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フレット打ち直しのポイント [repair]

フレット打ち直しのポイントは、

1.古いフレットを抜く前の準備

2.フレットタング幅の選定

3.新しいフレットをネック表面の曲面に合わせる。

ことです。

 

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YAMAHA FG-200J 分解⇒リペア その2 [repair]

前回は、ネックの割れを修正すると同時に、ネックリセットを行っています。

これをやっているうちにダブテイル接続の欠点を痛感し、これが、ネックボルトオン化、ボルトオンーボルトオフ構造につながりました。

5.ネック接続構造の改造

FG-130のリペアや所有したギターの経験で、弦の張力(約70Kg)により、経年で弦高が高くなってしまいます。軽度の場合は、サドルを低くして対応します。それでは対応できない場合は、ネックリセットを行います。
 従来のギターは、ほぼすべてダブテイル構造をしています。この構造は、FG-130リペアの時にも書いたように、致命的な欠点を持っています。

まず、単純なアリ継ぎ構造ではなく、ネックを差し込むほどで細くなっているので、その構造を手加工で行うのは大変難しい。また、どうしても隙間ができ、有名なM社でさえ、そこにシムを詰めたりして調整していて、それがネックの元起きの原因になっています。また、膠やタイトボンドを使って接着するので一度接着したら、元起きを治すためには、ネックリセットが必要で、そこに蒸気をあて剥がさなければなりません。これは工数と技術がいる作業です。

ダブテイル構造をどうしたかというと、ボルトオン構造にしました。これはエレキなどにフェンダーが採用した方法です。アコギではテイラーが採用しました。さらにこれが進化してボルトオンーオフ構造になっています。ゴアギター、ボジョア等も採用しています。(ボジョアギターのホームページには、その構造の写真がありません。bourgeois guitar neckのキーワードで検索してください。すぐに見つかるはずです。)

FG-200J 改造後の写真.JPG
この写真は、YAMAHA FG-200J 改造後の写真です。ネックとボディの両方にかなり大胆な改造を加えています。元々ダブテイルだったものを、ボルトオンーオフ構造に改造しました。ネックが割れているのを直し、ネックリセットを行いリペアするのに、それを利用して、ボルトオンーオフ構造にしてしまったということです。

参考にしたのはテイラーの構造です。自分の作るものでネックの問題は起こしたくなかったので、この方法を練習してみました。

切り欠き.JPG
まず、ボディ側フィンガーボードが取り付ける部分を切り欠きます。
部品.JPG
ボディ側に取り付ける部品とフィンガーボード下に接着する部品を作ります。この部分は、鬼目ナットM6x10を使います。ビスはM6x16です。鬼目ナットは、六角レンチで木に埋め込みナット構造を作る部品です。
部品2.JPG
ボディの中で、こんな風に結合されるわけです。

部品取り付け.JPG
ボディにこの部品を取り付けます。

フィンガーボード部品取り付け.JPG
フィンガーボードにも取り付けます。順番が違います。鬼目ナットを仕込んだ後ですね。

ネック.JPG
ネック側も準備します。ネックの割れ止めを行ったビスが見えます。その下はトラスロッドのエンドです。

ネック2.JPG
ネックの窪み部分に埋め木して、ドリルΦ8.5で深さ20mm以上開け、タイトボンドを流し込み、鬼目ナットM6x16を2か所ねじ込みます。

ボディ穴あけ.JPG
ボディに穴を開けます。位置は現物合わせです。鉛筆の矢印は当たる部分で、削る方向を示しています。

ボディ側.JPG
ボディ側から見たビスで取り付け後の写真です。

左右位置合わせ.JPG
1弦と6弦を張り、ネックの取り付け角度を見ています。左右とサドル高さ(これはネックリセット済み)を合わせます。

これで完成です。

このボルトオンーオフ構造は、一度取り付けが決まるとネジで固定できるので、弦の張力による経年変化がかなり抑えられます。かなりというのは、ダブテイル構造からボルトオンーオフ構造で構造的にはなくなるのですが、ヒールブロックが杉材でできているため弱く、素材の強度不足は残ります。

整理すると、
弦の張力による経年の弦高が高くなる原因は、元起きとネックの順ぞり(変形)にある。(ここでは触れませんが、トップの凸変形(ブリッジ根元の)もあります。)

