ライニングの加工方法 [woodwork]
ヤイリギターの製作動画(youtubeです)を見ていたら、ライニングを加工しているところがありました。
オリジナルギター1から3まではこのタイプのごく普通のライニングを購入して使用していました。
このタイプの欠点は、ブレースとの交点が、のこぎりで切り欠くと切込んだライン以外から欠けてしまうことです。
ヤイリギターの動画では、ミニルーターを使用しています。形もキレイに加工できています。
見習おうと思います。
フレット両端球状処理 [woodwork]
フレット両端の仕上がりが気になっていました。プレイアビリティの問題です。
「半球状仕上げ」というのを自分のオリジナルギターでもやってみようかと思って、他のビルダーやリペアの方がどのように仕上げているかというのを調べました。某楽器店では、この費用が7万円位するそうです。
ポイントは、以下の3つです。
①エッジの形状
Ryosuke Kobayashi Guitarsのブログを見ると、「左手にネックが吸い付くようだ」といわれているようです。ここまで丸めなくても演奏上問題が無いと思いますが、最後は見た目が良いということかもしれません。
②フレット両端の角度について
普通の処理では、フレット両端を斜めに角度をつけて仕上げます。角度が浅過ぎると実質的なフレット幅が狭くなり、弦落ちし易くなってしまうので、オリジナルギター1と2では、斜めレベラーを自作して角度を60°にしました。このフレット両端の角度というのは、ネックの一部なのでグリップ側と滑らかにつながる必要があります。よって、リペアの場合は、グリップ側の形状にうまく繋がるようにフレット側を削る必要がありますが、新規の場合は、この角度は自由にすることができます。半球状に丸めるには、フレット両端の角度を垂直に削り、フレット端処理だけで丸く完成させる必要があります。
③フレット端の飛び出し
冬になり、フレットボードが乾燥するとフレット自体が飛び出してくるので、0.5mm位フレットボードの中に入れる必要があります。フレット両端を半円形状にするためには、端を少し中にいれて、角度を垂直にし、フレット端の下側を斜めに整える必要がありそうです。また、海外のビルダーは電動のやすりを使っている動画を見かけます。日本では手動で、ひたすら磨くというのが多いようです。
両端の足を切り、やすりで磨きます。これはMUSTの作業ではありませんが、前述したように、冬になるとフレットワイヤーがフレットボードの両端から出てきて、これが微妙に手にふれてザラザラとした違和感になります。これを防ぐためには、打ち込む前にフレットワイヤーの両端の足を2mm位落としておく必要があります。普通のフレットニッパー(喰い切り)と金属ヤスリでもできますが、フレットタングニッパーがあると便利です。これは1万円以上するので、購入するか迷っています。
テストで、「半球状仕上げ」を試しました。フレット端をフレットニッパー(喰い切り)でカットすると、このような形状になります。足が完全にカットできずに残ります。
これをヤスリで削ります。
これをダミーフレットボードに打ち込み、両端をヤスリで斜め45°にして、先端を丸く仕上げます。
HOSCO Luthiers Tools フレットクラウンファイル R=2mm TL-FF2で角を落とし、さらにヤスリ、サンドペーパーを使って仕上げました。
半球処理をしないでフレットボードに打ち込み、その後で丸くするという手順では、どうしてもフレットボード表面にキズが付きます。また、傷がつくのを避けようとすると作業性が悪く、工数がかかります。これを20本(x2倍)行う気にはなれません。半球処理をフレットを打ち込む前に行い、それを打ち込む工程を考えました。この手順では、打ち込む前にフレットの長さをかなり厳密に決めておく必要があります。
0.フレット両端の足を4mm位カットしておきます。
1.フレットニッパ(喰い切り)でネック幅ピッタリに長さを合わせる。フレットごとに少しづつ長さが違うので、カットは上下方向から切り、左右にエッジが出るようにして揃えます。
2.フレット作業台を作り、両脇を斜めに削るために、フレット端をヤスリで左右先端を斜めに8回づつ削ります。
3.フレットクラウンファイルで先端を上から8回、左右から各5回ヤスリ、先端を丸める。先端がとがりすぎている場合は、先端をヤスリで落とします。
4.粗く球形になったら、#400のサンドペーパーで丸く滑らかに形を整えます。(#400では光沢がなくなります。)
