモードが生じます。空気の影響がより低い周波数でより大きくなります。空気がない場合と比較すると、対応する構造モードの固有振動数が減少していることがわかります。これは、流体が追加の質量として機能することを意味します。構造モードと音響モードの間の相互作用は、構造モードの振動特性に依存しています。リブ(サイド)に課せられた境界条件がそれらの動きを防ぎ、サウンドボードとバックの両方のモードが、空洞の流体(空気)を介した構造コンポーネントの結合によって発生します。有限要素モデルの予測は、低周波数範囲でのギターボックスの実験的ダイナミクスとかなり一致しています。


感想

2002年にここまでできているのですから、CAEが発達した20年後の現在では、ある程度、誰でもが使えるレベルなんでしょう。個人で扱うには、金銭的に大変だと思います。空気と木造構造の結合というところが、ポイントです。2023年現在、有名メーカーはこのような技術を取り入れて新しいブレースパターンを開発しているのでしょう。どの程度まで進んでいるか、継続的に調べてみたいと思います。



*モーダル解析は、各種構造物に各周波数の振動を与えた場合の状態をシミュレーションする解析法。現在FFTアナライザと加振器、振動ピックアップを組み合わせることにより求めた各構造物上の伝達特性からパソコンなどにより、モーダル解析が簡単に行える。


**FEM(有限要素法)は微分方程式を、近似的に解くための数値解析方法

複雑な形状・性質を持つ物体を小部分(メッシュ)に分割することで近似し、全体の挙動を予測しようとするもので、 構造力学や流体力学などの様々な分野で使用される。

どの形状がより設計的に最適であるか判断するための解析法。


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Simple model for low-frequency guitar function まとめ [theories]

Simple model for low-frequency guitar function まとめ

Gore+Giletの本の参考文献に載っていた論文の基本的な技術解説を6回にわたって載せてきました。内容をもう一度、まとめると、

1.ギターの共振周波数の最も低い周波数は結合していて、その二乗和が非結合システムの共振周波数(ヘルムホルツ周波数とトップモノポール周波数)の二乗和に等しい。より平たく言えば、非結合のヘルムホルツ周波数(fh)とトッププレート基本共振周波数(fp)は、2つが結合するとお互いに反発し、fhはより低くf-に、fpはより高くf+に追いやられます。これを式で表すと以下のようになります。

2.提案されたギター機能の低周波簡易モデルを、2マス3スプリングシステム(2DOF)と関連付けて振動工学的にとらえ、理解した。

3.最初の2 つの共振周波数の測定値から導き出すことで、低周波領域のギター機能を定量的に記述できる(実験結果と定量的に一致する)ことを示した。ギターの低域成分(〜500Hz)が特に重要で、材料を含めたボディの構造をいかにうまく作るかで良いギターかどうかが分かれる。

 この研究論文で扱われている最初の2つの共振周波数 f- とf+(結合されたホルムヘルツ周波数とトップモノポール周波数)は、出力の40%を占める。

 この2つの共振周波数の結合を解析することにより、ギターの振る舞いが物理学の助けを借りて、定量化された。

各章のトピックス

Ⅰ章

・トッププレートに質量負荷することによって共振周波数が低下する。

・トッププレート共振周波数を下げると両方の共振がシフトする。

・ヘルムホルツ共鳴周波数は、サウンドホールに合う直径で高さ3〜4cmの円筒形に作られた「カラー」を配置することで低下する。

・この低下により、トッププレート移動度の反共振周波数が変わるので、これはヘルムホルツ共鳴を表している。

・弦からのトッププレート振動により、ボディキャビティの体積が周期的にわずかに変化し、空気が周期的に圧縮され、圧力変動により、サウンドホールの(目に見えない)エアピストンが励起され、トッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間に結合が確立する。

・サウンドホールが塞がれると、ヘルムホルツ共鳴は消え、純粋な非結合トッププレート共鳴だけが残る(バックが完全な剛体の場合)。

・結合システムの共振周波数の二乗和が非結合システムの共振周波数の二乗和に等しい。(平たく言えば、非結合のヘルムホルツ周波数(fh)とトッププレート基本共振周波数(fp)は、2つが結合するとお互いに反発し、fhはf-に、fpはf+に追いやられる。)

Ⅱ章

・バックプレートは剛性が高く、反射エンクロージャーとして機能している。

・ボディ容積の変化で生じるキャビティ圧力の変化が他方の発振器に力を生じさせることで、トッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間の結合を説明できる。

・結合の結果、f-はfhより小さく、f+はfpより大きくなります。物理的には、f-で、エアピストンがトッププレートの裏側と同相で移動し、f+で逆位相で移動する。

・ギターからの放射音圧の遠方界を計算するために単純な音源からの音響放射で近似する。

・プレート速度(移動度)と音圧の両方が、f-とf+で2つの共振を示していて、トッププレート移動度については、最初の2つの共振の間に反共振がある。これは図1の実験結果と一致している。