元起きの原因は、ネック取り付け構造とヒール部材の変形で、ボルトオンーオフ構造により構造的なものはなくすことができる。

ここの部分は、今後のオリジナルギター製作の部分でも書きます。経年による弦高対応は、安定的な演奏状態を実現する最重要ポイントです。


6.フレット打ち直し
43080.jpg
フレットは、フレット No.43080Eを使いました。Jescar EVO“Ni-Free” Goldです。通常のシルバー品よりやや硬いです。

端切り.JPG
まず、両端の足を切り、やすりで磨きます。金属と木の膨張率の違いにより、冬にフィンガーボードの両脇からフレットの足が出て引っかかるのを防ぎます。

14F以降.JPG
14フレットから20フレットまでを打ち込みます。リペアで若干緩いこともあり、タイトボンドを塗って打ち込みました。

1~13フレット.JPG
1から13フレットを打ち込みます。プラスチックハンマーを使用しています。ネックレストを台にしています。このネックレストは今売っていないようです。別のものを購入して下さい。自分で作ることもできます。

斜め.JPG
フレットの端を斜めに揃えます。自作の斜めのレベラーを使います。市販品は、角度45°が多いと思いますが、フレット幅を稼げるように60°にしました。

フレットファイル.JPG
マスキングテープをまずネック両脇の長手方向に貼ります。その後でフレット間をカバーします。こうすることで剥がすときに一気に剥がせます。

その後で、フレットレベラーでまずトップを平らにします。その後、フレットファイルで丸く形を整えます。ここはFG-130のリペアの時にも言いましたが、幅の広い物を使います。狭いものはフレット端とファイルが引っかかりうまく動きません。

その後に、曲尺を使い、前後のフレット3つの高さを見るために当ててみます。高いところは、カタカタと音がするので、マジックでチェックします。そこをもう一度フレットファイルで削って高さを揃えます。

平らになった.JPG
フレットファイルで高さがそろったら、#400→#800→コンパウンドで磨き完成です。

#400 スチールウール.JPG
コンパウンド.JPG
完成!

7.ネック塗装
下地整える.JPG
#120で細径化を仕上げているので、#400→#1000で表面を整える。
パミス.JPG
シェラックニスを下塗り後、パミスをアルコールで溶いて塗りこむがうまくいかないため、一度#1000で剥ぎ取り、もう一度、パミスを塗りこむが70%程度しか入り込まないので、ウェスで表面をふき取り次の段階に進む。
一日おきに、シェラックニスを塗る。これを6日間繰り返す。
完全でない.JPG
この後も、うまく塗れない場所があり、#1000で剥がした後、一日おきに、シェラックニスを塗る。これを6日間繰り返す。この後、#1000で磨き、コンパウンドで磨き完成。

木管をパミスで埋めることに挑戦したが、完全には埋まらない。その後、何回かシェラック塗装を繰り返し何とか木管を埋めました。完成後、コンパウンドで磨いてから4日間ぐらいは、表面が手につく感じがある。その後、布にネックを押し付けているとその痕がつくので、シェラックニスはあきらめます。

8.ナット・サドル作成(最終調整)
最終調整は、まずナットから行います。
鉛筆を半分に.JPG
鉛筆を真ん中から割ったものを作り、1フレット、2フレットに合わせて、ナットに高さを書きます。

粗削り.JPG
その線が残るくらいまで全体を削ります。

弦間隔を決める.JPG
弦間隔を決めます。String Spacing Ruleは、間隔が徐々に狭くなるようにピッチが決められていて、合わせるだけで最適な間隔が決まる便利な工具です。

工具類.JPG
間隔を記したナットにまずは、先の細いやすりでマークを入れます。その後、各弦にあった太さのやすりで高さを整えます。ここに載せたナット溝切用ファイルセットはネット上で見当たりません。今は、板状のやすりで厚みを選ぶようになっているようです。

ナット完成.JPG
ナット高さの最終調整は、2フレットと3フレットの間を押さえて、1フレットに弦が触れる直前でやめます。String Lifterがあると、弦を張っていても横に持ち上げることができるので、便利です。その後、全体を紙やすりで整えます。 


