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純正律と平均律2 [theories]

ハーモニクスを使ったチューニング方法の中で、「6弦開放(E)は平均律の Eよりも 2セント高く」「2弦開放(B)は 13.7セント低い」と書きましたが、純正律について説明不足なところがありました。


純正律は、ピタゴラスが発見した美しく響きあう音の組み合わせですが、元の音に戻そうとしても、23.46セント(ピタゴラスのコンマといわれる)ズレてしまいます。

 これをいろいろな時代の音楽理論家たちが、各音の間隔を伸ばしたり圧縮したりして、試しました。最終的に小さい整数の比率として、スケールの1、4、5番目に構築されたトライアド(CメジャーのキーではCEG、FAC、GBD)が、以下の表のように周波数比4:5:6を持つスケールにまとまったそうです。ピタゴラス音階から、3度、6度、7度が小さい整数比に変わっています。 

音階.jpg

 

この単純化された純正律と平均律を比べると13.7と2という数字が出てくるわけです。

 

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チューニング 1 [theories]

今は電子チューナーを使って開放弦をあわせるのが普通だと思いますが、私がギターを始めた頃は、音叉(A=440Hz)で5弦を合わせて、それを基準にユニゾンで合わせるやりかたでした。

6弦5フレット(A)と5弦開放(A)

5弦5フレット(D)と4弦開放(D)

4弦5フレット(G)と3弦開放(G)

3弦4フレット(B)と2弦開放(B)

2弦5フレット(E)と1弦開放(E)

を合わせて終了です。この方法自体には問題ありませんが、1回1回のチューニング精度が甘いとズレがどんどんと積み重なっていくことになります。


次に行った方法は、ハーモニクスを使った方法です。

音叉(A=440Hz)で5弦を合わせて、それを基準に

①6弦5フレットと5弦7フレットのハーモニクス

②5弦5フレットと4弦7フレットのハーモニクス

③4弦5フレットと3弦7フレットのハーモニクス

④3弦4フレットと2弦5フレットのハーモニクス

⑤2弦5フレットと1弦7フレットのハーモニクス

結論から言うとこれはNGです。ハーモニクスを鳴らすのが正しいように思い込み、これをやっていました。今にして思えば、純正律と平均律がわかっていませんでした。ハーモニクスは純正律でフレットは平均律でできているので両方を合わせたこの方法は機能しません。


この辺りのことが分からない人は、しっかり純正律と平均律の違いを学ぶか、この方法をとらずに電子チューナーを使ってください。


では、何がどうマズいかを考えると、

①5弦 7 フレットの倍音は、Aの5度、つまりE になります。これは純正律です。これ(純正律5 度)に6弦5フレットの倍音(E)を合わせると、平均律5度より純正律5度は2セント高いので、6弦開放(E)は平均律の Eよりも 2セント高くなります。②③⑤は反対に2セント低くなります。



DSC_1469.JPG
最もずれるのは、④2弦をチューニングしようとする時です。

3弦4フレットの倍音は、Gの3 度、つまり B になります。これは純正律です。純正律の3度は平均律よりも13.7セント低いので、2弦5フレットの倍音(B)を G の純正律3 度にチューニングすると、2弦開放(B)は 13.7セント低いまま(上の写真)になります。


平均律でできているギター(フレット)のチューニングにはオクターブ以外の倍音は使えません。しかし、「3弦4フレット(B)と2弦開放(B)」をユニゾンで合わせれば、だいたい合わせることはできます。正確な微調整ができないということです。


参考ページ:Tuning The Guitar 

 

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トラスロッドによる音質の変化2 @オリジナルギター1 [theories]

前回の続きです。ネットで色々探ってみると、

Modeling and Measurement of Folk Guitar: Truss Rod and Strings in Numerical Analysis of Tone

という論文に行き着きました。結論を言うと、FEMの数値解析でトラスロッドも考慮したということです。その結果、トラスロッドの高周波での影響はあきらかだが、その理由ははっきりとしていません。