・トッププレートとエアピストンは、ヘルムホルツ共鳴より下では逆位相になる。

・この共鳴より上では、同じ位相である。

・周波数範囲全体にわたって、音圧に対する2つの発振器の寄与率は、トッププレートがとして、サウンドホールが として変化し、サウンドホールは低周波で大きな貢献をし、トッププレートは高周波で支配的である。

ギターの応答を決定するすべてのパラメーターは、実験データから得られる。

Ⅲ章

・ヘルムホルツ周波数 fhで式(8)を正規化したた変数:結合周波数比 fph/fh 

で評価できる。

・すべての楽器の周波数特性で f-、fh、および f+ が観測される。

・合計 83 セットのデータ ポイントから検討した楽器の結合周波数比 fph’が約 0.7 から 0.9 まで変化する。

カップリングはトッププレートの周波数が高くなるにつれて増加する。

2 つの発振器間の結合が強いと、結果として得られる共振周波数が元の周波数から大きくずれている。

・4本のクラシックギターで測定したトッププレート等価質量の値は60〜110g 

・楽器の音圧は、A/mp に正比例する。

・結合周波数 fph は、周波数 fa と同様に、比率 A^2/mp のサイズとともに増加する。よって、優れた楽器は大きなカップリングによって特徴付けられる。

・高く評価されている楽器のヘルムホルツ周波数は 92〜102 Hz の範囲だった。

・周波数に対するトッププレート移動度と音圧レベルの変化に関する実験データは、理論上の点とほぼ一致している(移動度と音圧レベル (SPL) の絶対値が計算されている)。

・調査したすべてのギターで、約10回の実験結果と理論上の予測との一致が得られた。

・理論と実験を比較するのに最適な周波数領域は、fh と f+ の間で、それ以外ではずれが生じる。

・トッププレート移動度の位相は、理論で予測されるように、f- と fh の間で 180° 変化する。この変化は、トッププレートとヘルムホルツ共鳴の間の結合の存在を示す最も直接的な実験的証拠である。

・品質係数 Q の決定は、音圧スペクトルの共振の 3 dB 限界を測定することによって表せられるが、ここでは最初の 2 つの共振間の最小値に対するピーク音圧レベルの測定に基づく方法を使用した。

・9 本のギターが評価され、より良いギターは、Q-の値が最も高かった。

・f+ と f- での減衰係数は、式 (10) によると、fp と fa での減衰係数の線形結合で表せる。

・観測された損失の約 3 分の 1 から 4 分の 1 が放射損失に起因する可能性がある。

・共鳴間の最小音圧レベルは、等価ピストン面積と等価質量の比の実験数値を評価するために使用できる[式(14)を参照]。この比率は、楽器からの低周波としての出力に正比例する。

原理的には薄いトッププレートを使用することで高いレシオを得ることができるが、これは高音域のレスポンスを決定するより高いトッププレートモードの周波数を低下させるので、A/mp 比の 8.4 から 11.2 は、おそらく実用的な妥協点と見なすことができる。

Ⅳ章

・単純なモデルが、トッププレート移動度と 音圧(SPL) の低周波特性を予測できた。そして、ギターの最初の 2 つの共振(f-とf+)は、相互作用するヘルムホルツ共鳴(fh)とトッププレート(fp)との結果である。

・この論文のモデルは、ボトム(バック)は完全な反射体と仮定しているが、普通はバックは振動するので、3 つの結合発振器のシステムを検討する必要がある。振動するボトム(バック)プレートは、f-とf+を下げ、f+を2つの共振に分割する。

・ボトム(バック)プレートの効果は、図 1 の音圧(SPL) スペクトルで 230〜240 Hz 付近の追加の共振として見られる。

・2つのカップリングは、バイオリンでも見られ、結合周波数係数はギターよりも小さい。これはバイオリンの音量を減少させるサウンドポストの存在によるものと考えられる。

====================

最初にこの論文を読んだときは、目からウロコでした。今まで運動方程式や振動工学は学んできましたが、ギターの音響特性とこれほど深く結びついているとは思いませんでした。最初のモデルは振動工学の基本である2DOFモデルなので、論文で紹介されている運動方程式(1a と1b)を導くというより、よく知られた2DOFモデルを解くことギターのパラメータを結びつけることから始めました。紹介したこのページが大変役に立ちました。

 実際にギター製作を始めると様々な疑問がわいてきます。その時、この論文で述べられている1つ1つが何を言っているのかがさらに理解できてきます。この内容を知っているかいないかで理解の仕方がまるで違ってくると思います。