5.ここで、0フレットから19本のフレットを揃えます。フレット長が徐々に長くなっているか全体をチェックし、長いものは微調して揃えます。
6.さらに、1フレット分(つまり0フレットを1フレットに)フレット幅が長くなる方向にずらします。こうすることで、フレットがフレット幅より短くできます。
7.最後に0フレットを作ります。
8.長さがそろったところで、フレット端の仕上げをします。拡大鏡で端をみて、#400のサンドペーパーでキズや丸みが足らないところを修正します。
9.球形ができたら、フレット端の仕上げを行います。スチールウールで先端を磨きます。
以上の手順で打ち込む前に長さと先端処理を終わらせます。
フレットボードにはこんな感じで載っています。フレットボードとフレットの隙間は、後でエボニーのサンディング時の粉とタイトボンドで作ったパテで埋めます。
ブレースを作る [woodwork]
ブレース材は、100mmx20mmx500mmのブロックをアイチ木材加工より購入します。
1.購入時のカット依頼
カットを9.0mm厚x9本(厚さ9mmカットしろ2mm)で依頼します。
材料費+加工費(税込)1,320+1,000円でできます。
大和マークでは、50x5x1.9cm カットを8mmx4本+6mmx1本(カットしろ3mmx4) 加工費500円 を2セット頼めます。ブレースの厚さですが、8mmで十分だと思います。
2.全体を整える。
ノコギリ痕などで表面が荒れているので、やすりで整えます。厚さは8mmあれば良いので、揃えて、きれいに仕上げます。
3.購入後のチェック
節などのイレギュラーな点がないか、9本の重さを調べます。同じブロックから取っても、重さが軽いものと重いものが出てきます。軽いものは、節があったり、木としてNGなものが多いです。トップブレース、バックブレースを合わせて、8本で足りるので、一番軽いものを除きます。Xブレース、トップトーンブレース、バック第3ブレース、トップフィンガーブレース、バック第2ブレース、トップトランスバースブレース、バック第1ブレースの優先順位で良いものから割り当てます。トランスバースブレースとバック第1ブレースは補強材としての意味しかないので、優先順位は低いです。
4.カットラインを入れる。
木材への加工ライン書き7:ブレースを参照してください。
5.カット
レザーソー 180mm 薄刃でカットします。
6.出来上がりブレースの横からの投影図(オリジナルギター2の結果をオリジナルギター3にフィードバック)に整えます。接着時にクランプで押さえるために平らな部分が必要なので、その部分は残します。
これで貼り付ける前のブレースが出来上がりました。
ローズウッドの補修材 [woodwork]
ブリッジ接着 [woodwork]
ブリッジを接着するのは、組み立ての最後の工程です。
この後、ナット、サドルの高さ調整を行い、弦を張り、最終的に弦高調整をします。
ブリッジ接着には、ブリッジプレート押さえ治具とブリッジ押さえ治具を使います。
ブリッジの凹凸を2mmのコルクを左右5枚、真ん中1枚重ねて貼ることで吸収します。これはサウンドホールからのCクランプを1個で済むようにする治具です。これがないとCクランプを3つ使用しなければなりません。真ん中と左右の高さ微調整は、ギター(ブリッジ)毎コルク材で行います。
Xブレースやフィンガーブレースを避けてブリッジプレートにあたるようにします。
サウンドホールからの出し入れを可能にするため、サウンドホールより小さくします。
ブリッジ接着位置は塗装マスキングしてあるので、マスキングテープを剥がし、接着面をサンディングします。この時に周辺に傷がつきやすいので注意します。タイトボンドを塗って、2つの治具とCクランプを使って貼り付けます。コルクとタイトボンドが接着しないように、間にマスキングテープを挟んだ方が良いかもしれません。
フレットボードの欠け修正 [woodwork]
フレットボード溝切後、溝に挟まったゴミを取っているときにできた欠けを修正します。
1mm以上あり、フレットでは隠れないので、パテを作って埋めます。
フレットボードをサンディングしたとき出る削り粉を取っておきます。そのエボニーの粉にタイトボンドで混ぜてパテを作ります。タイトボンドが多すぎると出来上がりが白くなりすぎるので、練り込むことができる量に抑えます。
溝に曲尺をいれてパテが入り込まないようにします。曲尺は厚さが0.5mmなのでピッタリです。そこにパテを入れます。パテは乾いてヒケが出る(乾燥して体積が減る)ので多めに塗ります。
