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トップ材の特性評価2 [woods]

Comparison of different techniques of thermal modification, regarding the improvement of acoustical properties of resonant soundboard material


前回の条件の違いによる結果を考察していきます。まず、5種類のプロセスの違い毎に結果をまとめてみます。


トップ材の特性評価2.jpg

*処理が他のパラメーターよりも密度に大きな影響を与えました。


1.密度を下げ、剛性(ヤング率:MOE)を上げ、減衰を下げる3つが揃う最適条件が処理2であるが、それが本当に良い音につながるかを確認する必要がある。処理2は予備時間(100℃まで上がる時間)がないのはなぜか良く分からない。室温に置かれた板は100℃までどういう温度の上がり方をするのかが不詳。

2.処理3は減衰が最大の減少があるが、これがサスティーンに効いて良い音を出すかもしれない。質量減が0%なのに密度が-3%になるのかよく分からない。

3.処理5は、処理時間が長いと剛性(MOE)が下がったが、密度も最大に下がった。減衰は変化が小さいが、これが音にどう影響するか(音量が上がる?)。

4.木材の内部まで一定の処理できるには、寸法( 540x200x30mm^3)により処理パラメータ(立ち上げ時間、処理温度、全体の時間)を決める必要がある。厚さを薄くすれば、また違った最適ポイント(短い時間)があると考えられる。


音速 (c) と密度の比率が高い場合に良好な音質が得られるという予測のもと、共振率(R=√c/ρ=√E/ρ^3)という評価値で音質を評価していますが、この評価値はヤング率に対して密度が3乗分効くということなので、密度が下がることが有効であることは明らかなので、上の表には特に上げませんでした。


さて前々回のトップ材料特性の測定で考えたことを踏まえて、何の特性が音にどう効くかを考えてみます。


・減衰が小さくなる⇒サスティーンが伸びる。

・質量(密度)減⇒モノポールモビリティが上がる⇒音圧(音量)が上がる。

・ヤング率増⇒モノポールモビリティが下がる⇒音圧(音量)が下がる。

・ヤング率減(剛性が低下)⇒減衰の増加

この論文では、ヤング率減(剛性が低下)⇒減衰の増加という緩い相関があるといっています。ヤング率はどちらでも音に効くパラメータであると考えられます。


結局は、

物質の振動は、密度(比重)、剛性(ヤング率)、粘性(損失係数)で決まります

軽く・柔らかいほど、音響抵抗が小さく、外部からの力で振動しやすくなります。軽く・硬いほど、伝搬速度が高く、内部で音が伝わりやすくなります。

損失係数が大きいほど振動が減衰しやすく、音が収まりやすくなります。

木材機能研究所:木の響きより)

ということではないかと思います。

 

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Summary: Comparison of different techniques of thermal modification, regarding the improvement of acoustical properties of resonant soundboard material [woods]

Comparison of different techniques of thermal modification, regarding the improvement of acoustical properties of resonant soundboard material


Scientific Report by order of Pacific Rim Tonewoods Inc.

Zerbst D., Clauder L., Sanne M., Pfriem A. (HNE)

With special thanks to Horbelt N. (MPI)


December 2019


Hochschule für nachhaltige Entwicklung Eberswalde

Alexander Pfriem:Hochschule für nachhaltige Entwicklung Eberswalde

David Olson:PRT

Lothar Clauder:Hochschule für nachhaltige Entwicklung Eberswalde

David Zerbst


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共鳴響板材の音響特性の改善に関するさまざまな熱改質技術の比較

Pacific Rim Tonewoods Inc(collingsをはじめ、様々なメーカーに木材を供給しているところです)が依頼しました。この研究の目的は、ギターの響板用木材の音響特性を改善するための熱改質の適切な処理と技術を見つけることです。


研究用窯を備えた 2 つの企業と 2 つの科学機関が共同研究プロジェクトで木材サンプルの熱処理を実施しました。


密度の低減と MOE の影響を少なくするために、

・最高温度約 175°C と温度維持段階 2〜4 時間のレシピが:#1~#4

・160°C で 12 時間維持する処理:#5

100℃までの乾燥段階の後に処理が開始

の5種類の処理レシピで寸法が 540x200x30mm3 のシトカスプルース:各プロセスで基板 11 枚を使用した。


その結果、


1.縦方向MOE(ヤング率)