 ということで、さらにいろいろなギター作りに役に立ちそうな論文を紹介していきたいと思います。

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Simple model for low-frequency guitar function 4 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 4

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)


IV章. 討論


Ⅲ章では、Ⅱ章で開発された単純なモデルが、トッププレート移動度と 音圧(SPL) の低周波特性を予測できました。そして、ギターの最初の 2 つの共振(f-とf+)は、相互作用するヘルムホルツ共鳴(fh)とトッププレート(fp)との結果であることが分かりました。


一般的に、最初の共鳴である「空気共鳴」をヘルムホルツ共振と呼んでいますが、本当のヘルムホルツ共振は 音圧スペクトルの 最初の2つの共鳴の間にあります。

 また、この論文のモデルは、剛体のボトム(バック)プレートを想定しています。つまり、ボトム(バック)は完全な反射体と仮定していますが、普通はバックは振動するので、3 つの結合発振器のシステムを検討する必要があります。

 振動するボトム(バック)プレートは、f-とf+を下げ、f+を2つの共振に分割します。ボトム(バック)プレートの効果は、図 1 の音圧(SPL) スペクトルで 230〜240 Hz 付近の追加の共振として見られます。トップの等価ピストン面積は、ギターのロワーボウトのトッププレート面積の 50%〜60%だといわれています。


この2つのカップリングは、バイオリンでも見られ、結合周波数係数はギターよりも小さい値です。これはおそらく、バイオリンの音量を減少させるサウンドポストの存在によるものと考えられます。


*音圧(SPL) 

音圧レベルとは、実効値の音圧をp[Pa]とした場合、以下の式で表されるものです。

なお、p0=20μPa(パスカル)です。p0=20μPaは、1kHzの音において、人によってはギリギリ聞こえる非常に小さな音圧です。音圧レベルの単位は、dB SPLです。SPLは、Sound Pressure Levelの略です。


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Simple model for low-frequency guitar function 3 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 3

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)


III章. 実験と理論の比較

図3を参照してください(本文PDFの解像度が粗く見にくいですが仕方ありません)。ヘルムホルツ周波数 fhで式(8)を正規化したた変数:結合周波数比 fph/fh 

で評価しています。曲線はこの変数をパラメータとした f+ と f- の理論値です。

大きな点は、この論文の実験からの値です。小さな点は Meyer(参考文献4) による実験データです。クラシックギター合計83 セットのデータからなっています。

  これから言えることは、

・カップリング(結合)はトッププレートのモノポール周波数が高くなるにつれて増加する。

・2 つの発振器間の結合が強いため、結果として得られる共振周波数が元の周波数から大きくずれる。

・トッププレート等価質量の値は60〜110g 

・楽器の音圧は、等価ピストン面積(A)/ 等価質量(mp) に正比例

・優れた楽器は大きなカップリングによって特徴付けられる。

・良い楽器は f- の値がかなり低く、92〜102 Hz の範囲にある。

 あたり前といえばそれまでですが、トッププレートの振動面積を広げ、質量を下げると音圧が上がるということです。

 優れた楽器は、2 つの発振器間の結合が強い(結合周波数比fphが大きい)ということは、(7)式より ωph^4 =(μSA)^2 / mp ma (α=μSA)なので、トッププレートの有効面積Aが広く、質量mpが小さいということを言っています。


図4をみてください。トッププレートとヘルムホルツ周波数の変化を伴う実験を含めると、合計で約10回の実験が理論計算と比較されて、調査したすべてのギターで、実験結果と理論上の予測との一致が得られたということです。

 あたりまえですが、トッププレートとヘルムホルツ周波数だけに注目していますから、第 1 共鳴(f-)以下と第 2 共鳴(f+)以上では、理論と実験の間の逸脱が発生します。


図5は、トッププレート移動度の位相を表しています。理論で予測されるように(6a)式から計算された位相は、f- と fh の間で 180° の変化を示していて、トッププレートとヘルムホルツ共鳴間の結合の存在を示す最も直接的な実験的証拠です。

 品質係数 Q の決定は、音圧スペクトルの共振の 3 dB 限界を測定することによって表せられますが、ここでは最初の 2 つの共振間の最小値に対するピーク音圧レベルの測定に基づく方法を使用しました。

(14)式より、共鳴間の最小音圧レベルは、等価ピストン面積Aと等価質量mpの比の実験数値を評価するために使用できます。この比率は、楽器からの低周波としての出力に正比例します。原理的には薄いトッププレートを使用することで高いレシオを得ることができますが、これは高音域のレスポンスを決定するより高いトッププレートモードの周波数を低下させます。9本のうち、最も評価の高い 3 つの楽器の A/mp 比は 8.4 から 11.2 で、おそらく実用的な妥協点と見なすことができます。


