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Simple model for low-frequency guitar function まとめ [theories]

Simple model for low-frequency guitar function まとめ

Gore+Giletの本の参考文献に載っていた論文の基本的な技術解説を6回にわたって載せてきました。内容をもう一度、まとめると、

1.ギターの共振周波数の最も低い周波数は結合していて、その二乗和が非結合システムの共振周波数(ヘルムホルツ周波数とトップモノポール周波数)の二乗和に等しい。より平たく言えば、非結合のヘルムホルツ周波数(fh)とトッププレート基本共振周波数(fp)は、2つが結合するとお互いに反発し、fhはより低くf-に、fpはより高くf+に追いやられます。これを式で表すと以下のようになります。

2.提案されたギター機能の低周波簡易モデルを、2マス3スプリングシステム(2DOF)と関連付けて振動工学的にとらえ、理解した。

3.最初の2 つの共振周波数の測定値から導き出すことで、低周波領域のギター機能を定量的に記述できる(実験結果と定量的に一致する)ことを示した。ギターの低域成分(〜500Hz)が特に重要で、材料を含めたボディの構造をいかにうまく作るかで良いギターかどうかが分かれる。

 この研究論文で扱われている最初の2つの共振周波数 f- とf+(結合されたホルムヘルツ周波数とトップモノポール周波数)は、出力の40%を占める。

 この2つの共振周波数の結合を解析することにより、ギターの振る舞いが物理学の助けを借りて、定量化された。

各章のトピックス

Ⅰ章

・トッププレートに質量負荷することによって共振周波数が低下する。

・トッププレート共振周波数を下げると両方の共振がシフトする。

・ヘルムホルツ共鳴周波数は、サウンドホールに合う直径で高さ3〜4cmの円筒形に作られた「カラー」を配置することで低下する。

・この低下により、トッププレート移動度の反共振周波数が変わるので、これはヘルムホルツ共鳴を表している。

・弦からのトッププレート振動により、ボディキャビティの体積が周期的にわずかに変化し、空気が周期的に圧縮され、圧力変動により、サウンドホールの(目に見えない)エアピストンが励起され、トッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間に結合が確立する。

・サウンドホールが塞がれると、ヘルムホルツ共鳴は消え、純粋な非結合トッププレート共鳴だけが残る(バックが完全な剛体の場合)。

・結合システムの共振周波数の二乗和が非結合システムの共振周波数の二乗和に等しい。(平たく言えば、非結合のヘルムホルツ周波数(fh)とトッププレート基本共振周波数(fp)は、2つが結合するとお互いに反発し、fhはf-に、fpはf+に追いやられる。)

Ⅱ章

・バックプレートは剛性が高く、反射エンクロージャーとして機能している。

・ボディ容積の変化で生じるキャビティ圧力の変化が他方の発振器に力を生じさせることで、トッププレート共振とヘルムホルツ共鳴の間の結合を説明できる。

・結合の結果、f-はfhより小さく、f+はfpより大きくなります。物理的には、f-で、エアピストンがトッププレートの裏側と同相で移動し、f+で逆位相で移動する。

・ギターからの放射音圧の遠方界を計算するために単純な音源からの音響放射で近似する。

・プレート速度(移動度)と音圧の両方が、f-とf+で2つの共振を示していて、トッププレート移動度については、最初の2つの共振の間に反共振がある。これは図1の実験結果と一致している。

・トッププレートとエアピストンは、ヘルムホルツ共鳴より下では逆位相になる。

・この共鳴より上では、同じ位相である。

・周波数範囲全体にわたって、音圧に対する2つの発振器の寄与率は、トッププレートがとして、サウンドホールが として変化し、サウンドホールは低周波で大きな貢献をし、トッププレートは高周波で支配的である。

