Raised Fingerboard [structure]
(https://theartoflutherie.com/the-elevated-fingerboard-guitar-design/ より)
Elevated Fretboardとも呼ばれるようです。トップ面からネック表面が通常は面一ですが、10~20mm位上がっているモノを言います。ギターを弾くときの演奏者とネックの位置関係は通常のギターと変わりません。トップ面がネックに向かって潜り込んでいるイメージです。ネックからの弦とブリッジ(サドル)の角度を浅くすることで音量を上げるといわれています。
12(または14 )フレットより上のボディ領域で左手の演奏性を向上させるのが目的と思っていましたが、音にも影響があるといった内容が書かれているサイトがあります。
レイズドフィンガーボード(Raised Fingerboard/RF)仕様のギター について によれば、「1985年にThomas Humphrey氏がデザインしたギターで、古くはStaufferをはじめとするクラシックギター やイタリアの古楽器などで既に見られた構造のようです。現代のクラシックギター においては『弦がブリッジ(トップ板)にかかる力の向きを変える』ことが最大の目的です。つまり、ネックの仕込み角を大きくネガティブ/マイナスにすることで、弦がブリッジをヘッド方向に引っ張る力を(ギターの)正面方向に引っ張る力に変換するのです。その結果、トップ板のロングダイポール運動を幾分かモノポール運動に変換する」ということです。「鉄弦ギターにおいてはRaised Fingerboard仕様にする目的とその効果が大きく異なります」ということですが、詳細と理由は述べられていません。
The Elevated Fingerboard Guitar では、「弦の力が表板とほぼ平行な方向に引っ張られるのではなく、より多くの弦が上方向に引っ張られる」ので音質が向上するといっています。
FLORIAN VORREITER LUTHERIEでは「弦のトップに対する角度を変更し、12 フレットより上の領域で左手の演奏性を向上させることである」といっています。
アラン・カルース は「サウンドはあまり変わりません。私が実験したときは変わりませんでした」といっています。
音質は変わるような気がしますが、音量が増えるのでしょうか?理屈をよく理解できていません。
弦高によって音量や音色は変わるか? その2 [structure]
オリジナルギター4の構造を設計する中で、改めて弦高について調べてみました。簡単に弦高を調節するには「サドルの高さ」を変えることです。
サドルの高さを変えると音にはどう影響するのでしょうか?
今までの私の経験では、「1~4mm程度であればあまり音に影響ない」と感じています。つまり、これ以上サドルが高すぎると、サドルの厚さ、材質、溝の深さにもよりますが、音量が低下するように感じられました。また、いろいろな記事で「サドルを高くして弦の角度を狭くしてサドルにより圧力をかけると良い」ということが書かれていますが、サドルを低くして角度を広くして圧力がかからなくしても音量、音質とも変わったと感じたことはありません。この定説は疑わしく、ある程度の圧力が加わっていれば良いと感じています。
サドルを高くし過ぎると弦の長さが変わってきて、イントネーションにも影響があると思います。
これに関してかなりマッチした答えがありました。アランカルースの意見を要約すると
弦が振動するときに生成される「信号」は 3 つ
1.最も強いのは「横」信号です。弦が上下に動き、ブリッジを上下に引っ張り、トップがスピーカーのコーンのように動きます。これはトップが音を出すための非常に効果的な方法
2.次に強い信号は、平均して横方向の振幅の約 1/7 であり「張力変化」信号です。弦がまっすぐな「静止」位置から変位すると、弦はよりきつくなり、サドルの上部をナットに向かって引っ張ります。これは横方向の動きの全サイクルごとに 2 回発生するため、張力信号は弦の基本音に対して「オクターブ 2 倍」になります。ブリッジを大きく揺らすにはかなりの力が必要です。結局のところ、私たちはそれに抵抗するためにトップスを作ります。また、ブリッジを揺らすと、ロワーボウトの半分が「上」に移動し、残りの半分が「下」に移動するため、多くのキャンセルが発生します。この動きにより、350 Hz (高音の E 弦のピッチ程度) より高い音は、それ以下よりも多くの音を生成します。
3.「縦波」によって引き起こされる弱い信号があります。基本的には、長い管の中の空気中で見られるものに似た弦内の圧縮波です。これは通常、弦の基音の 7 番目または 8 番目の部分音あたりになりますが、弦の張力の影響をあまり受けないため、必然的な関係はありません。また、ブリッジの上部もナットに向かって引っ張られます。私たちの耳は敏感になりがちで不協和音が多くなる高周波域にあるため、この「ジップトーン」は、そのパワーが示す以上に音色を加えることができます。
・6°を越えれば十分。ブレイクアングルは重要ではない。
(6°というのはサドル高1mmでサドルーピン間10mmの場合です。少しでも角度が付いていれば問題ないということです。)
・弦を 11mm から 18mm まで上げたところ、人々は違いを聞き取ることができた。2 番目の高調波の出力が大きくなり、縦方向の「ジップ」トーンの周波数でもより多くの出力が得られた。トップが全体的に少し動きにくくなり、人々が聞いていたのは実際のパワーの増加ではなく、倍音レシピの変化であった可能性がある。
・サドルの上部に下向きの圧力を加えても、サドルの上部に「より多くの音を伝える」ことはできない。静的な力と動的な力の区別を明確にしておく必要があります。信号の動的力は明確に定義されており、ブレーク角度によって変化しませんが、より大きな静的力は変化します。角度が弦をサドルトップに接触させておくのに十分である限り、すべての信号が送信されます。
私の実際の経験とこの結果がかなりあっていて腑に落ちました。
弦高によって音量や音色は変わるか? その1 [structure]
オリジナルギター4の構造を設計する中で、改めて弦高について調べてみました。
サウンドホール、つまりトッププレートと弦の間隔による影響があるかということです。
Gore&Giletの本を見返してみると、volume 1の4.6.12に「サウンドホール上の弦高が14mm」を推奨するということが書かれています。「サウンドの決定要因の1つです」と書かれているのですが、その理由が書かれていません。
あまりにもトッププレートに近いと(例えば7mm以下)、演奏時に指やピックがトップにあたってプレイアビリティの問題があるとは思います。
この距離は、設計時にはあまり意識したことがありませんでした。
オリジナルギター1~3を調べてみると
#1: 10mm
#2: 9.5mm
#3: 11mm
でした。
ブリッジ9mm、サドル3~4mmとするとサウンドホール上で12mm以上にするのは難しいと思いますが、何故14mmなんでしょう?