*品質係数Qや減衰比などをさらに知りたい方は、以下のページを参照してください。


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Simple model for low-frequency guitar function 2-3 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 2-3

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)


次に、ギターから音がどのように放射されるか周波数との関係を理解します。

コンサートホールなどで聴くことを前提として、遠方界では単純音源からの音響放射で近似します。対象となる周波数範囲では、音の波長がギターのロワーボウトの寸法よりもかなり大きいので問題ありません。

Uは音源の総体積速度で、 と表せます。


=========================================================

音響放射に関する上式の導出は、この資料わかりやすく書かれています。

音響放射の数学は非常に複雑で、すぐに行き詰まります。さらに知るためには、

様々な知識を必要とするので、もっと知りたい方は音響工学を基礎から学ぶ必要があります。私は、単純に音源からの音響放射がどうなるかを理解したいだけなので、この程度に留めます。

==========================================================


前回導出した 式(6a)、(6b)、(6c)

*注意!

を上記式に代入して

トッププレート移動度μpと音圧が、f-とf+で2つの共振を示しています(式(6c)で分母D=0にする、式(8)参照)。

ただし、トッププレート移動度μpについては、最初の2つの共振の間に反共振があります(式(6a)で分子=0にする)。


これは、図1の実験結果と一致しています。

 fh未満の周波数では、2つのオシレーターは180°位相がずれて移動し[式(6)]、トッププレートによって押しのけられた容積がサウンドホールを介して短絡します。これにより、実験と一致して、低周波数に向かって音圧が急速に低下します。トッププレートとエアピストンは、ヘルムホルツ共鳴より下では逆位相になります。この共鳴より上では、それらは同じ位相を持っており、このようにギターは反射エンクロージャとして機能します。

 周波数範囲全体にわたって、音圧に対する2つの発振器の寄与率は、トッププレートが(fh^2/f^2-1)として、サウンドホールが- (fh^2/f^2) として変化します[式(6)]。サウンドホールは低周波で大きな貢献をし、トッププレートは高周波で支配的です。

したがって、最初のトッププレート共鳴より下にヘルムホルツ共鳴があるということは、機器の範囲を、より低い周波数に向かって大幅に拡大します。

図5に示すように、トッププレートはf-で180°の特徴的な位相シフトを示し、fhで前の値に180°戻る別のシフトを示します。


さらにここに出てくる変数・パラメータはすべて実験データから求まります。

 

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Simple model for low-frequency guitar function 2-2 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 2-2

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)


前回は(9)式の導出を行いました。

減衰項を無視したまま進めたので、ここで減衰項を戻します。


2マス3スプリングの2DOFモデル(減衰付き

2DOFモデルについては、ここ(2自由度の減衰強制振動の挙動)がわかりやすいので参考にしてください。今回はk3と減衰器c3も追加します。

このようになります。

結合の結果、f-はfhより小さく、f+はfpより大きくなります。この物理的な理由は、f-で、エアピストンがトッププレートの裏側と同相で移動し、f+で逆位相で移動するためです。

 

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Simple model for low-frequency guitar function 2-1 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 2-1

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)


Ⅱ章.ギター機能の簡易低周波モデル

「ギター機能の簡易低周波モデル」を示す前に、少し論文から離れて、振動工学の基礎的な内容を理解します。


2マス3スプリングの2DOFモデル

2DOFモデルについては、このサイト(振動・波動の基礎)がわかりやすいので参考にしてください。運動方程式を解くのはこのサイトに任せるとして、今回のモデルは、3スプリングでスプリングが1個足らないので加える必要があります。そうしても結果は、ほぼ同じなので問題ありません。スプリングk3を加えると、

モデルは、このようになります。


何が何に対応するかというと、このm1がトッププレートの質量Fが弦の振動m2はサウンドホール周辺の空気の質量になります。後で詳しく説明しますが、まずは振動工学で言われる2DOF(dgree of freedom)モデルを理解します。


つまり、ここで扱うギターのモデルは、一般的に振動工学で言われる2DOFモデルになります。


論文中の図2を見てください。


モデルの前提は、

1.トッププレート共振器は、同等の面積Aと質量mpのピストンが、剛性kpのばねに接続されています。

2.ヘルムホルツ共振器は、サウンドホール面積S、質量maのエアピストンとしてモデル化され、キャビティ内の空気の剛性に抗して振動します。

3.バックプレートは剛性が高く、反射体(振動しない)としています。ここでは触れられていませんが、サイドもバックと同じように振動しない前提です。

4.トッププレートの位置はxp、エアピストンの位置はxa(外向きの動きに対して正の値)とすると、ギター空洞の容積Vの対応する変化は、ΔV= Axp+Sxa です。

