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オリジナルギター1-17 ボイシング3 [original guitar1]

トップをサイドに接着.JPG
ボイシングの最適な工程は、写真にあるようにトップをサイドに接着した時です。(ブレース接着後、ここまで一気に組み立ててもブレースを削ることもできるし、あまり問題はありません。バック+サイドの確認ができないというだけです。)

ギターの形になっていれば、ブレースやトップがオーバービルド状態でも、それなりの周波数特性が出ます(ギターがどう鳴っているか参照)。

板の状態(ブックマッチ後のギターの形になったトップ板やブレース付きトップ板)で周波数特性を見る(chladoniパターンで確認することも含め)のはどういう意味があるのでしょうか?

おそらく、弦の振動を音に変える「効率」をアップできるのであろうと想像します。

Mark Blancardさんは、今まで製作した100台の経験から、いい音のするギターがトップ板状態ではどんなchladoniパターンになるかが分かっていて、その経験から、次の機種はトップ板状態でそのパターンになるように調整するそうです。

板の状態でいい音が出るということとギターの形にした時にいい音が出るということの相関が取れているという事でしょう。

前回書いたように、ブレース付きトップとサイドとブレース付きバックをモールドを利用して固定することにより、完成時の周波数特性を予測しながら進めていきます。

接着してないので、直ぐにばらばらにもできます。板状態で確認することも可能です。欠点は、モールドが付いているので、その分周波数はシフトしますから、最終的な周波数特性を予測しなければならないということです。経験的に言えば、モノポールはかなり予測できますが、ダイポールは難しいです。

それでは進めていきます。

トップとサイドをモールドにスプールクランプで接続(トップを接着する工程と同じ)し、タッピングします。

ボイシング(タッピング)を行う上での注意点を書いておきます。
・板単独の場合と同じように、タッピングは指で行うと高周波がうまく出ないので、tapping stickを使用する。
・叩く場所はブリッジを付けるところ(ここだけでは、クロスダイポールなど、うまく出ない共振周波数もあります。)
・スプールクランパの数が少ないと、サイドとしっかりと密着しないので、周波数応答が変わってくる。 特にクロスダイポールが高く出ることがわかりました。クランプは最高個数で行う方がよい。
・モールドの置き方によっても周波数応答が変わる。最終的に平置きで下に何も置かないようにした。

トップとサイドをモールドにクランプし周波数特性をとりました。
top+side in mold1.jpg
これが、結果です。
まず、グラフの見方ですが、横軸は周波数(Hz)でlogスケールで20Hzから20kHzまでです。共振周波数は90Hzから500Hzにピークがでます。縦軸は音の強度でdBです。絶対値自体は意味がありません。相対的にどこが大きいかを見るだけです。
 モノポール141Hz、クロスダイポール313Hz、ロングダイポール398Hzでした。200Hz辺りにピークがありますが、これは良くわかりません。

周囲がフリーな板とサイドとモールドで固定され節の位置が全く変わったユニットとは、周波数特性が変わるのは想像できます。実は、ギターの形で周りが固定されると、こういった周波数特性にほぼなるそうです。全く違う特性になることはありません。逆に言えば、それほど大きく周波数特性は変えられないということを意味します。ボイシングという作業は「最適化」です。木を選定し、厚みを決め、ブレーシングをしたら、もう後はそれを少し調整するだけということです。

トップとバックを接着して完成したボディとトップとサイドをモールドに入れたものとの違い、つまり、トップにモールドが付くとどういう影響があるのでしょうか。太鼓をイメージしてモノポールの動きを考えると、胴体が重く安定するので、節(境界で動かない部分)がトップの外側に移動し、モノポール動作する範囲が広くなるので、周波数が低くなるのは定性的に理解できます。それに比べてダイポールは、モールドが付いても面内の左右(クロス)または上下(ロング)で交互に振動する訳なので、大きな影響は受けない(モノポールに比べて周波数変化は少ない)と考えられます。

voyagerguitarsさんのブログでは、モールド有り無しでモノポールが69(132→201)Hz増えていますが、ロングダイポールは5Hz、クロスダイポール15Hzしか増えていません。

ここで注意が必要です。私が今進めているのは000タイプです。voyagerguitarsさんはDタイプです。結論から言うと、ロングダイポールとクロスダイポールの周波数値が逆になります。サイズ比とロング方向とクロス方向の剛性の差でこうなるのでしょう。実はこの時点ではまだこれに気が付いていません。縦長だからロングが低くなるのだろうと思っていました。

