反応の良いギターはウルフノートが発生しやすいのか [tests]
ウルフノート(ウルフトーン)は、あるノート(音程)の周波数がギター自身が持っている共振モードと一致する時に発生します。000タイプの中型ギターでは、
・ヘルムホルツ周波数:T(1,1)1(90~105Hz)と6弦の3,4,5フレット(97.5,104,110Hz)のいずれか
・トップモノポール周波数:T(1,1)2 (170~200Hz)と4弦の3,4,5フレット(175,185,196Hz)のいずれか
が最も発生しやすい周波数です。ドレッドノートタイプではもう少し低いかもしれません。
トップモノポール周波数とノートが一致する弦が弾かれると、ブリッジからトッププレートを振動させますが、ほぼ同時にそれを打ち消す方向に振動が起こるため、サスティーンのまったくない”ボッ”という短い音で終わります。ヘルムホルツ周波数でも同じようなことが起こります。
当然ですが、これは弦の振動に対して反応の良いギター(青)に発生しやすくなります。図の縦軸がゲイン、横軸が周波数とすると、反応性を落とせ(ゲインを下げれ)ば、共振する周波数範囲は狭くなります(赤)。
通常は、使用するノート(音程)の真ん中にくるように共振周波数を配置するのですが、反応の良いギターは弦の振動に対してゲインが高すぎるので、真ん中に配置したとしてもその両脇のノートと共振してしまうことになります。
強制振動テストでtanδが小さくなれば(粘性がなり減衰が弱まる)、グラフはより尖った形になり、共振する周波数範囲は狭くなります。よって共振周波数がノート(音程)の周波数からある程度離れていれば、共振し難くなります。今、強制振動テストを行っている理由がこれです。
オリジナルギター3の現状(強制振動テスト400時間終了)を具体的に書くと
ヘルムホルツ周波数:T(1,1)1=107Hzで、 6弦3フレット(97.5Hz)、6弦5フレット(110Hz)に比べて、6弦4フレット(104Hz)の基音のサスティーンが短くなっています。
トップモノポール周波数:T(1,1)2 =191Hzで 4弦3フレット(175Hz)、4弦5フレット(196Hz)に比べて、4弦4フレット(185Hz)の基音のサスティーンが短くなっています。
強制振動テストを開始した時に比べると、明らかに基音のウルフノートは気にならなくなってきていますが、完全ではありません。
ウルフトーン対策としては、効率を悪くする(ゲインを下げる)か、共振周波数を変えて共振しない位置に持っていく方法があります。
対策をする前に粘性を減らす)ことによって、ゲインを上げ、共振帯域幅を狭めることにより、最も効率の良い形にしてから対策を打ちたいと考えています。
<参考ページ>
Does any guitar have a wolf note?
「空気」の共鳴は湿度が上昇するとピッチが上がりますが、「木」の共鳴はピッチが下がります。相対湿度 45% では正しく (または間違って) 並んでいるものも、30% や 60% ではまったく整列しない可能性があるため、「オオカミ」が行ったり来たりする可能性があります。
Question about eliminating wolf tones.