5.断熱圧縮の場合、キャビティ圧力の変化は、Δp=-μΔVで、μ=c^2ρ/V と定義します(体積弾性率参照)。この圧力は、AΔpとSΔpの2つの発振器にかかる力を発揮します。よって、一方の発振器の変位は、空洞圧力の変化を引き起こし、それが他方の発振器に力を生じさせます。これはトッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間の結合を表しています。



<参考ページ>

体積弾性率 bulk modulus

完全流体の場合、圧力はすべての面に一様に作用するが、容積Vの流体に微少容積変化dVを与えたときには次式で与えられる圧力変化pが生じる。

p=-K(dV/V)

Kは流体の特性で決まる定数であり体積弾性率、あるいは体積弾性係数と呼ばれるもので単位体積の気体が有するばね定数に対応している.気体の体積弾性率は断熱変化を仮定すると次式で与えられる。


K=γP=ρc^2


ここで、γは気体の比熱比、Pは静圧、ρは密度、およびcは音速を示す。

よって

は、体積弾性率を体積で割ったもの




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Simple model for low-frequency guitar function 1 [theories]

Simple model for low-frequency guitar function 1

Ove Christensen

Institute of Medical Physiology A, University of Copenhagen

Bo B. Vistisen

The Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark

(Received 8 November 1979;accepted for publication 25 May 1980)

 この論文は、Gore+Giletの本の参考文献として載っていたものです。原文はPDFファイルです。この論文の理解を深めるために、本文と基本的な技術解説を含め、何回かにわたってエッセンスを紹介していきます。

 この論文には、ギター製作をする上で理解しておくべき非常に重要な内容が詰まっていますので、ぜひ全文を読んで理解してください。難しい数式がでてきますが、無理であれば飛ばして文章だけ読んでください。

 著作権上、図をコピーして載せることはできないので、図は原文を参照してください。


まず読む前にこの記事の内容を理解してください。出来れば、文末の参考ページも読んでおくと理解がしやすいと思います。


この論文の要約

1.ギター機能のシンプルな低周波モデルを提案し、最初の2つの共振周波数の測定値から導き出し、低周波領域のギター機能を定量的に記述できる(実験結果と定量的に数デシベル以内で一致)ことを示した。

2.音圧とトッププレート移動度の周波数特性の最初の2つの共振は、ヘルムホルツ共鳴と基本トッププレートモードが結合していることに起因する。


イントロダクション

 ギターの2つの低共振周波数は、およそ100Hzと200Hzで発生します。これらの共振は、多少周波数が異なりますが、すべてのギターに見られます。

 この論文では、2つの最初の共振周波数の範囲でのギターの音圧とトッププレート移動度(機械的アドミタンス、インピーダンスの逆数)*2 の周波数応答を検討します。ヘルムホルツ共鳴とトップ プレートの基本共振との間の結合を調査し、これらの共振とギターの最初の 2 つの共振との関係を示します。「空気」と「メインウッド」という2つの最も低い共鳴は重要です。


Ⅰ章 実験的な検証

 ギターの2つの最低共振周波数をf-とf+として、ヘルムホルツ周波数fhと基本的なトッププレート共振周波数fpとの関係を実験的に調べています。

 加振器をブリッジの中央に置いて、60〜300 Hzの範囲で掃引し、マイクをトッププレートの2m上に配置して、加速度計は、ブリッジ中央の加振点のできるだけ近くに置きます。ヘルムホルツ共振周波数かトッププレート共振周波数のいずれかを選択的に変化させて、これらが最初の2つの共振(f-,f+)に与える影響を調べます。


①トッププレートの共振周波数は、加振点の隣に置かれた重り(20〜50 g)をトッププレートに質量負荷にすることによって変化(低下)します。

②サウンドホールに合う直径で高さ3〜4cmの円筒形に作られた「カラー」を配置することによって、サウンドホールの直径や空洞の体積を変更することなく、サウンドホール内の空気の体積の有効長が増加するので、ヘルムホルツ共鳴周波数は低下します。


図1は、トッププレートの応答周波数とヘルムホルツ周波数の特定の変化が、トッププレートの移動度レベル(左パネル)と音圧レベル(右パネル)に及ぼす影響を示しています。


1.最初のグラフは、通常状態 

2.負荷39.3gをつけたトッププレート

3.サウンドホールにカラーが挿入された時

4.サウンドホールが木製ディスクで塞がれた時


・図1(原文を参照)の1から2の変化を見ると、質量負荷(39.3g)によってトッププレート共振周波数が低下しています。また、最初の共振は、より低い周波数へ2.5Hzシフトしました。トッププレート共振周波数を下げると両方の共振がシフトするということは、1番目と2番目の共振が結合しているということを表しています。