論文中、「この論文は、機器を固体の振動体としてだけでなく、複数の部品からなるデバイスとしても扱うモデルを開発することで貢献しました。 入手可能で比較的簡単であるため、フォークギターが研究に選ばれました。 この研究が他の研究と異なるのは、弦とトラスロッドのアクティブな動作をモデルに含めていることです。 この内容は、ギターのセットアップがサウンドにどれほど大きな影響を与えるかという観察に基づいています。 弦のアクション、弦のゲージと張力、トラスロッドのプレストレス(ネックの曲率)などの調整可能なパラメーターがギタートーンに決定的な影響を与える可能性があることは、ほとんどのギタリストにとって周知の事実です。」と述べているので、何らかの影響があるのは確かでしょう。


これについては、さらにさらに調査が必要です。


P.S. トラスロッドの共振対策という副産物を見つけました。


トラスロッドの共振対策

トラスロッドがネック内部で共振するのを防ぐため、トラスロッドには防振チューブを被せてあることが多いのですが、稀にネックの中でトラスロッドに遊びがあるために異音や音の詰まりなどの症状が出ることがあります。その場合は、ネックの反り状態が良好であっても、トラスロッドナットを少し締めこむと解決することが多いです。(ネック反りに影響がない範囲で)どうしてもトラスロッドの共振が消えず、そのネックをあきらめきれない場合、指板上面のポジションマークを外し、そこからトラスロッドに向けて穴を開けて接着剤を注入という最終手段もあります。


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トラスロッドによる音質の変化1 @オリジナルギター1 [theories]

現在、オリジナルギター1で過去にあった曲の演奏を鋭意練習中ですが、その最中にネックの弦高が上がってきたので、調整でトラスロッドを60°(ネジの回転角は270°最大)締めてみました。


翌日、全体の音量が上がり、特に高音のサスティーンが伸びました。


私は、トラスロッドをガタツキがなくちょうど力が加わらない所で止めています。今回は少し弦高が上がったため、いつもより締めてみました。


トラスロッドを締めることによってこれほど音質が変わったのは初めてだったので調べてみました。


・ロッドを回しネックにテンションを掛けると、トーンがややブライトになりサステインも伸びる。これはロッドがネック内部にテンションを与え、ネックが堅くなることでサウンドに影響を与える。


・私の経験でも、トラスロッドの調整によってネックに少し圧力がかかる(リリーフが弱くなる)と、良い方向に効果がある。


経験的にはいろいろな人が書いていますが、その原理が分かりません。


これについては、さらに調査が必要です。

 

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テンション感 [theories]

オリジナルギターを3台作りましたが、スケールは632.5mmで弦はCustom lightなので、弦の張力は同じですが、張りが強かったり、弱かったり感じることがあります。


「テンション感≒弾きやすさ」ともいえると思います。


これには、弦高が大きく影響します。


テンションの変化を指先が感じてしまうことを、テンション”感”というとすると

左手で感じる感触と右手で感じる感触がありますが、テンション”感”に影響することは何でしょうか?


1.弦高

①0フレットの高さ(ナット高さ) 

弦高調整をするのに、まずはナットの高さから調整するのが鉄則です。この高さが高すぎると、この後の調整をどう頑張っても弾きにくいことは変わりません。

②12フレットの高さ(サドル高さ)

サドルを低くすると弦が曲げられている角度が浅く(弦長が短く)なり、張りは弱くなりますから、音色はやわらかくなり、サドルが高いとギターは鳴るといわれています。


2.フレットの高さ

指先が弦に触れてからフィンガーボードに押さえつけるまでの距離が短いと押さえつける(弦を引っ張る)力が弱いので、テンション感が柔らかくなります。


3.フレットの幅方向の高さ

フレットボード表面のRとフレット高さ弦高がばらついているとテンション感というより、弾き難く感じます。


4.ネックの順反り

強ければテンション感はあがります。まっすぐの方がテンションは軽く感じます。


5.弦を弾く位置

サドルに近いとテンション感が高く感じられますが、これは弦の振幅が小さくなるからで、当たり前です。フィンガーピッキングでは、弦の振幅が小さいところが弾きやすく感じます。


6.弦の古さ

古くなるとテンション感が上がるといわれていますが、どうなんでしょう。新しい弦が少し馴染んできたときが最も弾きやすい(テンション感が柔らかく)と感じます。


7.弦の種類

コーティング弦でいえば、ダッダリオは柔らかくて、エリクサーは硬いといった評価がありますが、そこまで感じたことはありません。


以上のようなことが相まって弾きやすさにつながるのだと思います。同じギターでもテンション感は感覚的なものです。難しい曲を弾くと少しの違いが気になってきます。


参考ページ:

https://www.auranet.jp/salon/yomimono/ono_index9/

https://www.auranet.jp/salon/yomimono/ono_index7/

https://www.newhill.co/post/2006-12-21


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モノポール周波数の設定(オリジナルギター3) [theories]

