SSブログ

YAMAHA FG-130 分解⇒リペア [repair]

FG130-0.jpg1台目のギター製作準備と並行して、内部構造を理解するために、1973年頃に製造されたYAMAHA FG-130の中古品をヤフオクで購入しました。1,000円位だったと記憶してます。始めたときは分解することしか考えていませんでしたが、修理して今も演奏できる状態にあります。



<リペア内容>
1.ネックリセット
2.ペグチューナー交換
3.フレット打ち直し
4.ネック細径化
5.ネック塗装
6.ナット交換&サドルTUSQ化




1.ネックリセット
まずやったことは、ネックの元起きがひどくネック元起き(12フレットで5㎜以上)、これを修正しました。ネットでFG-130の所有者のブログ等を調べるとかなりの数、ネックの元起きらしきものが起こってます。

弦高が高くなる原因は、弦の張力(70kgといわれている)により
①ネックの順ぞり
②ネックとボディの接合部の経年変化と構造的問題
③ボディのブリッジ部の膨らみ(ゆがみ含む)
が起こることです。
①は調整用のトラスロッドが埋め込まれており、通常は、これで調整できます。
②はマーティンを含むほぼすべてのアコギに使用されているネック接合ブロックのダブテイル構造とその加工精度、木自体の変形で、ネックを外し、取り付け角度を修正する必要があります。
③は②と同じ対応をするしかありません。

自分でギター製作をするにあたり、まず考えたのがこの問題の対応方法でした。
結論をいうと、
①の対策としてネックにはトラスロッドの両端にカーボンロッドを組み込む構造に
②の対策としてボルトオン構造+ネックブロック取り付け強化
を行っています。この詳細は「オリジナルギター」で述べます。



FG130-1.jpg本来ならば、15フレットを抜いてそこに穴を開け、そこから蒸気を入れて接着剤(膠)を溶かし、ネックごと外すのが普通のやり方ですが、蒸気を出す器具を持っていなかったので、アイロンで温めて強引にフィンガーボードを剥がしました(左上)。

このネックとボディを接続する構造をダブテイル(右上と左下)というのですが、この構造自体に難があります。このギターは間違いなく機械加工されていると思うのですが、それでも嵌合がNGでネックを前後に力をかけるとヒール側が3mmくらい開いてしまいます(右下)。斜めのほぞが、ヒールに向かって細くなっていくわけですから、ネックとボディ側を合わせるのは至難の技です。手加工でこれをやるのは不可能でしょう。

さて

FG130-2.jpgこの弦高対策は、ネックのヒール部分を削ることによりボディとネックの角度をつけ、サドル部分の高さを取ることができるように加工します。こうすると相対的に弦高が低くなります。ボディ厚みが100mmで仮に0.5°の角度をつけると100mm x sin(0.5°)≒0.9mmの隙間が取れます。ボディ端からサドルまではおよそ300mmですから、3倍効いてきて、サドル高さで2.7mm程度の高さを確保できます。
 実際にはこの部分の隙間を2mmにしたので、サドル高さで6mm確保したことになります。

さらに、これで終わりではなくて、ネックとボディの取り付け角度を変えた(削り量で2mm)わけですから、トップ表面でフィンガーボード先端とボディの隙間が同じように約2mmできてしまいます。今回はボディにそのまま接着しました。14フレット(ボディ端)が少し膨らみますが、この分はフレットボードの厚さを削ることで対応しました。かなり強引なやり方です。

2.ペグチューナー交換
 経年劣化でさび付いていたチューナーを交換しました。穴径10mmでしたのでこれに合うGOTOH製 SG301-20-L3+R3-Chrome を取り付けました。オリジナルのチューナーは取付穴を埋めてから、新しい位置に開けます。
チューナーは、waverly schaller grover 等海外メーカーがいろいろとありますが、GOTOHが品質的には一番と思います。海外、日本を問わずビルダーの多くが、510シリーズを使用しています。

3.フレット打ち直し
フレット打ちの技術習得を兼ねて、リフレットを行いました。(フィンガーボードポジションマークの変更も行いましたが説明を割愛)

FG130-5.JPGまずは、古いフレットを抜きます。これには写真にあるようにフレットプラー(抜きの専用工具)でフレットを抜きます。ここれ注意しなければならないのは、古いフレットボードは脆くなっているということです。レモンオイルをぬり、はんだごてでフレットワイヤーを十分に熱してから引き抜くことです。力任せに引き抜くと間違いなく、溝のふちが欠けます。







FG130-4.pngフレットワイヤーは、一般的なスモールタイプ(フレットボード上で高さ1.0x幅2.0)は、国内では三晃製作所、タイプはSBB-23(0.6mm),SBB-217(0.5mm)です。販売は大和マークでしょう。
 この2つの違いは、フレットボード溝に入る足の幅です。フレットボードはエボニー(黒檀)やローズウッドのような硬い木なので、この0.1mmの差は大きいです。
リフレット時で既にフレットが打たれた後であれば、溝が既に広がっているので、0.6mmです。
新しく溝を切ったならば、0.5mmでしょう。もちろん使用する鋸の厚さによります。
他のメーカーではJim Dunlop、Jescarなどがあります。