サドル製作に移ります。

厚みをだす.JPG
厚みを出して、

幅と高さ.JPG
幅を揃え、ブリッジからの高さ6mmのものをまず作ります。材料は、TUSQを使用しています。

サドル完成.JPG
高さ調整は、12フレットと弦の隙間を1弦で2mm、6弦で2.3mmにするように調整します。12フレット上の隙間を測り、目標との差の2倍をサドル底面から削ります。これで完成です。

例えば、3か月後に測ると1弦で2.3mm 6弦で2.7mmありました。これはネックの順ぞりの影響です。よって、1弦側を(2.3-2.0)x2=0.6mm 6弦側を(2.7-2.3)x2=0.8mm さらに削りました。


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YAMAHA FG-200J 分解⇒リペア ネック外し治具 [repair]

ネック外しの方法と治具をもう少し詳しく補足します。
DSCF3945.JPG
まず、ボディ側に入った1番目の15フレットを外します。この下に通常は、ネックとヒール
ブロックの隙間が5mm位開いており、ここに、Neck Joint Steamerのノズルを入れ、ここに蒸気を入れて、膠やタイトボンドで接着されている面を柔らかくして抜くわけです。これはホースにノズルがついただけのものです。この先に蒸気が出るもの(例えばこんなもの)をつなげます。ホースと Steamerの口の大きさは自分で調整が必要です。

この写真では、15フレットより少し前に隙間があったため、少しボディ側が削れてしまっています。本文でも説明しましたが、ネックが割れていたので、半分残っています。
DSCF3896.JPG
ここに写真のようなネックを上に持ち上げるような力のかかる治具を組み立て、この穴にノズルを入れて蒸気を入れ込むわけです。

5分くらいやると抜けるようになります。


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YAMAHA FG-200J 分解⇒リペア その1 [repair]

FG-200J.JPGさらに内部構造や木材加工技術を上げるため、YAMAHA FG-200Jのリペアを行いました。リペア後、ネック以外は塗装はしていません。あまりいい音ではなかったので、今は組み立てれば弾けますが、ネックとボディをばらしています。購入はギター製作を中断する2008.10以前で、おそらく2,000円位。購入した時点でネックにヒビが入っていて、元起きが発生している(弦高は12F 6弦で3.9㎜ 1弦で3.6㎜)。

初期のヤマハのギターのネックブロックは杉材のようなもの(マホガニーではない)が使われており、柔らかすぎます。これも元起きの原因の一つでしょう。分解リペア期間は、2018.8-2019.8。1台目の組立を再開しましたが、また壁にぶつかって、様々な疑問点をこれを使って確認しています。

この時は、
・リペアによる木工技術のアップ
・ネックとボディの接続方法
を最重要課題として考えていました。

その後、
トップを削ったり、ブレースを剥がしてボイシングを行おうとしましたが、合板トップであり、成果が期待できないと思い、これは中止。

強制振動テスト実験でどの程度の効果があるかを確認しました。

1.ネック外しと割れ修正
ネック割れ修正1.JPG
購入当時(2008年)、ネック外しを行ったが、接着剤が軟化しなかったため、一度諦めてます。おそらく、アイロンによる温め方が足らなかったのでしょう。
ネック割れ修正2.JPG
今回(2018年)はじっくり温めたので、なんとか剥がれましたが、蒸気を入れ外す治具で外そうとすると、割れている部分が中に残ってしまいました。これを外すのにえらい苦労しました。完全に割れています。
ネック割れ修正3.JPG
割れていたところに、斜めに2本ビスを入れ、タイトボンドで接着しました。これでネックリセットが行えます。
蒸気穴ふさぎ1.JPG
15フレットに開けた蒸気を入れた穴をふさぎます。
 
2.ネック細径化
ネック細径化1.JPG
FG-130の時にも書きましたが、この時期(1970代前半)のヤマハのネックは太い(=厚い)です。これをShenandoah M00045のネック形状に合わせようと、まず1,5,10フレットの断面のテンプレートを作りました。
ネック細径化2.JPG
ネックを厚さ1フレット23.0→21.0mm、5フレット24.5→21.5mm、10フレット26.2→23.0mmに合わせて削っていくわけですが、まず、ネック中央の厚みを出し、目標になったら、中央に線を引きます。ネックを山に例えると尾根になるわけです。この中央線はネック完成まですべての基準になり、消えません。
ネック細径化3.JPG
削るツールは写真にも写っていますが、シントー のこヤスリ L E2101 が便利です。通常のヤスリの10倍以上速く整形できます。ギター木工のため買ったうちのベスト3に入る良い工具です。ネック用カンナもありますが、断然これが速いです。ただ、鋸カスが沢山出ますので、こまめに掃除機で掃除をしてください。マスクを忘れずに。

