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ギターがどう鳴っているか [theories]

1.固有振動数
 物には固有振動があります。ギターの弦は、ナットとサドルに挟まれた部分が振動し、これが基本周波数になります。ハーモニクス(倍音を出す)で12フレット(弦長の1/2)を軽く押さえてると、その2倍の周波数になります。さらに7フレットまたは19フレット(弦長の1/3、2/3)を軽く押さえると3倍の周波数になります。

ギターがどう鳴っているか.png図は、これをギターのトップ(サウンドボード)に展開したものです。面全体が上下に振動するのをモノポール、面の半分が交互に振動するものをダイポール(2次高調波)、面を1/3に分けて真中と左右が交互の振動するのをトリポール(3次高調波)といいます。縦方向をロング(木目方向)、横方向をクロス(木目を横切る方向)といいます。
ダイポールは、長さで単純に考えるとモノポールは2倍の周波数、トリポールは3倍の周波数と考えやすいですが、木目方向(ロング)には木目が剛性を上げる、振動範囲が端までいかない等がありますので、ぴったりの周波数にはなりません。

そういうことから、ダイポールは、000タイプとDタイプでは周波数が逆転しますので、注意してください。
000タイプ クロスダイポール < ロングダイポール
Dタイプ   ロングダイポール < クロスダイポール

2.周波数帯域
人が聞こえる周波数(可聴域)は、20~20kHzです。年齢を重ねると高い周波数が聞こえなくなるようです。私は13kHzくらいで聞こえなくなります。
 一方、ギターの各弦の基音の周波数は、6弦(E)82Hz、5弦(A)110Hz、4弦(D)147Hz、3弦(G)196Hz、2弦(B)247Hz、1弦(E)330Hz、1弦の20フレットは1,047Hzですが、各音はいくつもの倍音(高調波)が合わさって構成されるので、ギターから発生される音の帯域は、80~12kHzになります。

3.音の伝わり方と共振周波数
音の伝わり方.jpg①弦を弾くとそのエネルギーがサドル(ブリッジ)からトップに伝わります。②トップが振動するとそれはボディ内の空気を通してバックに伝わります。③サイドからの伝達もあります。④バックは振動し、ボディ内の空気を振動させ、トップに戻ります。これが繰り返されて、トップ自身の振動とバックの振動が合わされ、⑤サウンドホールと⑥表面から放射されます。

 ボディが共振(共鳴)する最も低い周波数はヘルムホルツ共鳴です。空瓶の口を横から吹くとボーという音がしますが、あの原理です。ヘルムホルツ共鳴周波数fは、f∝ α*√ (S / V)  でサウンドホールの面積Sが大きくなると周波数が高くなり、ボディの容積Vが増えると低くなります。
 サウンドホールはほぼ一定なので、ボディが大きければ周波数は低くなり、小さければ高くなります。さらに、剛性αに比例し、トップ、サイド、バックの壁の剛性が上がれば高くなり、下がれば低くなります。

モノポールは3つあり、000タイプのギターについていうと、ヘルムホルツ共鳴周波数T(1,1)1は約100Hz、トップ共振周波数T(1,1)2は約190Hz、バック共振がトップに伝わる周波数T(1,1)3は、約240Hzです。

トップ共振周波数T(1,1)2を下げると大サイズのギターのような効果があります。私は、このT(1,1)2を170~180Hz程度に、T(1,1)1を90~95Hzになるように考えています。

バックが良く振動し、トップにその振動が戻るようなバックを「ライブバック」とか「アクティブバック」といい、共振周波数はトップの2半音~7半音高く設定するといわれます。どこにするかは、ビルダーによります。

ダイポールはクロスダイポールT(2,1)が約320Hz、ロングダイポールT(1,2)が約400Hz
(大型のDタイプでは、クロスとロングが逆になります。)クロストリポールT(3,1)は約500Hzです。

バックモノポールB(1,1)(これが伝わりT(1,1)3になる)、バックダイポールB(1,2)、バックトリポールB(1,3)と呼びます。

これらいくつかの共振周波数が合わされ、ギターの全体の特性を作っています。これを周波数特性といいます。

4.周波数特性の測定
これを確認するやり方は、インパルス応答を測定することです。
インパルス(周波数全域に渡って一定の振幅がある)を調査したいシステム(ギターボディ)に与えて、その周波数応答が、そのままシステムの周波数特性になります。

インパクトハンマー.JPGギターの場合は、インパクトハンマー(私は消しゴムを棒の先に付けました)でギターのトップを叩き、その音をマイクで拾い、フーリエ変換し周波数特性を得ます。このツールやソフトウエアは市販(または無償でダウンロード)されています。別にまとめて紹介します。

これにより、各共振周波数(=周波数特性)が測定できます。

ギターのトップをインパクトハンマーで叩き、その音ををマイクで拾うわけですが、一か所だけではすべての共振周波数がうまく拾えません。特に、ギターの真ん中が節(振動しない)になっているクロスダイポールは拾えないので、ローボウトの左側(低音側)の真ん中とローボウトの右側(高音側)の真ん中の3ヶ所を叩くことによって全部の共振周波数を測定するようにしています(最初の図)。

この方法は、少し矛盾していると感じています。そもそも弦の振動はブリッジ(サドルを通して)からトップに伝わるので、ブリッジを叩くというのが本当の特性ではないかと思いますが、周波数ピークが判断しにくいので良く振動するところで見ているのが現状です。

5.まとめ
ギターのボイシングを行うことを前提として、今まで理解したことや測定結果を示しました。
良い音が出るギターを作ることは、600Hzまでの共振周波数
①ヘルムホルツ共振周波数 T(1,1)1 約100Hz
②トップモノポール周波数 T(1.1)2 約190Hz
③バックモノポールがトップに現れる共振周波数 T(1,1)3 ≒B(1,1) 約240Hz
④クロスダイポール T(2,1) 約320Hz
⑤ロングダイポール T(1,2) 約400Hz
⑥クロストリポール T(3,1) 約500Hz
⑦バックダイポール B(1,2) 約450Hz
⑧バックトリポール B(1,3) 約550Hz
を弦の振動周波数にかぶらないように、バランスをとっていかにうまく出すかが重要だと思います。
(000タイプの周波数を書きました。もちろん、これ以上の周波数も出ています。)


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