一晩おいて、固まったらカッターで余分な部分を削ぎ落し、ヤスリで整えます。0.1mm位埋まっていませんが、このくらいはフレットで隠れるのでOKです。
フレット両端の足(tongue)を詰める。 [woodwork]
これはMUSTの作業ではありませんが、冬になると木が乾燥して収縮するのでフレットワイヤーがフレットボードの両端から出てきて、これが微妙に手にふれてザラザラとして演奏時の違和感になります。
これを防ぐためには、打ち込む前にフレットワイヤーの両端の足(tongue)を2mm位落としておきます。普通のニッパと金属ヤスリでもできますが、結構地味な作業で心が疲れます。
フレットタングニッパーがあると便利ですが、高いので買うべきか迷っています。
FG-200Jのリペアでは、フレット No.43080Eを使用しました。このJescar EVOは、通常のニッケルシルバー品よりやや硬いので、20フレット分で1日かかりました。
ニッケルシルバーは比較的柔らかいので、サンディングに苦労はなく、20フレットで3時間程度で済みました。この程度でできれば、、フレットタングニッパーは買わないと思います。
まず、足をできるだけカットします。
完全にカットできずに残っている部分をサンディングします。
フレットの端の足がきれいになくなりました。
フレットの打ち込み [woodwork]
フレット材料の種類による硬さとフレットボードの硬さの組み合わせによって、打ち込み易さが変わります。勿論、フレット溝の幅によっても変わります。
普通のフレットのニッケルシルバータイプは、比較的柔らかいので、ローズウッド材には簡単に打ち込めますが、硬いエボニー材に打ち込むにはかなり大変です。ニッケルシルバーより硬いEVOのフレットは、エボニーでも比較的楽に打ち込むことができます。使ったことがありませんが、ステンレスのフレットならばさらに楽な気がします。但し、フレット自体の加工は硬くて大変です。
資金に余裕のある人は、Stewmacの専用工具を使って押し込む方式の方が硬さによらず安定してできると思います(使ったことはありませんが)。
さて、実際にはどうしているかを説明していきます。
フレットを打ち込む前に曲率がフレットボードにあっているかを確認します。購入した状態でほとんど曲率はあっていると思いますが、浅い場合は、フレットボードの曲率より少し強めにRをつけます。フレット浮きを押さえるために重要なことです。足つきのフレットにRをつけるわけですから、このように加工した溝切ラジオペンチを使っています。このラジオペンチは、先の曲がったものにフレット足を挟めるように加工されています。
フレットを溝に打ち込むためには、金属製のハンマーはフレットを傷つけるのでプラスチックハンマーを使います。フレットボードを傷つけることがかなり少なくなります。ネックを支える台は、このネックレストを使用しています。
このようなネックレストもあります。
まず、端から打ち込み、次に真ん中にずらしてを打ち込んでいき、最後に反対側の端を打ち込みます。打ち込みのコツは、フレットボードにハンマーヘッドが当たると痕が付くので、あまりハンマーを振り上げずに10mm位の高さに上げて打ち込みます。叩くというよりも押し込む感じで打ちます。
エボニー材の場合は、硬いので一度に少ししか入っていきません。何回か往復させて全体を打ち込んでいきます。
2割程度打ち込めたら、ここからは、かなり強く打つ必要があるので、フレットを直接プラスチックハンマーで打ち込まずに、木片を介して打ち込みます。
9割程度まではスムーズに打ち込めますが、どうしても最後は0.2mmほど隙間ができます。
ここをぴったりと打ち込むために、フレットセッターを使います。隙間に対してピンポイントで力がかかるのでフレットボードとの隙間がなくなります。
フレットがまだ浮いている状態でこの工具を使うとその部分だけ打ち込まれるので、凹んだ状態になるので注意してください。
1フレットから打ち込むのが短くて慣れやすいのですが、20フレットからやるのが良いかもしれません。高フレットはどうせ使わないので、ミスしても修復しやすいという意味で。通常の長さを購入すると、3本分くらいは余るので、ミスしたら新しいものを使いましょう。
サイドにトップ・バックを貼る。 [woodwork]
貼る前にモールドに入れたサイドにトップとバックをスプールクランプで固定して、ボイシングをするので、サイドのトップ及びバックのブレースと嵌合する部分の切り込みを入れる等、それまでの準備が大変です。
サイドを作ります。