最終的にモノポールは+70Hz、ダイポール+10Hzになると仮定すると、モノポール211(=141+70)Hz、クロスダイポール323(=313+10)Hz、ロングダイポール408(=398+10)Hzと予想できます(ここでは、後とのつながりを考えて、ロングとクロスの数字を入れ替えています)。

モノポールの目標は170から180Hz辺りで、低音をしっかり出したいということで、セミディープ(通常の000より厚め)にしています。やはりこのままでは、オーバービルドと考えられます。

top+side in mold 20210622-1.jpg
トップブレースの高さを、前々回示した寸法のように低くしました。その結果、モノポール141→123Hz、クロスダイポール313→294Hz(2つの山の真ん中)に変化し、ロングダイポール398→398Hzは変化しませんでした。最終予測はモノポール193(=123+70)Hz、クロスダイポール304(=294+10)Hz、ロングダイポール408(=398+10)Hzとなります。モノポールが下がってきて、クロスダイポールも下がりました。まあ、良い方向です。

top+side+back in mold 20200624-1.jpg
最終的にBoxになった状態でどうなるかの予測をしたいので、トップとバックをサイドと一緒にモールドに入れて周波数特性がどうなるかを見てみます。
Boxになっているので、ヘルムホルツ共振がでています。また、バックの共振がトップにも現れて、いわゆるライブバックな状態です。モノポール160Hz クロスダイポール290Hz ロングダイポール364Hz、T(1,1)3(バックモノポールがトップに伝わる)モノポールが240Hzなので、最終的には270Hzになると予想されます。目標はトップより3~4半音高く、210~220Hzなので、バック側がオーバービルドです。

top with brace20200624.jpg
この時点の、トップ単体の周波数特性も取っておきます。次機種のリファレンスになります。山の中心周波数が355~400Hz辺りで、少し下がっています。一番高いピークは520Hzです。

まだ、ボイシングを始めたばかりで、安定して繰り返し同じ値が測定できるか苦労しています。
・横置きが良いか、平置きか?
・タッピングポイントは、どこが良いか?
・マイクの位置
・スプールクランプは締まっているか?
等。

バック側に何も置かないように! 置き方によっても周波数特性が激しく変わるので注意しましょう。

back寸法.jpg
back側も同じように入手できる図面と寸法測定との比較を行い、かなりオーバービルであることが分かりました。stiffは強度で、高さの3乗に幅を掛けた値です。強度比をみて、かなり余裕を見て削る寸法を決定しました。これでもまだオーバービルドだと思います。削りすぎると元に戻せないので、慎重に安全を見て削っています。AGP-07とは、LMIで購入した図面の名前です。StorkGuitarの図面は、AGP-07(ほぼマーチン)と同じなので、同じ値になります。

top+side+back in mold 20200627-1.jpg
バックのブレーシングを削った結果、T(1,1)3 バックのモノポールが228Hz まで下がり、ダイポール、トリポールも大幅に下がりました。

back with brace 20200625.jpg
この時のバック単体でも周波数特性を記録しておきます。ピークが383Hzまで下がりました。

<ここまでのボイシングまとめ>
・top+side+back in mold 最終形態
・top with brace トップ単体
・top+side in mold トップ+サイド
・back with brace バック単体
のトップとバック、モールドでクランプした2つの状態の共振周波数の変化を見ながら、ボイシングを進めています。
1-#17まとめ.jpg
0.製作中のブレース寸法と入手できる図面の中に出てくるブレース寸法を比較することより、ブレーシングがオーバービルド(厚すぎ=重すぎ)であることが推定できた。

1.top+side in mold で最終の周波数特性が推定できる。
→ 完成予想は、モノポールは+70Hz、ダイポール+10Hzと仮定して進める。(voyager guitarsの記事を参考にした。)
バックを接合すると、モノポールが40Hz上がる。ダイポールは10Hz下がると仮定して進める。

2.top+side+back in moldで最終の周波数特性がどうなるか予想した。
完成予想は、モノポール+30Hz、ダイポール+20Hzと仮定して進める。

・モールドの横置きか平置きかで特性が変わる。⇒ 安定している平置きで進める。
・ロングダイポールとクロスダイポールの周波数を逆に考えていた。000 形はlong>cross、D形はlong<cross。

・モールドクランプの締めが緩んでくると、モノポール周波数が下がってくるので注意が必要。

3.ブレース付きトップ単体及びブレース付きバック単体の周波数特性も取り、次機種のリファレンスにする。

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