ここまでウルフトーンを避けるために、ヘルムホルツ周波数の調整、トップモノポールの調整を行ってきました。


Gore&Giletの本で中型ギター(oooタイプ)で推奨される組み合わせは、

90Hz 170Hz

95Hz 180Hz

(100Hz 190Hz)

です。


ヘルムホルツとトップモノポールの組み合わせは、

①101Hz 178Hz ブリッジピン11g トルナボス8mmを追加

②105Hz 185Hz ブリッジピン3g


②のトップモノポール周波数の185Hzは、6弦2フレット(F#:92.5Hz)の第2高調波で、そもそもNGでした。また、よく使用する6弦3フレット(G:98Hz)も多少影響を受けるので、180Hz以下にする方が良いという結果でした。


ヘルムホルツ周波数もなるべく低くした方が低音が安定するので、①がベターでした。


ヘルムホルツを下げるには、トルナボスしか選択肢はないようです。木で作り直すかは考えます(上げるにはサウンドポートを使う手があります)。

トップモノポールは、ブリッジピンの重さで逃げるか、ブレースを削るかはもう少し使用してみて考えます。


最終的に、最初に決めた周波数に落ち着いてしまったので、あまり面白みのない結果でした。


参考までに、今回使用したブリッジピンの重さ(6本の合計)は、

・ABS樹脂、ローズウッドA 3g

・ローズウッドB 4g

・真鍮 26g

です。今回は使用しませんでしたが、牛骨7g、エボニー等は5〜10g位ではないかと思います。

 

材質は音質に関係ありません。

 

 

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ウルフトーン6 [theories]

トップモノポールを高くする調整

ブリッジピンを重くする(2本を真鍮(4.3g/本)にかえる)ことで、ウルフトーンを避けて178Hzになりました。しかしこれでは、トップモノポールモビリティが下がるため、ブリッジピンを軽くすることを試してみます。

 

現在の真鍮2本+ローズウッド4本の重さは11gで、最軽量のブリッジピンは3gなのでこれに替えてみます。

トップモノポールが178Hzが185Hzになりました。

この状態でトルナボスを外すと、ヘルムホルツ周波数101 Hzが105Hzになりました。

 

ここで、ヘルムホルツとトップモノポールの組み合わせが2種類できます。

①101Hz 178Hz ブリッジピン11g トルナボス(深さ8mm)を追加

②105Hz 185Hz ブリッジピン3g

 

音質からいずれかの設定を選ぼうと思います。

 

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ウルフトーン5 [theories]

トルナボスをつけることにより、ヘルムホルツ周波数を下げることができましたが、もう少しスマートな方法がないかを確認します。スマートという意味は、ギターに本来必要ではない部品を加えないということです。要は外見上何も変わっていない方法を選ぶことができるかということです。



この方法を試してみます。


 バックに重りをつけ、間接的にヘルムホルツ周波数を下げます。この方法が何故可能なのかは、ボディの共振周波数が各々がどう影響しているかを理解する必要があります。


 このためには、2DOFシステムの解析に加えて、サイド、バックの振動を加えた4DOFシステムを理解する必要がありますが、それは別の機会にします。

 エアモードとのカップリングに対してバックが与える影響を利用することができるかを確かめる必要があります。もしバックに重さを追加してバックモノポール周波数を下げることで、「エア」モードの周波数を下げることができるならば、バックブレースを削ってバックモノポール周波数を下げることと同じ効果を出すことができ、これはスマートな方法です。

 モノポール周波数は f=(1/2π)√K/m で決まります。Kは剛性でブレースを削ることはKが下がり周波数も下がります。バックに重さmを追加することでも周波数は下がります。この2つは周波数を下げることに同じ効果があります。

では、実際にバックに重さを加えることで効果があるかを調べていきます。

バックに重り.JPG


ポスター用シリコン接着剤で硬貨をバックロワーボウト中心に固定してヘルムホルツ周波数を含むモノポール周波数の変化を見ました。


    0g 7g 12g 17g
T(1.1)1 Helmholtz 101 100 100  99
T(1,1)2 top-monopole 178 177 175 173
T(1,1)3 back-monopole 222 214 206 201

