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ギターの塗装について [finish]

塗装の目的は「対象物を環境から守るために表面を保護する」ことで、ギターの場合の環境とは、使用温湿度、保管環境(ギターケースや置台(特にゴム))、人の汗や皮脂などになると思います。

ギターの塗装の種類は
①オイルフィニッシュ
②シェラックニス
③ラッカー
④ポリウレタン
があります。

今までの経験とテストから、個人的に①②③は、普通に何年も使用するという意味ではNGだと感じています。

①は、塗装の中でも木の質感を大切にする仕上げで、クルミ油XOTIC ( エキゾティック ) / XP-OG1をテストしましたが、光に数日当てておくと乾燥してしまい、塗装という感じではなくなりました。簡単な保護剤としての効果しかないと思います。もちろんそれでも良く、音質を優先させるのであれば良いのですが。

②は、10年前にギターはシェラック塗装だという定説に引きずられて、試しました。YAMAHA FG-130という中古機を購入し、リペアの一環として、ネックを再塗装してみました。その結果、乾燥に非常に長い時間がかかる、厚く塗りすぎたせいか乾いた後も数か月は塗膜が柔らかく、押し付けるとその痕がつく状態でした。完全に乾燥するためには2年くらいかかったと思います。また、経年でクラックも発生しました。以上より個人的にNGという判断をしました。今は安定していて問題なく使用できていますが。

③これは、ゴムに弱いということを経験しました。特にギタースタンドにネックを支えておくと白濁します。また、ラッカー仕上げのネックは、何年も使用していると汗に弱く、ほとんど剥げ、トップにはクラックが入ってしまいました。
 ゴム類に弱い、経年でクラックが入る、手汗に対して弱いという、決定的な弱点があります。トップの経年変化をウエザークラックと言って、仕方がないこととしていますが、判断基準が甘いと思います。また、スプレーガンのような設備が必要になり、臭いもして乾燥にも時間がかかるので、とても6畳一間の製作家には使えません。

塗装としての役割以上に音質に影響を与えないことが重要視され、①は論外としても、②が理想的、③が高級ギターとしては良いという評価が一般的で、ラッカー仕上げのものが多いと思います。

簡単で、匂いが少なく、短期間でできるものとして、ポリウレタン塗料があります。ポリウレタンは厚くなるといった迷信のようなものがありますが、それは短時間に厚く塗って丈夫にしたいという安価な量産ギターについていえることで薄く塗ることもできます。

1台目は、油性ポリウレタン塗料を使いました。当然溶剤の臭いがするので、生活をする空間での作業はNGです。私は、外庭で、隣家と離れているところで、塗装から乾燥まで行いました。それでも乾燥には1時間以上かかるため何回も繰り返すことは工数的に大変でした。仕上がりは問題ありませんが、琥珀色になってしまうという欠点があります。これはトップ以外は問題ありませんが、トップの塗装としては受け入れられません。

2台目は、水性ポリウレタン塗料を使いました。これをアコースティックギターに使用した例が少なく、端材でのテストを行っていけるだろうと判断しました。この塗料は、スポンジ刷毛で塗ることができ、臭いもなく、短時間で乾燥するため、私のような個人製作家には最適です。ローズウッドには目止め(木管を埋める)をする必要があります。事前テストとして、Z-POXYという目止め材を使用してみましたが、乾燥後の膜剥ぎとサンディングが手間だったため、今回は水性ポリウレタン塗料とその下塗り剤だけで行ってみました。

その結果、バックとサイドとヘッド化粧板のローズウッドは木管を完全に埋めるということは無理で、その痕がわずかに残ってしまいましたが、トップのスプルース、ネックのマホガニーについては問題ありませんでした。

今後、経年の塗膜変化がどうなるかを見極めたいと思います。

3台目はローズウッドの目止めにはZ-POXYを使用を考えています。

以上、今までの経験と実際に試したことをまとめて、自分の塗装技術を勘案して私見を述べました。

塗料は成分がよく分からず、メーカーからの説明も少ないので、使用する前に端材でのテストを必ずやってみて、自分の目で確かめる必要があります。

<今日のポリシー>
6.本に書いてあったり、ネットで出てくるギターの定説は疑ってみる必要がある。


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