この場合、ネック幅は決まっているわけですから、あとは形状を出していきます。まず中心から両脇45°の部分を削っていきます。次に22.5°、67.5°と前の角度との中心を削っていきます。テンプレートをあてて確認しながら。

ネックの端に近い部分がどうしても残りますので、幅方向を削りすぎないように慎重に行います。
ネック細径化4-1.JPG
こうなれば完成です。

3.フレット抜きとフィンガーボードR化
フレット外し1.JPG
古くなったフレット交換とフレット打ち(後で出てきます)の練習を兼ねて行いました。フレットを抜くわけですが、まずフレットボード全体にレモンオイルを塗ります。古くなって脆くなったフレットボードを湿らせて欠けにくくするわけです。次に、アイロンでフレットを温めて膨張させてボードとの隙間を作って、抜けやすくします。フレットを抜くには、ツノダエンドニッパーEN-115を使います。引き抜くときにフレット磨きプレートを使うと、フィンガーボードの溝端が欠けにくくなります。
フレット外し2.JPG
やっと抜けました。もう40年以上たっている木材は脆いので欠けに注意しましょう。
フレットR化.JPG
ついでにフィンガーボードを弾きやすくするために、10インチのRを付けました。また、ポジションマークがプラスチックでできていたためアイロンの熱で溶けてしまったため、白蝶貝に入れ替えました。

4.ネックリセット
弦高調整.JPG
ネックのサドル高さを決めます。今、フレットボード面から延長するとサドル上で1mmの高さがあります。フレット分1mm、12フレットで2mmの弦高とするとサドル上ではその2倍の4mm必要になります。よって5mm高くし、6mmにする必要があります。
ネックリセット1.JPG
サドルを現状より5mm上げたいとすると、ヒール部分の厚みはおおよそ100mm、ボディ端(=フレットボード14F)からサドルまでは300mmですから、三角形の相似の関係でヒールをその1/3≒1.67mm削ればよいことになります(サドル高は6mm)。
ネックリセット2.JPG
これでボディにネックをセットするとヒール部分で隙間が空いて、ガタツキがあります。
ネックリセット3.JPG
これを補正するために、Sim(ローズウッドで作りました)を作り、削りながらネックとボディの隙間(ガタツキ)がなくなるようにします。

この作業は空しい感じがします。ダブテイル接続という形でネックとボディを接続すると常にこの作業が発生します。よって、この接続方法はやらないようにしようと考え始めました。

ネックが割れているのを修正すると同時に、ネックリセットを行い、さらにこれをネックボルトオン化、ボルトオンーボルトオフ構造へと進化させます。

それは次回で。

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YAMAHA FG-130 分解⇒リペア [repair]

FG130-0.jpg1台目のギター製作準備と並行して、内部構造を理解するために、1973年頃に製造されたYAMAHA FG-130の中古品をヤフオクで購入しました。1,000円位だったと記憶してます。始めたときは分解することしか考えていませんでしたが、修理して今も演奏できる状態にあります。



<リペア内容>
1.ネックリセット
2.ペグチューナー交換
3.フレット打ち直し
4.ネック細径化
5.ネック塗装
6.ナット交換&サドルTUSQ化




1.ネックリセット
まずやったことは、ネックの元起きがひどくネック元起き(12フレットで5㎜以上)、これを修正しました。ネットでFG-130の所有者のブログ等を調べるとかなりの数、ネックの元起きらしきものが起こってます。

弦高が高くなる原因は、弦の張力(70kgといわれている)により
①ネックの順ぞり
②ネックとボディの接合部の経年変化と構造的問題
③ボディのブリッジ部の膨らみ(ゆがみ含む)
が起こることです。
①は調整用のトラスロッドが埋め込まれており、通常は、これで調整できます。
②はマーティンを含むほぼすべてのアコギに使用されているネック接合ブロックのダブテイル構造とその加工精度、木自体の変形で、ネックを外し、取り付け角度を修正する必要があります。
③は②と同じ対応をするしかありません。