・サイドはベンディング後、モールドに入れてテール側の木目を合わせます。
・テールエンドの飾りを付けないため、完成時にテールエンドの木目がそのまま出るので、ぴったりと合わせる必要があります。
・木目がずれないように合わせて、サイドの接着と同時にテールエンドブロックを接着します。
・ロワーボウトの厚さを115mm、アッパーボウトは厚さ100mmです。
・次にネックブロックをネック側サイドと同時に接着します。
・ライニングを貼り付ける前に、厚さを完成時に近づけておかないと、ライニング自体を削ることになります。
・ライニングを貼り付けます。
・サイドの木目に沿った割れ防止のために、スプリントを貼り付けます。
・トランスバースブレース、Xブレース位置に切り込みを入れ、ブレースとライニングを嵌合するようにします。バインディングをしないので、サイドを厚み方向に残して、カットします。ここまでが準備段階です。
トップとの嵌合調整が終わったら、サイドをモールドに固定して、さらに、トップをスプールクランプで留めて、ボイシングを行います。この時点でトップを貼り付ける準備はすべて整っています。
次に、トップとバックをサイドに固定することで、完成状態でモールドに固定して、ボイシングできるように、バックも貼り付ける状態に加工します。
・トランスバースブレース、第2ブレース、第3ブレース位置に切り込みを入れ、ブレースとライニングを嵌合するようにします。バック側もバインディングをしないので、サイドを厚み方向に残して、カットします。ここでバックを貼り付ける準備も整いました。
モールドを介して、トップ、バックをスプールクランプで留めることにより、トップとバックの周囲をスプールクランプで固定してボイシングします。トップ、バックのボイシングが終了したら、トップを接着します。サイドとトップの嵌合性は確認されているので、接着面を均して隙間を確認します。
接着するときには、モールドを製作した時のギター型の板(12mm)を上からスプールクランプで共締めして留めます。以前の記事にも書きましたが、スプールクランプだけでは、その間が浮き気味になるので、それを抑えるために使います。45%RH以下の低湿で接着するのが良いとされています。
バックもモールドを製作した時のギター型の板(12mm)を介して接着します。
バック側はブレースにもRを付けているので、バックの場合は、周囲に2mm厚のコルクを貼った側を使います。
ネックブロックをサイドに接着する。 [woodwork]
モールドの中でサイド2枚とテイルブロックを接着します。ブックマッチしたときの木目が一致するように左右の厚み位置を調整します。トップ側はネックでなくなるため、まずトップ側の厚み調整を粗く行い、その後バック側の厚み調整をシビアに行います。
1.貼り付け前整形
ネックブロック自体は完成していますが、ネックブロックの前面(サイドに接着する面)に基準面(マジックの線の面)を作り、深さ方向20mmで揃えます。
2.サイド:ブックマッチに貼り合わせる面を合わせる。
モールドを留めたときに、サイドの合わせ具合とモールドの合わせ具合の調整をします。(今回はきついので0.5mm程度削る。)
3.ネックブロック仮止め
タイトボンドで接着する工程では、必ずタイトボンドを接着する前に仮止めを行い、工程を決めます。タイトボンドが塗った後では、工程に不具合があっても直すことが困難になります。
①タイトボンドがはみだして、モールドと接着しないように、サイドとモールドの間にシートを挟む。
②サイドの周囲に引いた20mmの高さ基準の白線にモールドを合わせる(これはモールドの高さを一定にすることで、モールドの高さ方向のバラツキを抑えるためです)。
③木目のズレがないようにモールドのヒンジを留める。Fクランプでサイドとモールドを留める。(計10ケ所、最後に貼り付けるトップ側が開いている部分をモールドに固定する。
④ネックブロックをあてて、 右側真ん中からFクランプで留める。
⑤左側真ん中を留める。
⑥右側下側を留める。(隙間がある)→隙間をなくす。
⑦真ん中下側を留める。ネックブロックからサイドが少しはがれているのを留める。
⑧左側下側を留める。
⑨右側上を留める。
⑩左側上を留める。
4.ネック取り付け面の平面性を確認する。
5.ネックブロック中心とテールブロック中心を確認する。
ネックブロックのサイドとトップ側をシャーペンで印をつける。
6.ネックブロック接着
タイトボンドをネックブロックに塗り、サイドに書いた印に合わせて、仮止めで決めた工程を繰り返す。