5処理のうち、増えたのは3(最大5%)、減ったものが2(最大-4%)


2.横方向MOE

縦方向とほぼ同じ変化を示した。


3.密度

 基本的にすべてのプロセスで密度が大幅に減少した(4〜8%)。処理が他のパラメータよりも密度に大きな影響を与えた


処理 5(12時間) の密度低減と MOE の削減と相関がある。


4.共振係数 R=√E/ρ^3

密度ρの3乗が影響を与える。R 係数に対する主な影響は密度からのものである。


処理5は高い R を達成したが、密度が減少しMOE が減少した。

処理2は高い R を達成したが、密度が減少しMOE が増加した。

R に基づいて処理の音質向上を評価できない。


5.ダンピング

サウンドのフェードアウトを長くするには、より低いダンピングが必要になります。

縦曲げモードでは、これは処理 2 と 3 で減少

横曲げモードでは、すべての処理で減少

処理3で減衰の最大の減少


縦方向および半径方向の弾性定数

剛性と密度の比率の向上として定義される音質が向上

いくつかの処理はより低い減衰を達成

処理2 が最良の結果を達成

すべてのサンプルについて、減衰の変化と MOE の間に弱い相関がある。


6.平衡含水率 (EMC) と木材パルプの質量損失は、密度の減少と非常によく相関している。木材の質量損失は改質の程度を非常によく示している。

どの処理も平衡含水率 (EMC)が下がり、強い改質を受けた。


まとめ:処理 2(加熱速度: 11°C /時間 最高温度: 170°C 維持フェーズ: 3.8 時間) は、最大密度の減少、最大 MOE の増加、および減衰の減少し、シトカスプルース響板の共鳴性能を向上させるための最良のレシピと考えられる。


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訳と読み込むのに精一杯でした。考察は次回で。この論文は、ここで見つけました。

http://www.anzlf.com/viewtopic.php?f=1&t=9133&p=94763&hilit=torrified+top#p94771


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トップ材料特性測定 [woods]

手持ちのトッププレートをビンテージ処理を行うにあたり、処理前後での特性変化を比較しようと考えています。


ビンテージ処理とは、

1.自然乾燥して、水分を安定させる。

2.無酸素状態で数時間、熱(120〜200℃程度)をかける。

(この段階で、変性して、安定する。)

3.もう一度、湿度をかけ、水分を安定させる。

その条件を変えて、処理をどの程度まで行うかということだと考えると、

①水分やいろいろな成分変化で軽くなる(密度が下がる)。

②乾燥する過程で、剛性が上がることも下がることもある。

③通常の環境下では、粘度は下がる。

④すべての細胞が結晶化するわけではないので、処理条件によっては、高湿度環境に置くと戻ってしまうこともある。よって、確実に言えることは粘度が下がって、重さが軽くなるのではないかと思います。


木材を含めた物質の振動は、密度(比重)、剛性(ヤング率)、粘性(損失係数)で決まります。軽く・柔らかいほど、音響抵抗が小さく、外部からの力で振動しやすくなります。軽く・硬いほど、伝搬速度が高く、内部で音が伝わりやすくなります。損失係数が大きいほど振動が減衰しやすく、音が収まりやすくなります。

木材機能研究所:木の響きより)


1.密度

密度は重さ/体積なので、外形寸法と重さを測れば分かります。処理後では水分が無くなり、成分が変化すると考えられるので、密度は低くなります。体積は変わらないとして、重さを測れば処理前後の変化が分かります。


2.ヤング率

剛性をみる指標としてはヤング率がありますが、この記事では、強度が数%上がるといっていますし、こちらの記事では、強度が10%失われると言っています。これがどうなれば良いのかよく分かりません。


Gore&Giletの本のトーンウッドの厚みを決定する中で、ヤング率を求める式が載っています。ポアソン比積は種類によって異なりますが、平均値0.02を使用すると

ロング方向は、

ロング方向ヤング率.jpg

 