・ヘルムホルツ周波数を下げると図1の1から3に変化しました。最初の共振に最も顕著に現れますが、2番目の共振にも大きな周波数シフトが起こっています。反共振周波数は、ヘルムホルツ共振が変更されたときに変わり、トッププレートの共振が変更されたときに変わりません。この反共振がヘルムホルツ共鳴を表していることになります。ギターでは、弦からのトッププレートの振動により、ボディキャビティの体積が周期的にわずかに変化し、空気が周期的に圧縮され、圧力変動により、サウンドホールの(目に見えない)エアピストンが励起され、トッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間に結合が確立されます。


・サウンドホールが塞がれている場合、図1の4のようにヘルムホルツ共鳴は消え、純粋な非結合トッププレート共振fpが見られます。


ヘルムホルツ共鳴とトッププレート共振との間で相互作用が発生し、以下の関係が成り立ちます。

「結合システムの共振周波数の二乗和が非結合システムの共振周波数の二乗和に等しい。」


この式の意味するところは、一般に最初の共振周波数(f-)をヘルムホルツ周波数といっていますが、真のヘルムホルツ周波数(fh)は、もっと高い周波数にあります。一方、2番目の共振周波数(f+)はトップモノポール周波数といわれますが、トッププレートの基本共振周波数(fp)はもっと低い周波数になります。


つまり、この2つの共振は結合しており、2つの周波数が近くにあると反発しあうということを言っています。


次回は、ニュートン運動方程式に基づいて、このシステムの簡易モデルを提示します。そのモデルのすべてのパラメータは実験的に決定されます。このモデルは、その単純さにもかかわらず、音圧レベルとトッププレート移動度レベルの周波数による変動を正しく記述しています。


参考ページ


1.音とは何か

音とは何かということについて、基礎的な内容が書かれています。

「空気が振動」することにより、我々の耳に伝わります。ここでは、ギターの内部で「空気が振動」することで、共振が結合されます。


・音圧の可聴レベルは、最小の可聴音圧値 2×10^-5 Paから2×10^2 Paと表されるように7桁に及びます。音の強弱、音圧レベル(SPL)をdBで表します。

・点音源について、音は「距離が 2 倍になると6 dB 減衰」します。

・音が伝搬していく過程で、空気中に空気とは異質の物があるとき、それによって音の伝わり方が変化します。ほとんどの音のエネルギーははね返されてしまいます。これが音の「反射」です。一方、音の作用によって、ごくわずかですが板自身も振動します。この振動が入射面と反対側の面の空気に圧力変化を生じることで、音の再放射が行われます。これが音の「透過」です。

・人が音として知覚できる周波数の範囲はおおむね 20~20,000 Hz。

・一般に、材料の厚さ、もしくは周波数が 2 倍になれば、透過損失は 5~6 dB 増加します。


2.機械的インピーダンス(逆数をモビリティ:移動度

モビリティは、システムをどれだけ簡単に駆動できるかを示す尺度。機械インピーダンスは、加振力と応答速度の比である。一般に複素数の値をとり、大きさ(振幅)と位相で表現される。周波数応答関数の一種であり、振動数の関数で表現されることが多い。


3.ヘルムホルツ共振器



4.音圧(SPL) 

音圧レベルとは、実効値の音圧をp[Pa]とした場合、以下の式で表されるものです。

なお、p0=20μPa(パスカル)です。p0=20μPaは、1kHzの音において、人によってはギリギリ聞こえる非常に小さな音圧です。音圧レベルの単位は、dB SPLです。SPLは、Sound Pressure Levelの略です。

 

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音響機器測定の進歩とシステム設計 [papers]

ADVANCES IN ACOUSTIC INSTRUMENT MEASUREMENTS AND SYSTEM DESIGN

L. Ausiello, Solent University Southampton

V. Hockey Official Martin & Co. Repairs, vincehockey@talktalk.net, Southampton

 

Proceedings of the Institute of Acoustics Vol.42. Pt.3. 2020


音響機器測定の進歩とシステム設計

この論文では、製作したアコースティックギターのインパルス応答(IR)を収集するためのサインスイープベースの測定装置を使って、ギターを分解してその前後で周波数特性に変化があるかを見ています。

・弦の張力がサウンドボードに与える影響

・ニス(ポリウレタンラッカー)有無

・ギター本体からバックを取った(ヘルムホルツ周波数の有無)

・Xブレースシステムの上側のトーンバーの有無

・ブレースの重量とプロファイル

・バックの周波数応答

・バックのブレースパターンの変更

「調査結果は、このアプローチが成熟しており、響板の望ましい周波数応答を達成するために、FEMシミュレーション、コンピューター支援機械加工、および追加の製造と組み合わせられる」

「この方法で収集された応答は聴覚化と創造的な目的に使用できるため、ギターメーカーとプレーヤーのコミュニティは、定量的データをプレーヤーの好みと関連付けるという難しいタスクを進めることができる」と言っていますが、まだインパルス応答の測定システムをつくったという域を出ていないので、測定されたデータをどう解釈するか、今後どう改良していくが課題だと思います。