FG130-6.JPGフレット打ちは、まずワイヤーを1~20フレットにあった長さにカットします。その時には、フレットがバラバラにならないための治具を作ります。これに順番にフレットを用意します。






FG130-7.JPGまず、フレットボードの曲率より少し強めにRをつけておきます。フレット浮きを押さえるために重要なことです。足つきのフレットにRをつけるわけですから、このように加工したラジオペンチも必要になります。このラジオペンチは、先の曲がったものにフレット足を挟めるように加工されています。最近はフレットベンディングプライヤーもあります。

フレットを溝に打ち込むためには、金属製のハンマーはフレットを傷つけるのでプラスチックハンマーが必要です。

まずは、端から打ち込みます。端が打ち込み終えたら、逆の端を打ち込み、最後に真ん中を打ち込みます。フレットボードにハンマーヘッドが当たると痕が付くので、あまりハンマーを振り上げずに10mmの高さに上げて打ち込みます。叩くというよりも押し込む感じで打ちます。

今回はフレットボードをネックから剥がしてしまったので、打ちやすいですが通常はネックに付いた状態でフレットを打ち込みます。短い1フレットから順に打っていったほうが慣れてくるのでいいと思います。

FG130-9.JPG全部打ち終わったら、フレットカッターででっぱりを切り取ります。フレットカッターには、図のように2種類あり、左のほうが使いやすいです。先端が平らなので後のヤスリ掛けが楽になります。






FG130-8.JPGFG130-10.JPGさらにフレットレベラー(に取っ手を付けました)ででっぱりを平らにします。

次に端をフレットボードとの角度60°でヤスる治具(これもフレットレベラーに取っ手を付けた自作です。市販もされています。)で揃えます。

さらにエッジを丸くしていきます。ここの工程はフレットワイヤー一本一本についてやっていくので、すごく時間がかかります。但し、ここでワイヤーのエッジを丁寧に丸く仕上げておくかどうかで演奏性が全く違います。

冬になると木と金属の膨張率(収縮率)の違いでフレットワイヤーがフレットボードの両端から出てきて、これが微妙に手にふれてザラザラとして違和感になります。これを防ぐためには、打ち込む前にフレットワイヤーの両端の足を2mm位落としておくのが良いです。そのための工具があります。普通のニッパと金属ヤスリでもできますが、これだけで1日かかるので、フレットタングニッパーは必要でしょう。

すべてのフレット処理が終わったら、フレット高さの調整をします。

まず、レベラー(やすり)でフレットの高さを粗く平面にします。

次に、フレットファイルでフレットの山を丸く整えていきます。フレットファイルは、幅が広めの物を使います。スモールサイズ(幅2mm)用はピッタリすぎて動きません。

フレットの高さの均一性を確認します。両隣のフレット合わせて3フレットで高さがそろっているかを見ます。押さえつけて高さが違うとカタカタと音がします。これには小型曲尺を使用しました。真ん中、左端、右端の3カ所で確認します。

高さが揃ったら#400の紙ヤスリ→スチールウール(100均)→キズ取り用コンパウンドで仕上げていきます。コンパウンド前に高さをもう一度確認します。

リフレットの時は比較的簡単ですが、この作業がそのギターの演奏性を決めるといっても過言ではありません。

4.ネック細径化

FG130-3.JPG初期のヤマハはネックがクラッシクギターのように太く、押さえにくいので、細くしようと考えました。この時は、ただ闇雲にネックを削りました。自分の感覚を信じて。
当たり前ですが、各フレットの断面を表すテンプレートを作っておくと良いですね。








5.ネック塗装
ネックを細径化の後にシェラックニス塗装のテストを行いました。

シェラックニスは、カイガラムシの分泌物から精製される樹脂状の物質で、アルコールで溶かして使用します。クラシックギターや音にこだわる製作家の間で使用されています。その理由は、塗膜が薄くでき、音に対する影響を最小限にできることです。

シェラックを購入し、ネックに塗装しましたが、乾燥に非常に長い時間がかかる、乾いた後も厚く塗りすぎたせいか、数か月は塗膜が柔らかく、押し付けるとその痕がつく状態でした。完全に乾燥するには2年くらいかかったと思います。また、経年でクラックも発生しました。今は安定していて問題なく使用できていますが。

なので、シェラックを使うことは個人的にはないと思います。

6.ナット交換&サドルTUSQ化
1973年頃のギターなので、ナットもサドルも古くなっています。また、材質もプラスティックです。

TUSQは、牛骨等の天然材料に比べて、音量が劇的に上がる材料です。サドルに使用するのが効果的です。サドルをTUSQに替えたことにより、音量がアップしました。良い弦楽器は音量が出ることが一番重要です。

以上で、FG-130のリペアの説明は終わりですが、このリペアを行ったことにより、ネックーボディ接続の重要性、塗装のやり方がよくわかりました。修理をするということは、ギターの内部構造や製作方法を理解するにはもってこいですね。
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。