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YAMAHA FG-200J 分解⇒リペア その2 [repair]

前回は、ネックの割れを修正すると同時に、ネックリセットを行っています。

これをやっているうちにダブテイル接続の欠点を痛感し、これが、ネックボルトオン化、ボルトオンーボルトオフ構造につながりました。

5.ネック接続構造の改造

FG-130のリペアや所有したギターの経験で、弦の張力(約70Kg)により、経年で弦高が高くなってしまいます。軽度の場合は、サドルを低くして対応します。それでは対応できない場合は、ネックリセットを行います。
 従来のギターは、ほぼすべてダブテイル構造をしています。この構造は、FG-130リペアの時にも書いたように、致命的な欠点を持っています。

まず、単純なアリ継ぎ構造ではなく、ネックを差し込むほどで細くなっているので、その構造を手加工で行うのは大変難しい。また、どうしても隙間ができ、有名なM社でさえ、そこにシムを詰めたりして調整していて、それがネックの元起きの原因になっています。また、膠やタイトボンドを使って接着するので一度接着したら、元起きを治すためには、ネックリセットが必要で、そこに蒸気をあて剥がさなければなりません。これは工数と技術がいる作業です。

ダブテイル構造をどうしたかというと、ボルトオン構造にしました。これはエレキなどにフェンダーが採用した方法です。アコギではテイラーが採用しました。さらにこれが進化してボルトオンーオフ構造になっています。ゴアギター、ボジョア等も採用しています。(ボジョアギターのホームページには、その構造の写真がありません。bourgeois guitar neckのキーワードで検索してください。すぐに見つかるはずです。)

FG-200J 改造後の写真.JPG
この写真は、YAMAHA FG-200J 改造後の写真です。ネックとボディの両方にかなり大胆な改造を加えています。元々ダブテイルだったものを、ボルトオンーオフ構造に改造しました。ネックが割れているのを直し、ネックリセットを行いリペアするのに、それを利用して、ボルトオンーオフ構造にしてしまったということです。

参考にしたのはテイラーの構造です。自分の作るものでネックの問題は起こしたくなかったので、この方法を練習してみました。

切り欠き.JPG
まず、ボディ側フィンガーボードが取り付ける部分を切り欠きます。
部品.JPG
ボディ側に取り付ける部品とフィンガーボード下に接着する部品を作ります。この部分は、鬼目ナットM6x10を使います。ビスはM6x16です。鬼目ナットは、六角レンチで木に埋め込みナット構造を作る部品です。
部品2.JPG
ボディの中で、こんな風に結合されるわけです。

部品取り付け.JPG
ボディにこの部品を取り付けます。

フィンガーボード部品取り付け.JPG
フィンガーボードにも取り付けます。順番が違います。鬼目ナットを仕込んだ後ですね。

ネック.JPG
ネック側も準備します。ネックの割れ止めを行ったビスが見えます。その下はトラスロッドのエンドです。

ネック2.JPG
ネックの窪み部分に埋め木して、ドリルΦ8.5で深さ20mm以上開け、タイトボンドを流し込み、鬼目ナットM6x16を2か所ねじ込みます。

ボディ穴あけ.JPG
ボディに穴を開けます。位置は現物合わせです。鉛筆の矢印は当たる部分で、削る方向を示しています。

ボディ側.JPG
ボディ側から見たビスで取り付け後の写真です。

左右位置合わせ.JPG
1弦と6弦を張り、ネックの取り付け角度を見ています。左右とサドル高さ(これはネックリセット済み)を合わせます。

これで完成です。

このボルトオンーオフ構造は、一度取り付けが決まるとネジで固定できるので、弦の張力による経年変化がかなり抑えられます。かなりというのは、ダブテイル構造からボルトオンーオフ構造で構造的にはなくなるのですが、ヒールブロックが杉材でできているため弱く、素材の強度不足は残ります。

整理すると、
弦の張力による経年の弦高が高くなる原因は、元起きとネックの順ぞり(変形)にある。(ここでは触れませんが、トップの凸変形(ブリッジ根元の)もあります。)

元起きの原因は、ネック取り付け構造とヒール部材の変形で、ボルトオンーオフ構造により構造的なものはなくすことができる。

ここの部分は、今後のオリジナルギター製作の部分でも書きます。経年による弦高対応は、安定的な演奏状態を実現する最重要ポイントです。


6.フレット打ち直し
43080.jpg
フレットは、フレット No.43080Eを使いました。Jescar EVO“Ni-Free” Goldです。通常のシルバー品よりやや硬いです。