自分でギター製作をするにあたり、まず考えたのがこの問題の対応方法でした。
結論をいうと、
①の対策としてネックにはトラスロッドの両端にカーボンロッドを組み込む構造に
②の対策としてボルトオン構造+ネックブロック取り付け強化
を行っています。この詳細は「オリジナルギター」で述べます。



FG130-1.jpg本来ならば、15フレットを抜いてそこに穴を開け、そこから蒸気を入れて接着剤(膠)を溶かし、ネックごと外すのが普通のやり方ですが、蒸気を出す器具を持っていなかったので、アイロンで温めて強引にフィンガーボードを剥がしました(左上)。

このネックとボディを接続する構造をダブテイル(右上と左下)というのですが、この構造自体に難があります。このギターは間違いなく機械加工されていると思うのですが、それでも嵌合がNGでネックを前後に力をかけるとヒール側が3mmくらい開いてしまいます(右下)。斜めのほぞが、ヒールに向かって細くなっていくわけですから、ネックとボディ側を合わせるのは至難の技です。手加工でこれをやるのは不可能でしょう。

さて

FG130-2.jpgこの弦高対策は、ネックのヒール部分を削ることによりボディとネックの角度をつけ、サドル部分の高さを取ることができるように加工します。こうすると相対的に弦高が低くなります。ボディ厚みが100mmで仮に0.5°の角度をつけると100mm x sin(0.5°)≒0.9mmの隙間が取れます。ボディ端からサドルまではおよそ300mmですから、3倍効いてきて、サドル高さで2.7mm程度の高さを確保できます。
 実際にはこの部分の隙間を2mmにしたので、サドル高さで6mm確保したことになります。

さらに、これで終わりではなくて、ネックとボディの取り付け角度を変えた(削り量で2mm)わけですから、トップ表面でフィンガーボード先端とボディの隙間が同じように約2mmできてしまいます。今回はボディにそのまま接着しました。14フレット(ボディ端)が少し膨らみますが、この分はフレットボードの厚さを削ることで対応しました。かなり強引なやり方です。

2.ペグチューナー交換
 経年劣化でさび付いていたチューナーを交換しました。穴径10mmでしたのでこれに合うGOTOH製 SG301-20-L3+R3-Chrome を取り付けました。オリジナルのチューナーは取付穴を埋めてから、新しい位置に開けます。
チューナーは、waverly schaller grover 等海外メーカーがいろいろとありますが、GOTOHが品質的には一番と思います。海外、日本を問わずビルダーの多くが、510シリーズを使用しています。

3.フレット打ち直し
フレット打ちの技術習得を兼ねて、リフレットを行いました。(フィンガーボードポジションマークの変更も行いましたが説明を割愛)

FG130-5.JPGまずは、古いフレットを抜きます。これには写真にあるようにフレットプラー(抜きの専用工具)でフレットを抜きます。ここれ注意しなければならないのは、古いフレットボードは脆くなっているということです。レモンオイルをぬり、はんだごてでフレットワイヤーを十分に熱してから引き抜くことです。力任せに引き抜くと間違いなく、溝のふちが欠けます。







FG130-4.pngフレットワイヤーは、一般的なスモールタイプ(フレットボード上で高さ1.0x幅2.0)は、国内では三晃製作所、タイプはSBB-23(0.6mm),SBB-217(0.5mm)です。販売は大和マークでしょう。
 この2つの違いは、フレットボード溝に入る足の幅です。フレットボードはエボニー(黒檀)やローズウッドのような硬い木なので、この0.1mmの差は大きいです。
リフレット時で既にフレットが打たれた後であれば、溝が既に広がっているので、0.6mmです。
新しく溝を切ったならば、0.5mmでしょう。もちろん使用する鋸の厚さによります。
他のメーカーではJim Dunlop、Jescarなどがあります。

FG130-6.JPGフレット打ちは、まずワイヤーを1~20フレットにあった長さにカットします。その時には、フレットがバラバラにならないための治具を作ります。これに順番にフレットを用意します。






FG130-7.JPGまず、フレットボードの曲率より少し強めにRをつけておきます。フレット浮きを押さえるために重要なことです。足つきのフレットにRをつけるわけですから、このように加工したラジオペンチも必要になります。このラジオペンチは、先の曲がったものにフレット足を挟めるように加工されています。最近はフレットベンディングプライヤーもあります。