Vice Hockey さんは、著名なGuitar builderです。話は本題とズレますが、分解に使用されたギターの周波数特性のトップモノポール周波数より低い180Hzがバックのモノポール周波数だとしたら、少し珍しいギターだと思います。


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カーボンファイバー補強コンポジットトップボードを備えたギターの音響特性 [woods]

Acoustic characteristics of guitars with a top board of carbon ber-reinforced composites


Ono, T. and Okuda, A. (2007). Acoustic characteristics of guitars with a top board

of carbon ber-reinforced composites. Acoustical Science & Technology 28(6), 442

443.


カーボンファイバー補強コンポジットトップボードを備えたギターの音響特性

要約

 ギターのサウンドボード用の木材を人工材料に置き換えるために、炭素繊維(CF)で強化された複合材を開発した。

 ポリウレタンフォームにカーボンファイバー(CF)を木目方向に補強したものと木目方向に加えて垂直方向にもわずかに強化されたもの、計4種の人工材が開発されました。その音響特性をタッピング法で比較し、シトカスプルース(Sp)とほぼ同じ振動特性が得られた。

 このうち、CFが表面層に集中して木目方向のヤング率がスプルース材(Sp)よりも高くなっているもの(L1)の結果が最もよかった。特に良かった木目方向にだけ補強された複合材料のCFの体積分率は、6.3%。

 評価方法はタッピング法で、インパルスハンマーとコンデンサーマイクの出力信号をFFTアナライザーで、各ギターの周波数特性を伝達関数の形で測定した。

 4種の複合材料の伝達関数は、木製(Sp)ギターの伝達関数と似ているが、木目方向に補強したものと木目方向に加えて垂直方向にもわずかに強化されたものは、どちらも高周波特性が悪かった。

 ギターの専門家によって聴覚評価もおこなった。L1が最良であり、L1の25 Hz〜20 kHzの周波数範囲で2秒間の時間による全体的なパワーレベルの変化は、木製(Sp)よりも良い。聴力検査による評価の順序は、伝達関数の測定値からみたものと異なる。理由は、適用された評価基準が異なる為と考えられる。表面層で一方向に強化された複合材料(L1)が単純な構造の最良の代替品である。

ーーーーーーーーーー

人工材によるサウンドボードが岐阜大学とYAMAHAが協力して開発しています。ポリウレタンフォームにカーボンファイバー(CF)を木目(L)方向に補強したものと木目方向に加えて垂直方向(R)にわずかに強化されたもの、計4種の複合材が開発されました。

 このうち、CFが表面層に集中して木目方向のヤング率がスプルース材(Sp)よりも高くなっているものの結果が最もよかったようです。

「伝達関数の測定結果と聴覚評価の結果が合わない」と言っていますが、評価基準の設定により、結論が違ってくるのではないかと思います。聴覚評価が良いギターがどういう伝達関数を持っているかを調べてから、評価基準を決めるべきです。


それから、「表面層で一方向に強化された複合材料(L1)が単純な構造の最良の代替品」と結論付けていますが、異方性の強度を持ったスプルースにあったブレーシングをしているのであれば、当然だと思いますが、前の論文では「R方向を炭素繊維で補強した複合材(CF / UF)LR」が良いと考えていたと思います。この差はなんであるかが気になるところです。

 この論文では、スプルース材をリファレンスとして材料開発をしています。なぜ人工ウッドが必要かというと、バラツキの大きい木材(自然なもの)に代わって、バラツキの少ない材料ができないかという思いで、私は前の記事を書きました。


 行く行くは、必要な特性が自由に制御できるようになるのではないかと思っています。このような研究が進めば、FEM(有限要素法)と組み合わせて、ブレースなしで自由に特性が変えられるトッププレートができる可能性があります。

 

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楽器響板用炭素繊維強化合成木材の音響特性 [woods]

Acoustic characteristics of carbon fiber-reinforced synthetic wood for musical instrument soundboards

Teruaki Ono and Daisuke Isomura

Department of Mechanical and Systems Engineering, Faculty of Engineering, Gifu University

Acoust. Sci. & Tech. 25, 6 (2004)

( Received 8 January 2004, Accepted for publication 11 June 2004 )


楽器響板用炭素繊維強化合成木材の音響特性

安定した特性を備えた材料を供給するサウンドボードに使用する合成木材の開発の

最初の目標は、木製の響板と同様の音響特性を持ち、湿度に対する安定性が向上した合成材料を製造することでした。

 前の論文で紹介した一方向炭素繊維強化ポリウレタンフォーム複合材L(CF / UF)は、縦(L)方向の繊維に沿った方向の密度およびヤング率に関して、楽器のサウンドボード用のシトカスプルースと比較して有利ですが、繊維を横切るR方向のヤング率が劣っています。(CF / UF)L複合材料のR方向のヤング率は、密度に依存するポリウレタンフォームのヤング率によって決定されます、