バックモノポールが21Hz下がったのに対して、ヘルムホルツは2Hz程度しか下がらずほとんど効果は得られず、バックモノポール周波数を下げることで、「エア」モードの周波数を下げることはできません。また、バックがトップモノポール周波数に近くなったせいか、全体の音色(サスティーンがなくなった)変わりました。共振周波数の変更によって失われるトーンとのバランスもよく見ておく必要があります。


 

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ウルフトーン4 [theories]

Org.#3のヘルムホルツ周波数:104Hz トップモノポール周波数:184Hzの対応をしていきます。


 繰り返しますが、ウルフトーンとは弦の基音とギター自身の共振周波数が一致した時に発生する音で、弦の基音と位相が逆になるため、お互いが打ち消しあってボッというサスティーンがまったくない音になってしまうことをいいます。この対応策は、共振周波数をフレット間の中央の周波数に入れて干渉をなくすことです。


 今、6弦4フレット(G#:103.8Hz)ですからヘルムホルツと完全に被っていて、ボッという音しか出ていません。このヘルムホルツ共振周波数を6弦3フレット(G:98Hz)の中央(101Hz)にシフトさせることで被りをなくします。


トルナボスをサウンドホールに嵌める.JPG


1.ヘルムホルツ周波数を変更できる可逆的な方法


最も簡単な方法はトルナボスをサウンドホールに嵌めて周波数を下げます。トルナボスをつけることは、スマートな方法ではないので、最終手段にはしたくありませんが、実際にどんな音色になるかを確認するために行います。


 オリジナルギター3の製作中にもこれで周波数調整した(周波数は深さ0.5Hz/mmで下がる)ことがありました。この時は深いトルナボスを付けたため、ヘルムホルツ周波数は101→93Hzに下がりましたが、音圧も相対的に下がり、、高域(500Hz以上)の音圧も下がりました。トルナボスは深すぎると音の放射も下げてしまうので、最終手段としては使いたくありません。


 では、具体的に進めていきます。改めてヘルムホルツ周波数を測定すると104Hz。0.4mmの厚紙でトルナボスを作りサウンドホールの内側に取り付けます。最初は深さ12mmで作りましたが、ヘルムホルツが98Hzになり下がりすぎて、6弦3フレットG(98Hz)と被ってしまったので、深さを徐々に下げていって、8mmでヘルムホルツが101Hzになり、G(98Hz)とG#(104Hz)の詰まりがほぼなくなるようになりました。この調整はかなりシビアで、どちらかに寄りすぎるとその音が詰まるようになります。ちょうど中心(101Hz)になるようにすることが重要です。


ブリッジピンの重さを変える.JPG


2.トップモノポール周波数を変更できる可逆的な方法


ブリッジピンの重さを変えることが最も簡単な方法です。重くなるので、周波数は0.7Hz/g下がります。トップモノポール周波数は183Hzからブリッジピン2本を真鍮(4.3g/本)にかえて178Hzになりました。ブリッジピンを重くすることは、モノポールモビリティを落とすことになるので、最終的には別の方法で対応したいと考えています。


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ウルフトーン3 [theories]

オリジナルギター1を見ていきます。


Org.#1のヘルムホルツ周波数は93Hz、トップモノポール周波数は173Hzでした。しかし、オリジナルギター1を演奏していても6弦2フレット(F#:92.5Hz)の詰まりはあまり気になりません。 改めて、ヘルムホルツ周波数を確認すると、ヘルムホルツ周波数は91.8Hzと少し低くなっていますが、これが理由とは考えられません。


6弦2フレット(F#:92.5Hz)のサスティーンを周波数分析してみると、弦を弾いてからF#自身は比較的早く(4秒)落ちますが、第3高調波(277.5Hz)は6秒程度残っており、これがサスティーンを支えているため、詰まった感じがないと思われます。

 比較のために、6弦3フレット(G:98Hz)を確認してみると、G自身も6秒サスティーンがあり、基音自身がサスティーンを支えていると考えられます。第3高調波もほぼ同じ程度残っています。

F#-3秒後.jpg

上がF#を弾いた時、下がGを弾いた時の3秒後の写真です。基音が赤、第3高調波が白です。




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