acousticguitar forumでアランカルースが述べています。「アコースティックギターでは、弦がサドルに加える力を音に変換します。つまりサウンドホールが弦の音を「聴いて」、それを何らかの方法で聞こえるレベルまでブーストするわけではありません。」とあるように、音には影響がないと思います。
フェンダーライクなシンプルネック構造3 [structure]
・ネックの留め方はフェンダー方式でネック側がナットで、ボディ裏からネックに向かってビスで留める方法にします。但し、ビスの頭を外側に出さないようにボディに隠すこと。
・設計・加工・調整・取り外しが簡単にできるようにする。将来、問題となるのは弦高です。これを修正するためにネックのボディに対する角度を調整できること。
・軽量化が1つのポイントなので、なるべく軽くすること。
・ハイフレットへアクセスしやすくすること。
が要求事項です。
今回もネックブロックが設計の中心になります。まず、ネックの下からビスで留めることを考えます。
ネックには鬼目ナットM6X13mmを2個埋め込みます。トラスロッドの調整穴をヘッド側にすることで、ネックのボディ側に鬼目ナットのスペースを確保します。トラスロッドの両脇のカーボンファイバーロッドはそのままネックの全体に通します。その真ん中にネックを留める鬼目ナットが入ることになります。
次にビスの頭を外側に出さないようにボディに隠すことを考えます。ビスの頭がボディの外に見えるのはクールではないので、ボディの内側に隠すことを考えます。今回はMartin oooタイプに合わせて、ボディを薄くします。
ネックブロック部全体の厚さ85mmの割り振りは、
ネック厚 27mm
ネックブロック 20mm
スペース 33mm
ネックブロックベース 5mm
と割り振ると、スペースから六角レンチを入れて締めることができそうです。
ボディ端からトランスバースブレースまでは80mm位なので、そこまでネック部材を延ばします。ボディ端からサウンドホールまでは100mmなので、20mmはフィンガーボードだけがトップ表面にでることでることになります(この辺りはOrg.#3と同じです)。
これで矛盾なく各部材のおおよその位置関係が決まりました。これから各部材の寸法を確認しながら、細部の配置をしてみます。
上の写真はBrunner-guitarsのものです。こんな感じで考えています。ボディとネックの境界をいかにうまく作るかがデザインのポイントです(ネックの穴はチルトネック調整用ですから、今回はいりません)。
フェンダーライクなシンプルネック構造2 [structure]
その中でも、Brunner-guitarsのものはデザイン(外見)が洗練されています。これもチルトネック構造になっているようです。
Youtubeを見てください。
ブレーシングもXブレースではなく、Gore GuitarsのFalcateBraceに似ています。自分で組み立てる宿泊コースも用意されているようです。
デザイン(外見)はこれを参考にしようと思います
フェンダーライクなシンプルネック構造1 [structure]
方針は、以下です。
・設計・加工・調整・取り外しが簡単にできる。
・ハイフレットへアクセスしやすくする。
トルナボス [structure]
「ギターのサウンドホールの内側に取り付けられたシンプルな円柱(円錐)」をいいます。
クラシック ギターのデザインで標準になっているアントニオ・デ・トーレスは、青銅製のものを積極的に使ったようです。トーレスのトルナボスは、バックに立てた短い棒で保持されており、トップとバックがつながっています。しかもトルナボスは円錐形です。トップの振動をバックがうち消してしまうような気がするのですが、どうでしょう。
これをつけることによって低音がどのように強調されているかを聞くことができます。
トルナボス(= turned voice)は「向きを変えた声」を意味し、聴衆には分かりませんが、演奏者にとってギターの音が特に静かになるという残念な効果がありました。
ナイロン弦の導入により姿を消したそうです。
筒が仕込んであるということは、低音のでるバスレフスピーカーと同じ理屈のようで、このサイトによると
・なぜか全体的に音量が増した
・弦の振動時間が長くなった しかしいわゆる”余韻”は短かくなった感じ
・音色がクリアーに(というか鋭く)なった 特にブリッジ付近で弾くと極めて顕著
ギターではなくAruHarpだそうです。
私のオリジナルギター3による経験では、明らかに音圧が落ちた気がします。
しかし、これは筒の深さを変えることでヘルムホルツ周波数をコントロールでき、スチール弦ギターでもいろいろと使い道がありそうです。但し、深すぎると音の放射量に影響がありますので、注意が必要です。
参考:
クラシックギターのトルナボスとは その効果と役割、歴史について
http://naracraftm.seesaa.net/category/7671207-1.html
https://inside-guitar.com/what-is-a-tornavoz/
https://acousticguitar.com/how-plugging-the-soundhole-affects-an-acoustic-guitars-sound/