フレットを溝に打ち込むためには、金属製のハンマーはフレットを傷つけるのでプラスチックハンマーが必要です。

まずは、端から打ち込みます。端が打ち込み終えたら、逆の端を打ち込み、最後に真ん中を打ち込みます。フレットボードにハンマーヘッドが当たると痕が付くので、あまりハンマーを振り上げずに10mmの高さに上げて打ち込みます。叩くというよりも押し込む感じで打ちます。

今回はフレットボードをネックから剥がしてしまったので、打ちやすいですが通常はネックに付いた状態でフレットを打ち込みます。短い1フレットから順に打っていったほうが慣れてくるのでいいと思います。

FG130-9.JPG全部打ち終わったら、フレットカッターででっぱりを切り取ります。フレットカッターには、図のように2種類あり、左のほうが使いやすいです。先端が平らなので後のヤスリ掛けが楽になります。






FG130-8.JPGFG130-10.JPGさらにフレットレベラー(に取っ手を付けました)ででっぱりを平らにします。

次に端をフレットボードとの角度60°でヤスる治具(これもフレットレベラーに取っ手を付けた自作です。市販もされています。)で揃えます。

さらにエッジを丸くしていきます。ここの工程はフレットワイヤー一本一本についてやっていくので、すごく時間がかかります。但し、ここでワイヤーのエッジを丁寧に丸く仕上げておくかどうかで演奏性が全く違います。

冬になると木と金属の膨張率(収縮率)の違いでフレットワイヤーがフレットボードの両端から出てきて、これが微妙に手にふれてザラザラとして違和感になります。これを防ぐためには、打ち込む前にフレットワイヤーの両端の足を2mm位落としておくのが良いです。そのための工具があります。普通のニッパと金属ヤスリでもできますが、これだけで1日かかるので、フレットタングニッパーは必要でしょう。

すべてのフレット処理が終わったら、フレット高さの調整をします。

まず、レベラー(やすり)でフレットの高さを粗く平面にします。

次に、フレットファイルでフレットの山を丸く整えていきます。フレットファイルは、幅が広めの物を使います。スモールサイズ(幅2mm)用はピッタリすぎて動きません。

フレットの高さの均一性を確認します。両隣のフレット合わせて3フレットで高さがそろっているかを見ます。押さえつけて高さが違うとカタカタと音がします。これには小型曲尺を使用しました。真ん中、左端、右端の3カ所で確認します。

高さが揃ったら#400の紙ヤスリ→スチールウール(100均)→キズ取り用コンパウンドで仕上げていきます。コンパウンド前に高さをもう一度確認します。

リフレットの時は比較的簡単ですが、この作業がそのギターの演奏性を決めるといっても過言ではありません。

4.ネック細径化

FG130-3.JPG初期のヤマハはネックがクラッシクギターのように太く、押さえにくいので、細くしようと考えました。この時は、ただ闇雲にネックを削りました。自分の感覚を信じて。
当たり前ですが、各フレットの断面を表すテンプレートを作っておくと良いですね。








5.ネック塗装
ネックを細径化の後にシェラックニス塗装のテストを行いました。

シェラックニスは、カイガラムシの分泌物から精製される樹脂状の物質で、アルコールで溶かして使用します。クラシックギターや音にこだわる製作家の間で使用されています。その理由は、塗膜が薄くでき、音に対する影響を最小限にできることです。

シェラックを購入し、ネックに塗装しましたが、乾燥に非常に長い時間がかかる、乾いた後も厚く塗りすぎたせいか、数か月は塗膜が柔らかく、押し付けるとその痕がつく状態でした。完全に乾燥するには2年くらいかかったと思います。また、経年でクラックも発生しました。今は安定していて問題なく使用できていますが。

なので、シェラックを使うことは個人的にはないと思います。

6.ナット交換&サドルTUSQ化
1973年頃のギターなので、ナットもサドルも古くなっています。また、材質もプラスティックです。

TUSQは、牛骨等の天然材料に比べて、音量が劇的に上がる材料です。サドルに使用するのが効果的です。サドルをTUSQに替えたことにより、音量がアップしました。良い弦楽器は音量が出ることが一番重要です。

以上で、FG-130のリペアの説明は終わりですが、このリペアを行ったことにより、ネックーボディ接続の重要性、塗装のやり方がよくわかりました。修理をするということは、ギターの内部構造や製作方法を理解するにはもってこいですね。
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