文中、the soundboard is ….. usually pitched two or three tones higher than the back. とありますが、soundboardとbackが逆です。
オリジナルギター3:強制振動テスト9 第4ラウンド終了 [tests]
強制振動テストを400時間行った結果をまとめると、
0.強制振動テストによる共振周波数の変化は小さい。ヘルムホルツ周波数は変化なし。トップモノポールは2Hzアップした。バックモノポールは3Hzアップした。完成後(1年前)からすると全体に数Hzアップしているので、経年による変化が大きいと思われる。Crosstripole(605Hz)は以前からあったので、変化していません。
1.ヘルムホルツ周波数のウルフトーンの低減
・6弦4F(G#)にまだ残っている。
・6弦3F(G)や5F(A)の基音が6秒程度サスティーンがあるのに対して3秒でなくなる。
2.トップモノポール周波数のウルフトーンの低減
・4弦4F(F#)にわずかに残っている。
・4弦3F(F)が4秒、5F(G)の基音が3秒程度サスティーンがあるのに対して2秒でなくなる。
3.サスティーンの効果
高音域のサスティーンは明らかに良くなっているが、定量的に測定できていない。
今後は、「ウルフトーンの低減」に焦点を絞っていきます。
オリジナルギター3:強制振動テスト8 第3ラウンド終了 [tests]
300時間終了しました。
周波数特性の変化はありません。
今までの結果から期待する効果は、
1.ヘルムホルツ周波数のウルフトーンの低減
2.トップモノポール周波数のウルフトーンの低減
3.サスティーンの効果
サスティーンはいくらか豊かになり、ウルフトーンはやや低減されたと感じます。
400時間経過後、データを取ります。
オリジナルギター3:強制振動テスト7 第2ラウンド終了 [tests]
伝振動スピーカー(ピタッとスピーカーplus)は、ラッキーなことに中のコイルが壊れていたわけではなく、外装とそれを止めるパッキンが振動してビビり音を出していただけでした。外装を接着し直し、再び振動テストを行います。
400時間まで続けようと考えてます。今までの結果から期待する効果は、
1.ヘルムホルツ周波数のウルフトーンの低減
2.トップモノポール周波数のウルフトーンの低減
3.サスティーンの効果
です。
200時間終了しました。ウルフトーンの低減を狙って行っていますが、あまり変化はありません。さらに続けます。
強制振動テストで音が変わる要因 [tests]
強制振動テスト(トップに100時間)では、
・サスティーンが伸びる。
・デッドポイント(ウルフトーン)が軽減される。
・全体の音量が上がる。
ことが確認されました。
この論文にあるように、「木材に振動が加えられるとその履歴でtanδ(損失係数)が低減」します。tanδは材料の力学物性に対する粘性を弾性で割ったもので、「振動により木材の内部構造が変わり、粘性がなくなる」と考えられています。また、この現象は振動が加えられなくなると少し戻る傾向にあります。
粘性がなくなるので減衰が弱まり、サスティーンが伸びるようになります。
tanδ(=η:損失係数=Δf/fo(Δfは3dB下がった共振周波数帯域幅))が低減すると、共振周波数foは変化しないとすると、共振周波数帯域幅Δfが狭くなります。今回の例でいえば、F-F#/Gb-G(175〜185〜196Hz)(トップモノポール周波数は189Hz)辺りの共振が激しく、弦を弾くと直ぐに基音が落ちてしまうのが、低減されました。但し、共振周波数が弦の周波数(ノート)にぴったりとあっていると改善されません。共振周波数がノートに重なっているのに改善されたように聴こえるのは、その倍音、3倍音のサスティーンが伸びたからです。また、ミッシングファンダメンタルの影響もあるかもしれません。
通常は共振帯域幅は10Hz程度なので、弦のノートの真ん中(180か190Hz)に共振周波数を設定しますが、今回は帯域幅が広い(20Hz以上)ので、低減されましたが完全になくなったわけではありません(175Hzはなくなったが185、196は残ってる)。完全になくすためにはさらに対策が必要です。
さらに、損失係数が小さくなることで振幅も増え、音量が上がることになります。
オリジナルギター3:強制振動テスト6 バック終了 [tests]
バックについても強制振動テストを続けていましたが、2日目を終了(34.7時間経過)した時点で伝振動スピーカー(ピタッとスピーカーplus)が壊れました。振動させ過ぎたせいか、接着部が外れて、雑音が混じっています。ここでテストは終了します。
バックモノポールは変化していません。他の周波数特性も大きな変化はありません。サスティーンも変わっていません。
バックを強制的に振動させたときの影響は、トップに比べて少ないということは言えると思います。伝振動スピーカー(ピタッとスピーカーplus)を修理するか、新しいものを調達するかして、テストを再開したいと思います。
