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MATERIALS-INSPIRED INNOVATION FOR ACOUSTIC GUITAR DESIGN [woods]

MATERIALS-INSPIRED INNOVATION FOR ACOUSTIC GUITAR DESIGN

Owain PEDGLEY, Eddie NORMAN and Rob ARMSTRONG

January 2009 METU Journal of the Faculty of Architecture 26(1)

The Secret Valentine project team

 この論文は、アコースティックギターの素材を木材の代替材、工業的に成形された熱可塑性部材で作れないかの検討報告です。

 内容は、「発泡ポリカーボネートのサウンドボードで構築された楽器は、木製の楽器の品質に匹敵する。また、木材とは驚くほど異なる物理的材料特性を持ちながら、同等の音響性能を提供できる。」ということです。

 2009年の論文なので、その後はどうなっているかというと、Cool Acoustics というベンチャーを立ち上げています。

実際のギターの音は、以下で確認できます。

https://www.youtube.com/watch?v=F0w9Tzgugfg

https://www.youtube.com/watch?v=ViyaDZqWGig

しかし、これ以降の新たな記事はありません。


論文に戻って、内容を紹介すると、3つの方針があり、これを達成すること

1.代替材料の供給

大量生産されるアコギのトーンウッドの供給問題に対処するには、代替材料が必要だが、木工技術の必要性が残っていた。設計と機器構成の変更だけでは不十分で、木材から低コストの製造と組み立てに関連する代替材料への材料選択のシフトが必要になる。

2.製造コストの削減

3.一貫性の向上

標準化された大量生産の楽器で、同一のブランドのモデルの楽器でも演奏性や音色が著しく異なる。これは木材の個体の違いによるもの。


 音質に影響を与えるアコースティックギターの最も重要なコンポーネントである全く新しいサウンドボードを作る。アコースティックギターのサウンドボードでは高い剛性対質量比が望ましい。この特性は、材料特性(ヤング率、密度)とコンポーネントの形状(断面二次モーメント、体積)の両方に起因する。弦の張力に耐えるのに十分な剛性と強度のために、木製のブレースがプレートの下側に接着されている。

 既にスプルースやスギの代替品として、低品位の木材コア(基本的に合板の一種)に接着された木製のベニヤから、Formica[レジスタードトレードマーク]に似た木材パルプシートと熱硬化性樹脂のモノリシック複合材で高圧ラミネート(HPL)は一般的な代替品があるが、HPLには依然として木工技術と加工が必要になる。グラファイトも人気のある木材代替品ですが、高価で、構造的にブレースがなくても十分な剛性があるが、音響修正用のブレースは必要とされる。

Martin Guitar Company(2008)は、アルミニウム合金のサウンドボードを備えた「ALternative-X」ギターと、再生されたソースからの木材と木材複合材を備えた「SWO」ギターを提供したが、3要件に適合しない。

 1950年代、プラスチック技術は比較的初期の段階でMastro Industries Inc.が試みたが、評判が芳しくなく、それ以降、オールポリマーアコースティックギターの設計を試みた企業はない。

 また、ポリマー材料の特性を音響現象に相関させる科学的研究はまだ実施されていなく、木材アコースティックギターを設計するという特定のタスクをサポートするために利用できる科学的または工学的アドバイスはほとんどなかった。1970年代半ばのギブソンによる「マークシリーズ」の開発に各分野の3人の科学者が参加したが、ギターは人気がでなかった。

 アコースティックギターのサウンドボードで材料の革新を成功させるには、科学と工学の外部からのアドバイスが必要であり、ルシアは常に最も有望な木材を選ぶ。そのため、最も有望な非木材を特定するのを手伝うことは、日常業務にかなり近いと考えられ、ルシア(Rob ARMSTRONG)の経験的なアドバイスを得て、227日間にわたるプロジェクトで最適な材料を探した。

 最終目的は、弦の張力とそれに伴う物理的な歪みをサポートするために必要のないすべての素材をギターの上部から取り除くこと。

 トーンウッド(サウンドボード)の音質を評価し、作成するために使用する主な方法は、「ナックルラップテスト」で「タップトーン」に含まれる微妙な素材固有の音と振動の情報に応答を得ること。

 木材は本質的に多孔質材料であり、ルシア(Rob ARMSTRONG)が代替材料の検索で最優先したのはこの特性で、材料の選択は市販グレードの発泡ポリカーボネート(Forex[レジスタードトレードマーク]-EPC、Palsun[レジスタードトレードマーク]Foam)になった。低コストで大量生産製品に適しており、一般に均質な構造を持っている。

 E/ρとして表される剛性対質量がアコースティックギターの響板で重要であるが、E/ρはアコースティックギターのサウンドボードとして使用するための特定の非木材材料の適合性の不十分な指標である。木管楽器の音質に微細構造が及ぼす影響についてはほとんど知られていない。

 他の材料も試したが、熱可塑性材料である発泡ポリ塩化ビニルをナックルラップテストで評価したがNG。炭素繊維強化プラスチックは、可聴周波数のスペクトル全体で線形減衰を示し、非常に明るく大きな音の特徴があるが、特定の周波数が他の周波数よりもゆっくりと減衰する、木材の複雑な非線形サステイン特性が欠けている。

 リスニングテストからの幅広い意見は、発泡ポリカーボネートのサウンドボードはスプルースやシダーに近い音響特性を持っていることがわかった。CoolAcousticsサウンドボードを搭載したギターの低音レスポンスが著しく強いということも分かった。

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良い結果が出ていると思われますが、サウンドボード材のスプルースはまだ枯渇というまではいっていないので、実用化までにはならないのではないかと思います。

材料特性が安定しているとは思うのですが。

 

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