サウンドボード材料には低密度であることが必要なので、ポリウレタンフォームの密度を上げることはできません。

そこで、R方向を炭素繊維で補強した複合材(CF / UF)LRを作成し、その複合材料を使用して実験用ギターを製作しています。

 構造は、図2(著作権上、図のコピーは載せられないので本文を参照してください)に出ているように、3つの対称層、つまりL方向に配向された炭素繊維で強化された表面層、R方向に配向された炭素繊維で強化された第2層、およびポリウレタンフォームの積層によってつくられています。それで、L方向だけでなくR方向も強化することで、シトカスプルースと非常によく似た音響特性を持つ複合材料が得られました。

 今後の研究では、「過渡応答を調査し、ピアノとバイオリンでそれぞれ使用するためのより大きな平面ボードと湾曲したボードの作成を試みます」といっているが、R方向もCFで強化した層を入れることで特性が改善されたが、複合材料自体の今後の課題は何だろう?


謝辞より ヤマハと協力しているようです。


さらに続きがあります。


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楽器響板用一方向繊維強化ポリウレタンフォーム複合材料の音響特性 [woods]

Acoustic characteristics of unidirectionally fiber-reinforced polyurethane foam composites for musical instrument soundboards

Teruaki Ono 1*, Souji Miyakoshi 1 and Ugai Watanabe 2+

1 Department of Mechanical and Systems Engineering, Faculty of Engineering,

Gifu University

2 Department of Precision Engineering, Faculty of Engineering, Chiba Institute of Technology

( Received 27 June 2001, Accepted for publication 19 November 2001 )


楽器響板用一方向繊維強化ポリウレタンフォーム複合材料の音響特性

要約:「楽器のサウンドボード」用の一方向繊維強化複合材料は、ガラス繊維または炭素繊維と軽量の硬質ポリウレタンフォームを使用して作られました。複合材料の振動特性と周波数応答特性を、繊維、繊維の体積分率、繊維分布を変化させることによって調査し、得られた結果をサウンドボード用のシトカスプルースの結果と比較しました。炭素繊維フィラメントの5〜6体積パーセントが均一に分布している複合材料は、サウンドボード用のシトカスプルースとほぼ同じ音響特性を示しました。結果的には、すべての可聴周波数範囲でのサウンドボード用の木材の音響特性は、一方向に配向された繊維と多孔質マトリックスフォームで構成される単純な木材モデルを使用してほとんど表現できることを示しました。

============

 以前の記事で人工材について書いたことがありましたが、人工材によるサウンドボードの開発に関する論文です。

 人工材料開発の目的は、「木材の振動特性は含水率に大きく依存するので、湿度に対する安定した品質を備えた合成材料を開発すること」としています。

木材の音響特性に大きな影響を与える3つの重要な特性は、

1.密度が低い

2.比ヤング率が大きく、木目に平行な内部摩擦が小さい

3.弾性異方性が大きい

です。

木材の密度が低いのは、その多孔質構造によります。縦方向の機械的特性と大きな弾性異方性は、木材の細胞壁の繊維マトリックス構造に依存します。木材の構造をこれら2つの構造で構成されるモデルに簡略化できると考えています。

 この考え方で、弾性率が大きく、密度が低く、内部摩擦が適度に大きいプラスチックフォームを備えた高度な繊維材料を使用して、サウンドボード用の一方向繊維強化複合材料を開発しました。

 ポリウレタン液体はガラス繊維フィラメント間に十分に浸透しない。GF/UF複合材料はサウンドボード素材には適していなかったので、カーボンファイバー(CF)を使っています。カーボンファイバーフィラメント(線方向に揃ったもの)は一方向に配置され、張力をかけ、何種類かの密度を作り試験片を作っています。

 実験では、複合材料の曲げ強度、振動特性、および周波数応答特性(0.1〜10 kHz)を測定し、サウンドボード用のシトカスプルースのものと比較しています。

 

 論文中に図がないのでどんな構造になっているか分かりません(続く論文で構造図が出てきます)が、炭素繊維で一方向にプラスチックフォームを補強する点がこの論文の研究の特徴です。

 サウンドボード用のシトカスプルースとほぼ同じ音響特性を持つCF / UF複合材料を得るには、CFフィラメントの適切な体積分率を5〜6%とし、フィラメント(連続したきわめて長い繊維)を均一にする必要があります。

===============

この論文にはあと2つ続きがあります。「複合材料の改良」と「ギターへの応用と評価」です。次回へ続く。

 

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