オリジナルギター3:強制振動テスト5 バック開始 [tests]
バックについても強制振動テストを行います。
トップよりは影響は少ないと思いますが、強制振動テストで特性が変化する(木材の特性tanδが小さくなり、サスティーンが伸びる)のを確認したいと思います。
トップ100時間経過したところで、周波数特性は取ってあります。
オリジナルギター2では、
「バックの経過は、
・36時間で、サスティーンが効くようになってきている。
・バックモノポール243Hzが強くなっている。
・コードストロークのバランスが良くなった。ヘルムホルツ周波数97.5Hzは変化しないが、G(98Hz)にサスティーンがあるように聞こえるようになったのは3倍波である294Hzのサスティーンが良くなったためで、97.5Hzが良くなったわけではない。」
とありますから、バックをすることで音がどう変化するかは興味があります。
オリジナルギター3:強制振動テスト4 トップ100時間後 [tests]
1日平均17時間合計103.6時間行ったところで、周波数特性を測定しました。周波数特性は変わりませんが、高域が出るようになりました。
17時間後、全域のサスティーンが伸びた感じがします。
34時間後、さらに1~3弦のサスティーンが伸びました。一時的にモノポール周波数が少し下がる(T(1,1)1 107→104Hz、T(1,1)2 189→184Hz)。この理由は良く分かりません。最終的には戻っています。
68時間後、同じボリューム設定でも音量が増えてい(音が大きくなってい)ます。また、音の詰まりがなくなっています。ギターの箱が良く鳴るようになっています。103.6時間後、上図(前後のcross-low比較)でも分かるように、高域の倍音成分が上がっている。
巷でいわれるように、音のバランスがとれて、高音のサスティーンが伸びました。
強制振動テストで気になった、
・ヘルムホルツ周波数が107Hzだが、G#(104Hz)が詰まり気味。
・トップモノポール周波数は189Hz。F-F#/Gb-G(175〜196Hz)、この辺りの共振が激しく、基音が直ぐに落ちる。
については、完全には無くなりませんが、少し緩和された感じがします。全域のサスティーンが伸びたので、
・G#(104Hz)が詰まり気味なのはほぼ無くなりました。
・G(196Hz)の共振(弦を弾いた反応(ボッという音))は無くなりました。F-F#(175-184Hz)についても、完全に無くなったわけではありませんが、直ぐに落ちてしまうことは無くなりました。これは、木材の特性tanδが小さくなり、サスティーンが伸びるのと同じようにtanδ(粘性を弾性で割ったもの)が振動時間の増加につれて、共振の幅が狭くなった(尖り具合増した)為と考えられます。
次に、バックについても強制振動テストを行います。
オリジナルギター3:強制振動テスト3 開始 [tests]
まず、
・ヘルムホルツ周波数を調整していたトルナボスを外す。
・トップモノポール周波数を調整していたブリッジピンを軽量(真鍮ピン2本をプラスティック)に戻します。
現状の周波数特性を取っておきます。特に気になるのは、
・ヘルムホルツ周波数が107Hzだが、G#(104Hz)が詰まり気味。
・トップモノポール周波数は189Hz。F-F#/Gb-G(175〜196Hz)、この辺りの共振が激しく、基音が直ぐに落ちてしまいます。
この2つの対策を行います。直接的には共振を抑える方向を考えたいのですが、それは出力を抑える方向になるので、その前に全体の出力を上げる(高域を上げ、全体のバランスをとる)対策をしたいと考えています。
振動を与えるには、伝振動スピーカーピタっとスピーカーを使います。これ自体は電池駆動のものでしたが、長時間駆動させるためUSBから電源を取れるように改造しました。また、吸盤がついているのですが、これでは音が伝わりにくいため直接両面テープで貼り付けます。(後で剥がしやすくするため、マスキングテープを貼っておきます。)これに音源をつなげてギターの本体をスピーカーボックスとして鳴らします。音の大きさは近くで聞いていて少し大きい程度にします。
オリジナルギター3:強制振動テスト2 巷のうわさ [tests]
巷ではどのようなことが行われているか、ネット上でアコギの強制振動テストを調べてみると、
弾き込み加速装置 「ToneRite 」でギターの音が良くなるのか?
等がありました。
やり方としては、
1.ToneRite
初期の使用時には72時間から140時間で効果が現れ始めるそうです。
2.振動スピーカー
を使って振動を与えて効果を見ています。この下のものが私の使っているものと同じです(今は廃番になっています)。
総じて「音のバランスが良くなった」ということが言われています。デッドポイントがなくなって音が良くなるという記事もありますが、高域のサスティーンが良くなり、倍音が出たおかげでそのように聞こえるのではないかと思います。ミッシングファンダメンタルの影響もあると思います。