ρは密度、Llは長さ、fLは測定される第一共振周波数、hは厚さ

クロス方向は、

クロス方向ヤング率.jpg

ρは密度、Lcは長さ、fcは測定される第一共振周波数、hは厚さ

 

という式で求まります。要はタップトーンの周波数特性を測定するということで求まります。密度とヤング率は既に測定済みです。

 

3.損失係数 tanδ

木材は粘弾性があり、tanδ=粘性/弾性なので、粘性が少なくなれば振動の減衰が少なくなり、サスティーンが長くなります。タッピングのスペクトラムや周波数毎のサスティーンがわかるように、タッピングの音を録音しておくことにします。直接音の変化が分かります。

 

とりあえずこの3つを測定しておこうと考えています。


と書いていたら、記事の中に論文(共鳴響板材の音響特性の改善に関するさまざまな熱改質技術の比較が見つかりました。後で紹介します。

 

 

 

 

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ビンテージ処理6 [woods]

Luthier Tips du Jour Mailbag 106 - What is torrefied wood?

@OBrienGuitars

OBrienGuitars.jpg

カナダのサーマルウッドという会社を紹介しています。完全に工場です。

内容をかいつまんで言うと

・木材の処理は、2インチ厚で最適化している。

・プロパンが熱源で、熱と蒸気だけで酸素を除去します。真空ではなく、圧力もかけません。処理温度は200℃。どんな種類の木材にも時間を変えることで対応する。温度が低いほどブラウンの色が明るくなる。

 

・プロセスには3段階ある。

1.乾燥段階

8から10%の水分を0%まで乾燥させる。温度を上げる前に水分を除かないと中の水分が逃げられなくなり、亀裂が発生する。

2.ピーク温度まで上昇させたら、3時間置く。

3.その後、150℃で4〜6%の水分を注入すると、その後、水分は中に入らなくなる。

 

・処理後の木材を65%RHの中に1カ月入れたが、水分は入っていかなかった。つまり、密閉されていて安定している。

・効果は、ボリュームが大きくなり、トーンが高域で歪まない。

・30年の自然乾燥と同じようなことを行っている。強度が10%失われる。

・185℃にすると色が明るくなる。処理温度が200℃を越えることはない。

色(ブラウン)は中まで同じ色になるようです。

・トリファイド処理は、フィンランドで始まり、処理温度には規定がある。どの温度で何時間するかというレシピは、知的財産が関係する。

・デッキにする木材は80時間入れる。ゆっくりとローストするのが重要。

 

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Aged Tone Adirondack Spruce by Dana Bourgeois [woods]

Aged Tone Adilonduck Spruce.jpg

Bourgeois Guitars の工場でのTop材を選定している時の映像です。板でこんな音がするんですね。音が高いのは厚いからでしょうか、それとも粘性が減って高音の伸びがあるからでしょうか。


以前、Guitar Top Voicing Demonstration by Dana Bourgeoisでトップが異様にいい音がしたのでこれは何か別次元の物だと思っていました。


Aged Wood とあるので、自然に年を経た古材で枯れているのでしょう。


この音を聞くと、ビンテージ処理した材を使いたくなりますね。


参考記事:Dana Bourgeoisのブレーストップ周波数分析


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ビンテージ処理5 [woods]

前回の続きです。自然の老化やトリファイド処理で木材は、一時的な物性変化を起こし、構成成分の物理エージングによると考えられるという論文があります。

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ビンテージ処理4 [woods]

ビンテージ処理について調べてきましたが、最終的にこの処理によって木材の振動的性質はどうなるかを整理しておきたいと思います。

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ビンテージ処理3 [woods]

木材は経年で具体的にどんな変化があるのでしょうか。

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ビンテージ処理2 [woods]

無酸素オーブンで木材を焼く(焙焼)と木材の特性はどうなるでしょうか。

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ビンテージ処理1 [woods]

以前の記事で「木材がエージング処理されたギターが販売されている」ということを載せました。

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