端切り.JPG
まず、両端の足を切り、やすりで磨きます。金属と木の膨張率の違いにより、冬にフィンガーボードの両脇からフレットの足が出て引っかかるのを防ぎます。

14F以降.JPG
14フレットから20フレットまでを打ち込みます。リペアで若干緩いこともあり、タイトボンドを塗って打ち込みました。

1~13フレット.JPG
1から13フレットを打ち込みます。プラスチックハンマーを使用しています。ネックレストを台にしています。このネックレストは今売っていないようです。別のものを購入して下さい。自分で作ることもできます。

斜め.JPG
フレットの端を斜めに揃えます。自作の斜めのレベラーを使います。市販品は、角度45°が多いと思いますが、フレット幅を稼げるように60°にしました。

フレットファイル.JPG
マスキングテープをまずネック両脇の長手方向に貼ります。その後でフレット間をカバーします。こうすることで剥がすときに一気に剥がせます。

その後で、フレットレベラーでまずトップを平らにします。その後、フレットファイルで丸く形を整えます。ここはFG-130のリペアの時にも言いましたが、幅の広い物を使います。狭いものはフレット端とファイルが引っかかりうまく動きません。

その後に、曲尺を使い、前後のフレット3つの高さを見るために当ててみます。高いところは、カタカタと音がするので、マジックでチェックします。そこをもう一度フレットファイルで削って高さを揃えます。

平らになった.JPG
フレットファイルで高さがそろったら、#400→#800→コンパウンドで磨き完成です。

#400 スチールウール.JPG
コンパウンド.JPG
完成!

7.ネック塗装
下地整える.JPG
#120で細径化を仕上げているので、#400→#1000で表面を整える。
パミス.JPG
シェラックニスを下塗り後、パミスをアルコールで溶いて塗りこむがうまくいかないため、一度#1000で剥ぎ取り、もう一度、パミスを塗りこむが70%程度しか入り込まないので、ウェスで表面をふき取り次の段階に進む。
一日おきに、シェラックニスを塗る。これを6日間繰り返す。
完全でない.JPG
この後も、うまく塗れない場所があり、#1000で剥がした後、一日おきに、シェラックニスを塗る。これを6日間繰り返す。この後、#1000で磨き、コンパウンドで磨き完成。

木管をパミスで埋めることに挑戦したが、完全には埋まらない。その後、何回かシェラック塗装を繰り返し何とか木管を埋めました。完成後、コンパウンドで磨いてから4日間ぐらいは、表面が手につく感じがある。その後、布にネックを押し付けているとその痕がつくので、シェラックニスはあきらめます。

8.ナット・サドル作成(最終調整)
最終調整は、まずナットから行います。
鉛筆を半分に.JPG
鉛筆を真ん中から割ったものを作り、1フレット、2フレットに合わせて、ナットに高さを書きます。

粗削り.JPG
その線が残るくらいまで全体を削ります。

弦間隔を決める.JPG
弦間隔を決めます。String Spacing Ruleは、間隔が徐々に狭くなるようにピッチが決められていて、合わせるだけで最適な間隔が決まる便利な工具です。

工具類.JPG
間隔を記したナットにまずは、先の細いやすりでマークを入れます。その後、各弦にあった太さのやすりで高さを整えます。ここに載せたナット溝切用ファイルセットはネット上で見当たりません。今は、板状のやすりで厚みを選ぶようになっているようです。

ナット完成.JPG
ナット高さの最終調整は、2フレットと3フレットの間を押さえて、1フレットに弦が触れる直前でやめます。String Lifterがあると、弦を張っていても横に持ち上げることができるので、便利です。その後、全体を紙やすりで整えます。 


サドル製作に移ります。

厚みをだす.JPG
厚みを出して、

幅と高さ.JPG
幅を揃え、ブリッジからの高さ6mmのものをまず作ります。材料は、TUSQを使用しています。

サドル完成.JPG
高さ調整は、12フレットと弦の隙間を1弦で2mm、6弦で2.3mmにするように調整します。12フレット上の隙間を測り、目標との差の2倍をサドル底面から削ります。これで完成です。

例えば、3か月後に測ると1弦で2.3mm 6弦で2.7mmありました。これはネックの順ぞりの影響です。よって、1弦側を(2.3-2.0)x2=0.6mm 6弦側を(2.7-2.3)x2=0.8mm さらに削りました。


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