ギターの応答を決定するすべてのパラメーターは、実験データから得られる。

Ⅲ章

・ヘルムホルツ周波数 fhで式(8)を正規化したた変数:結合周波数比 fph/fh 

で評価できる。

・すべての楽器の周波数特性で f-、fh、および f+ が観測される。

・合計 83 セットのデータ ポイントから検討した楽器の結合周波数比 fph’が約 0.7 から 0.9 まで変化する。

カップリングはトッププレートの周波数が高くなるにつれて増加する。

2 つの発振器間の結合が強いと、結果として得られる共振周波数が元の周波数から大きくずれている。

・4本のクラシックギターで測定したトッププレート等価質量の値は60〜110g 

・楽器の音圧は、A/mp に正比例する。

・結合周波数 fph は、周波数 fa と同様に、比率 A^2/mp のサイズとともに増加する。よって、優れた楽器は大きなカップリングによって特徴付けられる。

・高く評価されている楽器のヘルムホルツ周波数は 92〜102 Hz の範囲だった。

・周波数に対するトッププレート移動度と音圧レベルの変化に関する実験データは、理論上の点とほぼ一致している(移動度と音圧レベル (SPL) の絶対値が計算されている)。

・調査したすべてのギターで、約10回の実験結果と理論上の予測との一致が得られた。

・理論と実験を比較するのに最適な周波数領域は、fh と f+ の間で、それ以外ではずれが生じる。

・トッププレート移動度の位相は、理論で予測されるように、f- と fh の間で 180° 変化する。この変化は、トッププレートとヘルムホルツ共鳴の間の結合の存在を示す最も直接的な実験的証拠である。

・品質係数 Q の決定は、音圧スペクトルの共振の 3 dB 限界を測定することによって表せられるが、ここでは最初の 2 つの共振間の最小値に対するピーク音圧レベルの測定に基づく方法を使用した。

・9 本のギターが評価され、より良いギターは、Q-の値が最も高かった。

・f+ と f- での減衰係数は、式 (10) によると、fp と fa での減衰係数の線形結合で表せる。

・観測された損失の約 3 分の 1 から 4 分の 1 が放射損失に起因する可能性がある。

・共鳴間の最小音圧レベルは、等価ピストン面積と等価質量の比の実験数値を評価するために使用できる[式(14)を参照]。この比率は、楽器からの低周波としての出力に正比例する。

原理的には薄いトッププレートを使用することで高いレシオを得ることができるが、これは高音域のレスポンスを決定するより高いトッププレートモードの周波数を低下させるので、A/mp 比の 8.4 から 11.2 は、おそらく実用的な妥協点と見なすことができる。

Ⅳ章

・単純なモデルが、トッププレート移動度と 音圧(SPL) の低周波特性を予測できた。そして、ギターの最初の 2 つの共振(f-とf+)は、相互作用するヘルムホルツ共鳴(fh)とトッププレート(fp)との結果である。

・この論文のモデルは、ボトム(バック)は完全な反射体と仮定しているが、普通はバックは振動するので、3 つの結合発振器のシステムを検討する必要がある。振動するボトム(バック)プレートは、f-とf+を下げ、f+を2つの共振に分割する。

・ボトム(バック)プレートの効果は、図 1 の音圧(SPL) スペクトルで 230〜240 Hz 付近の追加の共振として見られる。

・2つのカップリングは、バイオリンでも見られ、結合周波数係数はギターよりも小さい。これはバイオリンの音量を減少させるサウンドポストの存在によるものと考えられる。

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最初にこの論文を読んだときは、目からウロコでした。今まで運動方程式や振動工学は学んできましたが、ギターの音響特性とこれほど深く結びついているとは思いませんでした。最初のモデルは振動工学の基本である2DOFモデルなので、論文で紹介されている運動方程式(1a と1b)を導くというより、よく知られた2DOFモデルを解くことギターのパラメータを結びつけることから始めました。紹介したこのページが大変役に立ちました。

 実際にギター製作を始めると様々な疑問がわいてきます。その時、この論文で述べられている1つ1つが何を言っているのかがさらに理解できてきます。この内容を知っているかいないかで理解の仕方がまるで違ってくると思います。

 ということで、さらにいろいろなギター作りに役に立ちそうな論文を紹介していきたいと思います。

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